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メールで"こんにちわ"と書く人の知的水準

プレジデントオンライン / 2018年12月26日 9時15分

写真=iStock.com/undrey

ビジネス文書で相手の感情を意図して害そうとすることはまずない。多くはうっかりミスか、思い込みによる間違いだ。ビジネス文書の基本は情報と感情を正確に伝えること。あなたのメール、相手をイライラさせていませんか?

「ビジネス文書のやりとりでカチンときた経験はありますか?」。ビジネスマン30人に聞いたところ、一番多かった回答は、名前や社名など固有名詞の間違いだった。「名前の漢字を間違われると、ああ、こちらのことをそれほど真剣には考えていないと考えてしまう」と答えてくれたのは阿部や安倍と間違われるメーカー勤務の安部さん。

手書きの場合、「専門」を「専問」と書くような間違いはよくあったが、パソコンで文書を作るのが主流となった今では、勝手に「専門」と変換されるので漢字の間違いは起きにくくなった。それにワードで書けば、おかしな部分をアンダーラインで注意してくれる機能もある。それでも変換ミスは防げない。それもまさか間違うはずがないと思い込んでいる重要な部分ほど見逃しがちである。

次に多かったのが上から目線を感じる文章と変な日本語。「文章だけでは表情が伝わらないので、偉そうだなと思わせる文章がたまにある」(40代・銀行)。「メールにおかしな日本語があると、そういう使い方もあるのかなと気になる。で、つい検索して調べたりして仕事に集中できない」(40代・流通)。

仕事時間を奪ったのだから、間接的とはいえ失礼なメールだろう。変換ミスを防ぎ、違和感を与えない文章を書くコツはあるのか。国立国語研究所の石黒圭教授に話を伺った。

「常識的には、すぐには送らず間を置いて見直すとか、自分以外の人に読んでもらうことでしょうが、よほど慎重に伝えなければならない文章でもない限り、しませんよね。

まずは自分の文章の癖、例えば『~ので』や『しかし』を多用しがちといった、自分の癖を知ることが大切です。これを意識してコントロールすれば読みにくさはある程度解消できます。

そして大事なのが読む側の立場に立って書くことです。最近、クラウドソーシングの文章を研究対象に調査したのですが、発注側のやって当然という表現をよく見かけました」

ビジネス文書は情報と感情が正確に相手に伝わらなければいけない。ただ、内容も正確だし、表現が丁寧でも、どこか傲慢さを感じる文章というものはある。

「例えば『ライティングがお上手な方には……』。敬語も使っていますし、文法的にも間違っていない。でも、読むほうはなんだかバカにされているような気になるのはなぜでしょう。

仕事を分割して、こういう仕事をしてほしいと発注するクラウドワークスでは、同じ内容を同じギャラで募集しても、たくさんのワーカーの手が挙がるものと、全然挙がらないものに分かれます。もちろん、たくさんの人を集めたほうが、質のいいワーカーに出会う可能性が高いわけで、その差は何かというと、やはり言葉の力です。

優れたワーカーほど、何のためにその作業をするのかを知りたいのです。たとえ言葉が足りなくても、発注者が何を求め、何のために依頼しているのかがわかる文章であれば作業のイメージが湧く。そうすれば、目的に合わせてカスタマイズしたり、違う方法を提案したりもできる。クリエーティブなワーカーと出会うためには、いい文章を書く必要があるのです」

クラウドワークス以外の仕事にも通じる大事なポイントだ。では、いい文章とは何だろう。敬語の間違いや変換ミスにはあまり目くじらを立てないという石黒さんにもイラッとする文章があるという。

「個人的に嫌だなと思うのは手抜きの文章。いわゆるコピペ感が漂うものですね。いくら丁寧な文面でも、使い回しだなと感じてしまいます」

定型の時候の挨拶、テンプレートそのままの文書では読む側の心には響かない。

もうひとつ嫌だなと感じるのは、受け手がやって当然という姿勢が透けて見える文章だと石黒さんはいう。

「仕事というのは、どんなことであれ、やってくださいという指示です。『よろしくお願いします』と書かれていても失礼なものは失礼。人にものを頼む場合には、選択権を相手に提示するのが丁寧さの基本です」

「~していただけませんか?」と疑問文で尋ねることから始まり、やがて関係が深まるにしたがって「~できますか?」、そして「~してください」と変化していく。関係性によって言葉は変わる。規範はない。

「目上の人には『了解しました』ではなく、『承知しました』とか『かしこまりました』といった言葉を使うことができれば社会人としてはいいでしょう。しかし、ポイントはそこではありません。読み手は言葉を通して言葉の背後にあるものを感じます。ですから、どこまで書き手がきちんと自分の顔を見せるか。表現を通して垣間見える表情、いわゆる顔が見える文章にしていくには、どうしたらいいか。コミュニケーションには最適解(その状況で一番調和のとれた答え)しかないので、その間合いが難しいのです」

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石黒 圭(いしぐろ・けい)
国立国語研究所教授
1969年生まれ。国立国語研究所教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。著書に『心を引き寄せる大人の伝え方集中講義』『日本語は「空気」が決める 社会言語学入門』ほか。

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■▼【図表】相手を怒らせる失礼なメール集(1)~(5)

■▼【図表】相手を怒らせる失礼なメール集(6)~(9)

■▼【図表】相手を怒らせる失礼なメール集(10)~(16)

(フリー編集者 遠藤 成 写真=iStock.com)

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