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50歳以降も今の会社にいる想像がつくか

プレジデントオンライン / 2018年11月7日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AndreyPopov)

あなたは何歳まで働くつもりだろうか。生涯年収を増やしたいなら、働ける期間は長いほうがいい。そのためには今の会社での出世競争に力を注ぐのは避けたい。30代で独立してイベントプロデューサーとなった水代優氏は、「組織内で出世しても60歳ぐらいまでしか働けない。それより50歳までに会社の外で働けるように準備したほうがいい」と説きます――。

※本稿は、水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)の第5章「会社員のうちに『ライフシフトする』考え方」を再編集したものです。

■キャリアチェンジは50歳でするのがいい

ちまたでは「ライフシフト」がさかんに語られています。僕も30代で会社を辞めて独立しましたが、とはいえ、みんながみんな30代とかでライフシフトをする必要はないと思っています。自分の会社員時代の経験や、いまさまざまなプロジェクトを通して見聞きする組織の様子から考えると、日本で会社に勤めている人なら、シフトするなら50歳頃が適切ではないかなと感じています。

その理由は、日本の会社の仕組みです。

新卒一括採用で入社した同期はみんな、同じような経験をしながら、同じように昇進していきます。でもそれは、45歳くらいまでの話です。50歳くらいになると、役員になっている人、役員候補になっている人もいれば、そうではない人もいます。きっとそれまでも小さな差は付いていたのだけれど、それがはっきり誰の目にも見えてわかるようになるのが、45歳くらいだと思うのです。

そこで「あ、自分は役員にはなれそうにない」と気が付いたとき、多くの人はキャリアチェンジ、ライフシフトを真剣に考えるのではないでしょうか。

45歳で気が付いて、5年間準備をして、50歳で実行。悪くないプランだと思います。

■80歳まで同じ会社で働き続けられる可能性は低い

「50代は会社員人生で最高に給料をもらえる時期だから、50歳で辞めるなんて、それまでの20年以上の投資を回収できずに損だ」と考える人もいるかもしれませんが、その刈り取り期間は10年ほどしか続きません。定年まではあっという間です。

80歳までその会社で働き続けられる可能性は、かなり低いはずです。だったら、50歳のタイミングで、今勤めている会社にこだわらずに80歳まで働ける場に自分を置くのです。

45歳で「まだこの会社で上に行けるかも」と期待が持てていて、そちらに全力投球する人は、シフトのタイミングを逸してしまうかもしれません。

それに「定年後」だと、少し遅い気がします。定年しているということは、それまでの人間関係もリセットされているということです。そこでいきなり起業はちょっと危険です。だから、定年までと定年後をきっちり切り分けるのではなく、45歳くらいから少しずつ準備をして、満を持して50歳で会社を辞めるのです。60歳ではなくて50歳なのは、「50代と60代では気力や体力がまったく異なる」とよく聞くからでもあります。

もちろん、20代から準備をして30代で独立、ということもできますが、でも、それをやってしまうのは、せっかく手に入れた、そしてそこでしか学べないことがたくさんある会社員という立場を早々に手放してしまうことになり、もったいないことだと思います。

会社での仕事は、楽しいことばかりではないでしょう。でも、そこでしか学べないこともあるので、20代、30代は修業期間と思いながら、少しずつその先の人生の準備をしておくのがいいと思います。

■50代以降の「選択肢」を増やすために

もちろん、「50代以降も会社に残る」という選択肢もあります。先輩たちと話していてよく思うのは、マネージメントが好きな人と、そうでもない人がいるということです。マネージメントが好きな人は、会社に残って腕を振るったほうが楽しいと思いますし、部下を育てたり、チームを率いたりすることにやりがいを感じる場合もあるでしょう。

水代優『スモール・スタート あえて小さく始めよう』(KADOKAWA)

ただ逆にいうと、みんながみんなそうだとは、話を聞いていて思えません。たとえば、新聞記者として働いていて、事件を追って原稿を書いて、表現することが好きなのに、デスクで部下の下手な原稿にうんざり……「むしろ僕が取材に行きたい!」と思うようなタイプの方もいますよね。「50代で独立を」という話は、あくまでそのように「プレイヤーとしての自分のほうが楽しい」と思える方にお伝えできればと思っています。

料理が作るのが好きすぎて、シェフになったはずなのに、いつの間にか何店舗もマネージメントをする立場になっていることもあります。そんなときは、「料理を作っていたいのか? マネージメントが好きなのか?」を改めて考えてみてもいいと思うのです。

もちろん、独立したら今の給料より下がると思います。でも、「50~60歳(もしくは65歳)まで稼いで定年後に悠々自適」と「50~80歳まで30年間、元気に、みんなに頼られながら働いて、生涯年収はだいたい一緒」の、どちらが良いか――それは人によってそれぞれだと思いますが、そのような選択肢があるということは意識しておきたいです。

■仕事のやり方は日本中どこでも同じ

一方で、「わりと気分良く会社員でいられる間は、会社員でいたほうがいい」と思う理由は、会社でなら、日本で何かをしようとするときに必要になるテクニックを十分に学べるからです。

報告・連絡・相談、根回しの仕方、稟議書の書き方に通し方、世代の異なる人とのコミュニケーション……こういったものは、どこの会社でやっていくのにも必要なライフスキルだし、どこの会社にいても学べます。

10年もいれば立場が変わるので、同じ根回しの仕方でも、違う立場での振る舞い方も身につきます。

もしも会社員経験がない人や浅い人が、プロジェクトで企業とコラボをしようとしたら、「根回しなんてバカらしい」「稟議なんてすぐに通してくれ」などと思ってしまうかもしれません。

でも、会社員経験があれば、相手の立場、相手の気持ち、相手のジャスティスがわかります。わかれば配慮できるので、相手にしてみれば「あいつは会社の外の人間なのに、会社のことをよくわかっている奴」という、頼れる存在になります。

僕は、日本はひとつの“会社”だと考えています。みんな、いろいろな企業で働いているし、企業を経営している人もいるし、組織には属さないで働いている人もいます。でも、そこに共通するルールは、あらゆる企業の最大公約数的なルールです。

そのルールで運営されている日本という会社のなかで、僕はできるなら“出世”したいなと思っています。ライバルは、日本全国にいる、同じようなことを考えている人たちです。

でも、出世するにも条件があります。自分より若い世代に嫌われてまでは出世したくないと思っています。

出世しようとすると、上ばかり見てしまって、気付いたら足元がぬかるんでいたなんてことがないように、足場をしっかり固めて、上を狙っていきたいです。

だから、僕は日本という会社に共通するルールは守りたいし、守ったほうがいいと思うし、知っていないと損をすると思います。そのルールを体得するには、会社という研修機能を備えた組織で修業をするのが手っ取り早いと思っています。

■出世競争ほど費用対効果の悪いものはない

僕は、組織内での出世競争ほど費用対効果の悪いものはないと思っています。

「さっきと話が違うじゃないか」と思われるかもしれませんが、ここでいう出世競争は日本というひとつの“会社”での出世競争ではなく、現実の企業・組織内における出世競争です。

会社には社長は一人しかいません。その一人が10年間社長を務めるとすると、ざっくり言って、その社長の同期とその10年後輩までの間からは、ほかの社長は誕生しないということです。同期が10人くらいいるなら10年分の100人、同期100人なら1000人のうち、社長になれるのはたったの一人。その他の99人、あるいは999人はその出世競争の敗者になります。敗者になるほうが圧倒的に確率の高いゲームに人生を注ぎ込むのは、ちょっと違うんじゃないか。それが、費用対効果が悪いという言葉の意味するところです。

社長じゃなくても、役員でもいいです。それでも、そこにたどり着けるのはごく一握りだということに変わりはありません。ものすごく狭き門での、勝ち目の少ない争いです。

■会社という本拠地を使いつくそう

では、勤務先の会社という枠を取り払い、日本という会社の会社員だと考えましょう。

その日本株式会社の社長になるのは勤務先の社長になることよりもはるかに難しいけれど、係長くらいになるのはできそうだし、そのまま課長や部長になる必要もないと思います。

日本の係長ということは、いろいろなところで係長的に動くということでもあり、ある場所・タイミングでは社長っぽく、あるところでは新入社員っぽく動くということでもあります。自分一人の趣味については社長だし、仲良くなったお店のご主人から「今度、みんなで遊びに行くんだけど、一緒に行く?」と誘われたら、新入社員です。

こんな感じでいろいろなところ、いろいろなコミュニティでいろいろな立場を持っていると、そのうちのひとつやふたつが仮になくなっても、ダメージは最低限で済みます。

では、勤務先の会社一筋で常務になった人から、その常務の管轄する事業が失われたら? 会社がどこかと合併して、常務の席取り合戦で敗れたら? そもそも会社がなくなったら? このダメージは計りしれません。

だから、僕はひとつの会社での出世競争をすすめられないのです。

勤めている会社は、本拠地のようなもの。本拠地でだからできることも、そこでしか学べないことも、たくさんあります。でも、そこでしか生きられないというのはちょっとまずい。会社という本拠地が未来永劫、健全に存在する保証はないからです。だから、いつかシフトできるフランチャイズタウンをいくつか持っておいたほうがいいと思います。

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水代優(みずしろ・ゆう)
good mornings代表取締役
2002年より株式会社IDEEにて新規出店を手掛ける。2012年にgood mornings株式会社を設立。東京・丸の内や日本橋をはじめ、全国各地で「場づくり」を行い、地域の課題解決や付加価値を高めるプロジェクトを数多く手掛ける。

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(good mornings代表取締役 水代 優 写真=iStock.com)

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