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職場が暗いなら"ハイタッチ"を義務にする

プレジデントオンライン / 2018年10月28日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/UberImages)

職場の雰囲気を明るくするには、どうすればいいのか。店舗運営コンサルタントの鳥越恒一氏は、「『職場の雰囲気を良くしたい』と正直にいいましょう。そのうえで、『ハイタッチでのあいさつ』をルールにするといい。最初は気恥ずかしいですが、そのうちコミュニケーションも活発になります」という――。

※本稿は、鳥越恒一『ほめられたいときほど、誰かをほめよう 店長の心を励ます50の言葉』(プレジデント社)の一部を加筆・再編集したものです。

■いくら腕がよくても、怒る歯科医には行きたくない

私が通っている歯医者さんの話です。その先生は、いつも助手の歯科衛生士さんたちに対して怒っています。その怒っている様子が、私をはじめ同時に6台の診察台に横になっている患者全員に丸聞こえなのです。

先生がひとりで一度に6人も診なければいけないので、大変なのだとは思いますが、いつ行ってもイライラしていて、働いている他のスタッフを怒っている。患者はお客様なので、私たちにはとても丁寧ですが、聞いていて「ひどいな」「この職場、楽しくないだろうな」と思ってしまうほど、スタッフのみなさんには怒っているのです。

その歯科はいつも混んでいますし、治療の手際もいいので腕のいい先生だと思いますが、いつ行っても雰囲気が良くありません。先生に怒られないようにと、スタッフの表情は暗く、張り詰めた緊張感が漂っていて、何だかかわいそうになってくるほどです。

お店や職場の雰囲気は、トップで決まります。お店であれば、店長の機嫌が良ければ店舗内も明るく、スタッフにも笑顔があふれます。しかし、この歯科のように、トップの人の機嫌が悪く、いつもイライラして怒っていたら、スタッフも暗くなり、職場の空気も悪くなります。トップには、いつも機嫌を良くする、嫌なことがあってもそれを出さないことが求められるのです。

■最初と最後の「気持ち良い挨拶」だけでリセットできる

たとえば、朝お店に出勤したスタッフが、「おはようございます!」と元気に挨拶しても、それに対する店長の挨拶が「……おはよう」と相手の顔も見ずに、小さな声でぼそっとしたものだったら、言われたスタッフはどう思うでしょうか?

店長の挨拶が、元気がなかったり、不機嫌そうだったりしたら、一緒に働く人たちの気持ちも沈んでしまいます。当然、店長にも疲れている日や、気分が晴れない日があると思います。そんな日は、挨拶だけでも笑顔で元気にやってみませんか? 朝一番の店長の挨拶が暗かったら、スタッフも暗くなり、お店全体も暗くなってしまいます。

意識的に朝一番の挨拶と、帰りの「お疲れ様」の挨拶だけは、気持ち良く笑顔でするようにしましょう。少なくとも最初と最後だけでも気持ちの良い挨拶ができれば、みんなが気持ちをリセットすることができます。ずっと不機嫌なままの状態を引きずる人が多いですが、挨拶でリセットしていきましょう。トップにとって一番大事なことかもしれないぐらい、笑顔の挨拶は大切なのです。

■「グータッチ」で会議を終える製パン企業

これほど大事な、しかし子どもでもできる簡単な挨拶さえ、きちんとできない人が大勢います。なかなか笑顔で挨拶ができないという場合は、職場のスタッフたちとハイタッチしてみてください。すべての挨拶で必ずハイタッチをします。

鳥越恒一『ほめられたいときほど、誰かをほめよう 店長の心を励ます50の言葉』(プレジデント社)

ハイタッチは、怖い顔や落ち込んだ状態ではできません。「イェーイ!」と明るくするものなので、少なくとも嫌な感じにはならないはずです。我が家では、挨拶のたびに家族とハイタッチをしています。「おはよう」「おやすみ」「ただいま」など、とにかく毎回ハイタッチです。

実は同じようなことに取り組んでいる企業があります。弊社の顧問先の企業で行われているグータッチルールです。ハイタッチは手のひら同士を合わせますが、その企業はパンの製造・販売をしている企業です。パンづくりの最中、粉まみれの手でタッチすることを避けるために、握りこぶし同士を合わせるグータッチをしているそうです。

経営幹部を含めた店長会議で、どんなに激論を交わした後でも、最後は全員が「お疲れ様でした」「ありがとうございます」と必ずグータッチを交わす。グータッチをするときは、議論がヒートアップした後でも思わずニコッと頬が緩みます。社長ももちろん、店長一人ひとりとグータッチをして会議が終わるのです。

■「とにかくグータッチ」とルールを決める

こういった取り組みを始める会社は珍しくありませんが、続いている会社はなかなか少ないものです。無理矢理やらされているような感じを受けたり、最初は恥ずかしさもあって、すぐにやめてしまうことがほとんどです。

しかし、この企業はグータッチルールが文化になっています。私が研修のために本社に行けば、受講生たちが必ず「おはようございます」「今日はありがとうございます」とグータッチしてくれます。店舗でも、店長とスタッフは必ず「おはようございます」とグータッチの挨拶から始まります。

さらに、グータッチのときに笑顔がある、その笑顔が素晴らしいとなると、スマイルバッチを付けられるようになります。そういう取り組みもあるので、誰もがいい笑顔で挨拶してくれます。「とにかくグータッチしなければいけないルールだ」と決めて、継続していくことで文化になるのです。

どうしても暗い雰囲気になってしまっている、笑顔で挨拶をする空気が職場にないというのであれば、「ハイタッチしましょう」とルールをつくって、明るい挨拶を実践していったほうがいいですね。最初はぎこちないかもしれませんが、そのやり取りから活発なコミュニケーションも生まれます。

■空気を変えるきっかけがつかめない

コミュニケーションに関する研修の後に、若い店長からこんな相談をされたことがあります。

「それまでそんなに話していなかったスタッフに、急に近づいて話しかけたり、コミュニケーションを取ろうとすると、違和感がないですか? 『ハイタッチで挨拶しましょう』なんて提案しづらいのですが……」

その店長の話では、お店の雰囲気全体が少し暗い感じで、働いている人同士であまり会話もなく、不穏な空気が漂っていたそうです。そんな中で、急にコミュニケーションを積極的に取り出したり、ハイタッチで挨拶を始めたりしたら、「えっ!?」とスタッフたちに驚かれそうで、お店の空気を変えるきっかけがうまくつかめないということでした。

店長自身が、「お店を明るくして、コミュニケーションは絶対に良くしていったほうがいいし、店長の自分からやっていかないといけないこともわかっていますが、どういうきっかけや理由があれば自然にできるでしょうか?」と悩んでいたのです。

■「研修で言われたから」で始めればOK

私の答えは、「正直に、『みんなとの関係を良くしたい』と言ってしまいましょう」です。今、あまり関係が良くないと感じているから良くしたいと思っているわけなので、それを改善したいと素直に伝えるほうがいいです。これからできるだけ話しかけたり、コミュニケーションを取りたいと思っていることを先に宣言するのです。

そのときに、「今日の研修で、講師にそう言われたから」「セミナーでそういう助言を受けたから」という理由を伝えてもかまいません。そういう理由なら店長の行動も自然ですし、スタッフも変に警戒したり、怪訝に思ったりしないでしょう。

実際にそういうセミナーがなかったとしてもOKです。店長やリーダー、トップであるあなたが、職場のネガティブな状態を解決したいと思ったら、そのタイミングで行動に移しましょう。そのためには、現状がネガティブだと認めてしまったほうがいいです。職場の雰囲気が悪いのは良くないと、トップとして話を切り出し、そのうえで良くしていきましょう。

■正直に伝えれば一緒に働く人は応援団になってくれる

正直に理由を伝えれば、「雰囲気を良くするためにいろいろ考えているんだな」と思ってくれた人たちが、トップを支える応援団になってくれます。コミュニケーションを良くしようと思っている味方が増えるわけです。

「もっと他の人と話したいな」「もっと楽しく働けたらいいな」と思っている人がいたとしても、それを言い出しづらいところがあります。やはり、職場の空気を変える先導役はトップがしないと始まりません。トップが率先して動き、一緒に働く人たちにどんどん声をかけていきましょう。

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鳥越恒一(とりごえ・こういち)
DIC幹部育成コンサルティング 社長
1973年生まれ。金融業、飲食業を経て2003年、株式会社ディー・アイ・コンサルタンツ入社後、人財開発研究部の担当役員として部門を統括。2012年にDIC幹部育成コンサルティング株式会社を設立し、社長に就任。飲食・小売・サービス業のコンサルティングに従事し、これまでに延べ5万人以上の店長の悩みを聞いてきた。著書に『プロ店長 最強の仕事術』(日本経済新聞出版社)などがある。

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(DIC幹部育成コンサルティング 社長 鳥越 恒一 写真=iStock.com)

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