ANAがJAXAに"すり寄る"狙いはなにか
プレジデントオンライン / 2018年11月17日 11時15分
■なぜANAが宇宙関連事業に手を広げようとしているのか
ANAホールディングスは宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと提携して、宇宙関連事業に進出し始めた。同社は事業会社の設立を視野に入れており、宇宙ステーションや月、火星などにロボットを配置し、地球から遠隔操作して疑似的な宇宙観光を体験できるような仕組みを構築するという。宇宙飛行機開発スタートアップのPDエアロスペースにも出資している。
なぜANAが宇宙関連事業に手を広げようとしているのか。それは将来に向けた“ビジネスの種まき”にほかならない。
2019年には成田国際空港、2020年には羽田空港で、それぞれ発着枠の拡大による増便を予定している。訪日外国人の増加などによる国際線のニーズは高まり続けており、国内線も国内旅行ブームが高まるなど堅調に成長している。向こう5年の成長戦略は本業の航空事業でしっかり描ける一方、変化の激しい現代において、10年後、20年後にどうなるかは誰にも予想できない。
将来的に航空事業のマーケットが成熟化し、横ばいもしくは縮小するようなことになったときに、支えとなりうる他事業を経営が盤石な今のうちに見つけておきたい。その1つが宇宙関連事業というわけだ。
■デメリットはほぼないと言っていい
実際、宇宙関連事業にはANAの強みである航空オペレーションなどが活用できる場面もあるだろう。JAXAの技術を借りながら、宇宙体験をできるアミューズメントパークのような施設が造れるのであれば、大人から子どもまで人が集まるのは必至だ。
ANAにとってリスクが低く、かつ技術的な問題さえクリアできれば成功の可能性は大きい。投資の規模もANAの経営体力からすれば微々たるもので、デメリットはほぼないと言っていい。
競合の日本航空も今のところ宇宙開連事業に進出しようという動きは見られない。自身の強みを生かした堅実な成長戦略と言えるだろう。
(野村証券 アナリスト 広兼 賢治 構成=衣谷 康 写真=iStock.com)
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