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なぜ女子は「人前で叱る」と根に持つのか

プレジデントオンライン / 2018年11月28日 9時15分

人前で名指しで叱ることは、女子に限っては絶対にNGだと吉野氏。「それが心の傷となったり、『あの先生の授業はもう聞かない』などと頑なになって成績が下がってしまうことがあるからです」。※写真はイメージです(写真=iStock.com/skynesher)

男子校と女子校で違う“注意の仕方”。男子の場合、「山田、黙れ!」でいいが、女子の場合は「はい、みんな集中!」と全体に声をかけたほうがいい。なぜなのか。東京都世田谷区の名門女子校「鴎友学園」の吉野明名誉校長は、「人前で褒めたり叱ったりすると、周囲の女子からの攻撃対象になってしまう」と説く――。

※本稿は、吉野明『女の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)のCHAPTER2「知っておきたい女の子の特性」の一部を再編集したものです。

■注意が通りにくい男子、敏感に受け止める女子

女の子の思考の特徴は、男子校と女子校の朝礼での先生の注意の仕方を比べるとよくわかります。男子校では、「山田、列に戻れ!」「佐々木、座れ!」「岡田、黙れ!」など名前と行動がワンセット。1人ひとり何をすればいいか、いけないのかを具体的に伝えなければいけません。

一方の女子校では、「ちゃんとして!」「はい、みんな集中!」といった声かけで事足ります。もともと他人とのおしゃべりが好きな女子の場合は10歳を超える頃から言語的な抽象化能力が育ち、それまで以上にコミュニケーション能力も上がってくるため、「ちゃんとして」という一般化された注意方法でも、各自の頭にきちんと入っていくのです(おしゃべりだけは止まらない時もありますが……)。

そのような女子に対して、男子相手のように注意してしまうと、「もっとちゃんとしなくてはいけないのかな……」と過剰に考えさせることになってしまいます。へたに個人名をあげて具体的に注意してしまうと、その子の自己肯定感をダイレクトに下げてしまうことになりかねません。注意の仕方にも男女差があるのです。

全体への注意内容は自分が言われていることとして耳に入らない男子と違って、女子は自分のこととしてしっかり聞いています。ですから、たとえ個人ではなく全体に対してでも、あまりに注意されることが多いと女の子は疲れてしまいかねません。

また、基本的に女の子は何をすべきか、どうすべきかがわかっていますから、あまりに男子に対してのような詳細な注意が続くと「わかってるわよ」とヘソを曲げてしまうこともあります。思春期の女子に注意をする時には、相手が少なくとも言葉の上ではわかっているであろうことを前提にしてください。

ましてや人前で1人を名指しで叱ることは、女子に限っては絶対にNGです。それが心の傷となったり、「あの先生の授業はもう聞かない」などと頑なになって成績が下がってしまうことがあるからです。女の子を個別に叱る時には、人前を避けるということは覚えておきましょう。これは、私たちが新人の先生、とくに男性の先生にお話ししていることです。

吉野 明(著)『女の子の「自己肯定感」を高める育て方:思春期の接し方が子どもの人生を左右する!』(実務教育出版)

これはご家庭でも同じです。親の期待に応えたい女の子には、「あなたはどうしてそうなの」「あの時も同じことをしたじゃない」などと過去にまで遡って、徹底的に追いつめるような叱り方は、その行為だけでなく、人格そのものを否定されていると感じてしまいます。反省するどころか、「自分はダメだと思われている」「自分は期待に応えられていないのだ」と自己肯定感を下げてしまうことになるからです。

■褒めるときにも注意が必要

女の子は人前で叱ってはいけないだけでなく、実は人前では褒めてもいけないのが難しいところです。もちろん、本人に実力があることを周囲の誰もが認めている場合には問題ありませんが……。

音楽委員のDさんがリーダーとなり、優勝した合唱祭。Dさんのがんばりを見ていた担任の先生が、みんなの前で「Dさんがリーダーとなって、みんなをまとめてくれたので優勝できました」と褒めたところ、Dさんの顔はみるみる曇っていきました。いったい、なぜでしょうか?

実はDさんは誰も手を挙げなかったので、自信はなかったけれど、仕方なく音楽委員に立候補したのです。なかなかみんなをまとめることができず、音楽の才能のある子のアドバイスでかろうじて乗り切ってきたのでした。

このようなケースで1人だけ褒めてしまうと、Dさんを追い込んでしまうことになりかねません。ヨコ並びであることを重視する女子においては、突出するとどうしても周囲から浮いてしまうことが多く、へたをすると「ひいきされている」「いい子ぶっている」などと、他の女子の攻撃対象になってしまうことがあるのです。

■全体を意識しながら褒める

このようなケースでは、どのように褒めればいいのでしょうか。まずは全体を褒めます。合唱祭のケースであれば、クラスみんなに向けて「みんなのコミュニケーションがよかったから、優勝できました」「クラスがまとまってよかった」と褒めることで、全員が「みんなで一緒にがんばった」とヨコのつながりを意識することができます。

リーダーも「みんなをまとめることができたんだ」という気持ちを持つことができます。女子を褒める時には、全体を意識することが重要です。個人を褒めたい場合は、面談の機会を使って褒めましょう。

余談ですが、これが男子であれば、リーダーをみんなの前で直接褒めても、何の問題もありません。褒められた子はむしろ、そのように褒められたことを誇りに思い、他の子も次は自分がその立場になりたいと競ってがんばるのが男子の特徴です。

■学校外にも活躍できる場所を

ヨコ並びが心地いいというメリットの裏には、「突出できない」というデメリットがあります。このデメリットを埋めるには、たとえば学校外での習い事や活動などでがんばることが一つの方法だと考えます。

女の子たちの会話の中には、「Eちゃんはバレエのコンクールに出たんだって」「Fちゃんは自分でアプリをつくれるらしいよ」など、友達の「こんなところがすごい!」という話がよく出てくるものです。

学校の中ではヨコ並びの関係に縛られていても、学校外の評価軸であれば、女の子はそれを安心して認めることができます。あの人もがんばっているのだから、私もがんばらなければと、お互いにやっていることは違っても、相手をリスペクトし、目標にしながら自分もがんばるきっかけになります。

ですから、何か一つ自分の得意なものを持つことは非常に重要です。学校以外の場で自分が人より秀でているものを持っていれば、自分に自信を持てる、つまり高い自己肯定感を持つことができるからです。それもあって、親御さんには「お稽古事を続けてください」とお話しするようにしています。

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吉野明(よしの・あきら)
私立鴎友学園女子中学高等学校名誉校長
東京三鷹生まれ。一橋大学社会学部を卒業し、鴎友学園の社会科の教師となる。以来、44年間、女子教育に邁進。鴎友学園における高校3年生時点での文系・理系選択者はほぼ半々という、女子校の中では極めて高い理系選択率を実現。女子の発達段階に合わせて考えられたプログラムなどにより、女子生徒の「自己肯定感」を高め、“女子が伸びる”学校として評価されている。

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(私立鴎友学園女子中学高等学校名誉校長 吉野 明 写真=iStock.com)

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