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山を下りる時に"ダジャレが増える"人の脳

プレジデントオンライン / 2018年11月25日 11時15分

写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

人に何かを頼んだとき、どうして言った通りにしてくれないのか。その原因は、あなた自身の言い方や口グセにあるのかもしれない。24の症例とともに、改善するための「処方箋」を明らかにしよう。今回は、東京大学薬学部教授の池谷裕二氏に「何度も同じことを繰り返す」について聞いた――。(全24回)

※本稿は、「プレジデント」(2016年10月31日号)の特集「『超』ウケる言い方入門」の記事を再編集したものです。

■引き出しが少ないから、ワンパターンになる

普段われわれは話をするとき、ワンパターンを嫌い、いつも違う話をしたいと思っているものです。それが気づくと同じ話をしてしまうのは、心理アトラクターが関係しています。テーブルの上でビー玉を転がすと、やがて窪んだ部分で止まる。同じように、心の中で凸凹の凹の部分に当たるのが心理アトラクターです。アトラクターはいくつもありますが、同じ話ばかりしている人は、意識がいつも特定のアトラクターを選んでいるのです。

そうなってしまう理由のひとつは、疲れです。あるアトラクターに落ちそうなところを抗って、別の箇所に向かうのはかなりのエネルギーを要します。疲れているとその努力ができなくなり、結果、話がワンパターンになっていく。朝はいろんな話題の会話ができても、午後になると似たような思考や会話に陥りやすいし、山登りも話題が豊富なのは上りで、下りになると脳をあまり使わないで済むダジャレばかり言うようになります。疲れて脳が楽なものに逃げていくときは、ブドウ糖を補給してエネルギーを蓄えるのが有効です。

そして、もう1つ。同じ心理アトラクターを選んでしまう理由は、その人の持つアトラクターが少ないことが挙げられます。つまり、引き出しがないのです。引き出しを増やすには、普段からいろいろな切り口で物事を眺めるクセをつけること。ニュースを見て「悲しいね」の感想だけで終わらせず、「あの事件もこうだった」「ほかの解釈はないかな」など、あれこれ考えてみる。ひとつの出来事を別の出来事にあてはめて考える水平思考。問題の本質を深く掘り下げる垂直思考。このふたつを軸に立体的な思考が身に付くと、意識が脇道に行ったり、別の方向に転がったりして、同じ話ばかりしなくなります。

昔話をしないのも、効果的です。人は人生の中で10~20代のことをよく覚えており、年をとると当時の思い出話が増える傾向があります。昔話は思い出せる数が限られていますし、次第に類型化していく。それを避けるには、雑誌でもテレビでもいいから、新しい情報を仕入れて、最近の話をするようにしましょう。ただし入力するだけではダメ。テストの点が高いのは参考書を何度も読む人より、問題集を何度も解く人のほうで、出力を磨くほうが脳は成長します。仕入れた情報を人に話して、出力を心がけるのが大切です。

最後に、同じ話ばかりしている上司への対処法にもふれておきます。「また同じ話していますよ」と指摘するのは相手のプライドを傷つけるだけ。だから向こうが気づくように持っていくのが得策です。話を知っていれば先の展開が読めるわけで、「もしかしたら、こんなこと起きました?」と聞き上手風に合いの手を入れてみる。上司も「どうしていつも先がわかるんだろう?」と考え、原因に思い至るはずです。「このタイミングで先を読んだら、どんな反応をするかな」と、コミュニケーションのゲームに参加する気分で臨みたいものです。

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池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学薬学部教授
薬学博士、脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探求をつづける。著書に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』など多数。

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(東京大学薬学部 薬品作用学教室教授 池谷 裕二 構成=鈴木 工 写真=iStock.com)

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