管理職になった途端、失速する女性の特徴
プレジデントオンライン / 2018年11月12日 9時15分
※本稿は、「プレジデント」(2018年10月1日号)の特集「高校・大学 実力激変マップ」の掲載記事を再編集したものです。
■米国で女性役員が多い本当の理由
安倍政権が「女性活躍推進」を重要政策に掲げてから5年。内閣府によれば、その間に上場企業の女性役員数は約2.4倍以上に増えた。では、どの大学出身者が多く登用されているのか。日経平均銘柄225社の執行役員以上で、常勤の女性役職者の出身大学をランキングにした。
1位は慶應義塾大学で10人、2位が早稲田大学で8人。早慶が上位にくる点は、大企業社長編と変わらない。目立つのは、3位に海外大学がランクインしたこと。ただし、日本人が留学したケースは7人のうち2人だけで、あとは外国籍の女性だ。トレンドマイクロ代表取締役社長エバ・チェン氏のようにもともと会社の共同創業者だったり、大日本住友製薬執行役員パトリシア・アンドリュース氏のように米国で買収した子会社のCEOが兼務しているケースもあるので、「社内で実績を積んで役員に出世した」という一般的な登用とは異なるものも含めた数字であることに留意したい。
5位には上智大学、津田塾大学と外国語教育に強い大学が並んだ。大企業社長編では、外国語学部や文学部の出身者がほとんどいなかったのとは対照的だ。
ただ、ランキングを見てわかる通り、女性役員の絶対数がまだまだ少ない。今回調査した225社で、女性役員は103人。少なくとも半数以上の会社で女性役員がいないことになる。
人材採用のプロで、企業の女性活躍推進支援を手がけることも多い森本千賀子氏は、「女性役員の数が増えるには、まだ時間がかかる」と話す。
「大企業の女性役員は40代後半から50代が中心ですが、この世代が20代や30代の頃は育休制度さえなかった会社も多く、そもそもこの年代まで働き続けている女性の母数が少ない。だから企業が女性役員を増やしたくても、物理的に社内に人がいないのです。外部からスカウトしようにも日本企業はどこも同じ状況なので、結果的に外資系出身者や海外の人材を連れてくることになる」
一方、女性役員が増えない理由を、「日本では女性が異質すぎるから」と指摘するのは早稲田大学大学院の谷口真美教授だ。
「人間の属性は性別以外にも学歴や職歴など様々な要素があります。たとえ性別が違っても、他の属性で重なる部分があれば、男性の中に女性が入っても共通の経験や考え方を土台に議論ができる。たとえば、利益向上の実践スキルを求める米国では、マネジメントを目指すならMBAが必須で、女性も取得する人が多い。また企業を渡り歩く。すると男性とビジネススクールで一緒だったり、職歴で重なる部分も増え、共通項ができる。そのため女性が企業の中で異質すぎることがないので、経営ボードに入り込みやすいのです」そして「今後は日本でも経営者に求める資質が米国に似通ってくれば、『キャリアの途中でビジネススクールに通ってMBAを取得した』といった“第二の学歴”が、女性の出世にも利いてくるかもしれない」と話す。
さらに、「女性が組織の中で上を目指すなら、ある時点で求められるスキルが変わることを知っておくべき」とアドバイスする。
「女性を含めたマイノリティが出世するには、個人として識別されるために、マイノリティ同士の競争で抜きん出て、マジョリティに自分は優秀だと認めさせる必要があります。しかしマネジメントに抜擢されたら、今度はチームを率いて他人と協力したり根回しや折衝をしたりと、それまでとはまったく別のスキルが必要になる。ところがそれに気づかず、執行役員や事業部長になっても周囲と競争し、のし上がろうとして失敗する人が多い。これは米国の経営幹部のキャリア研究でも明らかになっています」
ロールモデルが少ない女性リーダーのキャリアは、まだ試行錯誤の段階にあるといえそうだ。
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morich代表
リクルートキャリアで約2000名超の転職を支援し、独立。人材採用、ベンチャー支援、ビジネスマッチングなどを手がける。
早稲田大学大学院教授
神戸大学大学院博士課程修了。経営学博士。広島大学助教授、早稲田大学准教授などを経て現職。
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(塚田 有香 編集協力=岩田紗羅 撮影=永井 浩、宇佐美雅浩、澁谷高晴 写真=Getty Images、時事通信フォト)
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