1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

やりたいことより頼まれたことを優先せよ

プレジデントオンライン / 2018年11月5日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/jackSTAR)

あなたは自分を売り込むときに「××ができます」と話していないだろうか。それは逆効果かもしれない。イベントプロデューサーの水代優氏は、「人から頼まれた仕事をこなしていくうちに、自分の得意なものがわかるようになる。だから『××ができます』というアピールではなく『××をしました、楽しかったです」という小さな報告をSNSでするようにしている」といいます――。

※本稿は、水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)の第2章「一歩を踏み出すコストは『自分の人件費』だけ」を再編集したものです。

■「何とかしてくれない?」に応えてみる

どんなことであっても、「まず、始めてみる」ことが大切だと僕は常々思っていますが、そんなときに、「何を始めるか」を決められずつまずいてしまう人が多いようです。何か新しいことをやれば楽しいような気がするし、やるべきだと思っているけれど、具体的に何をしたらいいのか見当が付かない、という人もいると思います。

でも、あまり難しく考える必要はありません。

もしそうなら、「やりたいこと、やらなくてはいけないことのある誰か」を助けるところから始めてみるといいと思います。

「ちょっとこれ、手伝ってくれない?」などと誰かに言われたら、それは小さく始める(スモール・スタートをする)ビッグチャンスです。

■任されて気づいた、周りから見た自分の「得意」

僕が独立するきっかけになったのはレストランのプロデュースの仕事だったのですが、それも、「手伝ってくれない?」に「いいよ」と答えることから始まりました。

当時の僕の本職はカフェの店長で、飲食店の運営にはある程度の経験と実績がありました。だからこそ、声をかけてもらったのだと思います。僕が何のプロフェッショナルであるかを知っていての声がけだったと解釈しています。

このことは、僕にとって自信になりました。「なるほど、この人は僕のことを、“食材の生産者とのつながりを重視した新しいレストランのプロデュース”ができると見込んでいるんだな」とも思いました。

そしてそれは同時に、驚きでもありました。

僕はある時期まで、自分の強みは「デザインがわかること」だと思っていました。カッコいい空間作りが得意だと思っていたのです。

ところが、これは独立後に顕著になるのですが、任される仕事は、“役所や関連部署との調整”が“デザイン”を上回っています。その理由は、調整の仕事が面倒だと思う人が多いからかもしれませんが、わりと僕がそれを苦にせず、やれてしまうということもあると思っています。

つまり僕は、周りの人から見ると、「デザインがイケてる奴」なのではなく、「調整がイケてる奴」なんだと前向きに考えています。

もしも調整仕事を任せてもらわなければ、そしてそれを「あんな面倒なことをやれるなんてすごいね」と誰かに言ってもらわなければ、僕は自分のイケてるところに気付けなかったでしょう。そして、さほどイケてないデザインにこだわって、仕事を広げられずにいたかもしれません。

水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)

「自分、デザイン得意なんでやります」と言葉だけでアピールしていたら、「あいつは、デザインデザインって言っているから、調整の仕事を頼むのはやめておくか」と思われてしまっていたかもしれません。

なので今の僕は、「何ができます」というアピールではなく「何をしました、楽しかったです」という小さな報告をSNSでしています。見ている人は「あいつ、あんなことができるなら、これを頼んでみようかな」と考えてくれると思うからです。

きっと会社の中で新たな仕事を打診されるのも、こんなきっかけで起こることが多いのではないでしょうか。そうした頼まれごとをこなしていくうちに、それが得意なことになっていくはずです。

■自分の強みを見つけるために人を褒める

僕は、人を褒めるようにもしています。褒めるのは照れくさいと感じていたこともあるし、下心があると思われるんじゃないかと恐怖を感じていた時期もあります。でも、あるとき考えが変わりました。

今では、「そうやって相づちをうってもらえると、すごく心強いです」「ネイル可愛いね」「そのメガネいいね、どこで買ったの?」などと細かく褒めることもあれば、「ホント、あなたのことが大好きです」とすべてを褒めることもあります。その理由は、褒めれば褒めるほど、褒め返してもらえると、あるとき気付いたからです。

前述のように、僕は自分が他の人よりも何が得意かに気付いていない期間があって、その間は“損”をしていたのかもしれませんが、そういう時期も必要だったのかなという気はしています。でも、もしも若いときに「水代のいいところはここだ」「お前はここが優れている」とド直球で言ってもらえていたら、「自分のやりたいこと」と「力を発揮できること」の重なる部分を、もっと早く見つけられていたかなとも思います。

だから今も、「他の人から見た自分の良さ」はどこなのかは気にしています。好かれたいというよりも、どう見えているかを知りたいのです。

でも、「俺ってどう見えてる? 俺のいいとこってどこ?」と聞くのは、誰かを褒めること以上に気恥ずかしいもの。そこで、まずは相手がどう見えているか、どこがいいと僕が感じているかを伝えるのです。それが、褒めるということです。

ただ、僕が女性に対して「美人だね」とか「脚がきれいだね」とか、その人の天性のルックスをそのまま褒めてしまうと、たとえそれが率直な気持ちであったとしても、下心とかセクハラと受け止められてしまう可能性があるので、その人のセンスや工夫を褒めることにしています。「ネイル」や「メガネ」を褒めるのは、その一例です。その僕の褒め言葉の中に、自分の気付いていなかった自分の選球眼の良さや強みを見つけてもらえれば嬉しいとも思います。

そしてたいてい、いや、間違いなく相手は照れて「水代さんだって~」と言ってくれます。特に、普段あまり会話しない人のほうが、意外なことを言ってくれます。こういう人の視点は、本当に貴重です。

さっそく、嫌いな上司を褒めてみませんか。苦手な部下でもいいです。自分とは無関係に感じられる他部署の、顔だけは知っている人でもいいです。すると意外な褒め返しが返ってきて、知らなかった自分の魅力に気付けるはずです。褒めよう褒めようと思って周りを見てみると、いいところばかり見えてくるというオマケもついてきます。

■「誰かのために」は頑張れる

まずは、「誰かに頼まれたことに取り組むのがいい」――その理由は、もうひとつあります。

それは、「誰かのために」と思うと、頑張れるからです。

自分のためだけだと、頑張る気持ちは続きません。たとえば料理がそうです。自分だけのための料理は、ついつい手を抜きがちです。でも、家に友達を招いたら? 友達においしいものを食べてもらうため、いつもより張り切って、おいしい料理を作ろうとするはずです。誰かのために、という気持ちはそれほど強いものなのです。

その誰かは、自分から遠ければ遠い人であるほど、頑張れるとも思っています。

たとえば僕は、「僕が欲しいので、1万円をください」とはなかなか言えません。それが自分の活動に必要なお金であっても、です。

でも「友達が今度店を出すので、ご祝儀として1万円出してやってもらえませんか」であれば、はっきりと言うことができます。さらに「阿蘇でこんなにおいしい野菜を作っている人がいて、本当においしいので、その野菜を売る手伝いをしたいので、1万円、負担してもらえませんか」は、もっと言えます。

逆に、たとえば「Jリーグの試合を見に行きたいので、チケット代を出してください」と言われたら、ぽかんとしますよね。でも、「日本代表を勝たせるために協力してください」と言われたら、考えが変わるかもしれません。そこに大義名分があるかないかで、受け止める側の抱く印象はまったく異なるのです。

お願いをする側としても、自分のためではなければないほど、頭を下げることに抵抗がなくなるし、図々しくもなれます。心が折れないのです。仕事のどんな場面でもそうだと思います。

■「世界平和のため」に戦う人は心が折れない

もし心が潰れそうになってしまうとしたら、あるべき“何か”のために謝ったり、無理なお願いをしたり相手の申し出を断ったりしているその行為を、「自分のしたいことそのものだ」と錯覚しているときです。

そうではなく、「その先にはあるべき“何か”があって、そのために謝ったりすることが、自分に役割として求められている」と、いい意味で割り切れれば、「これも必要なこと」と思えるはずです。それでももしも割り切れないなら、それはその“何か”について、心の底から“あるべき”とは思えていないからかもしれません。

そういう意味で、一番心が折れないのは、世界平和のために戦っている人だと思います。

自分とは直接会ったことも言葉を交わしたこともない70億を超える人のために頭を下げたり無茶を言ったりするのが自分の責務だと思えれば、心が折れることはないでしょう。

だから、できるだけ多くの人の役に立ちそうなことに取り組むことが、心を折らずに続けるコツだと思います。

----------

水代優(みずしろ・ゆう)
good mornings代表取締役
2002年より株式会社IDEEにて新規出店を手掛ける。2012年にgood mornings株式会社を設立。東京・丸の内や日本橋をはじめ、全国各地で「場づくり」を行い、地域の課題解決や付加価値を高めるプロジェクトを数多く手掛ける。

----------

(good mornings代表取締役 水代 優 写真=iStock.com)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください