筆算不要の2ケタかけ算「桜井式」の手順
プレジデントオンライン / 2019年1月20日 11時15分
■「数学嫌いが生まれる現場は学校である」
先般、朝日新聞の投書欄「声」で、高校数学の微分積分が話題になった。社会に出ても微分積分を使う機会などまったくといっていいほどないのに、苦労して学ぶ必要があるのか疑問だという60代公務員の投稿に対し、現役の中学高校の教員や高校生、元技術者らから反論が寄せられた。
私は総括のコメントを求められ、「数学嫌いが生まれる現場は学校である。数学は数千年かけてつくりあげられてきた人類の英知で、その普遍的真理は至極の芸術。学校の数学で真の魅力に触れられないのはもったいない」との考えを述べた。
数学は中学から急に抽象的になる。そして「意味は考えるな、とにかく覚えろ」といわれることが多い。数学が人によってどのような経緯でつくられてきたのか、目的も存在理由も明確に伝えられずに教えられる数学。試験と受験のためだけの数学になってしまっているのが現実だ。
■「小学1年生から始める微分積分入門」という試み
私自身は、電子工学を通して数学の圧倒的リアリティを実感した。物理学、金融工学、AI(人工知能)など微分積分を使う現場は枚挙にいとまがない。実学としての数学も数学の授業の中では触れられない。これでは微分積分に興味・関心が持てないのは必然である。
私は小中高校で年間70回ほど講演している。毎月百貨店で開催している「小学生のための数学入門」という講座もあり、2018年の夏休み特集では、「小学1年生から始める微分積分入門」という試みを行った。私たちが日常の生活で実感していることが実は微分積分で説明されることを理解するには小学1年生でも早すぎない。むしろ高校生で始めることが遅い。
■たったの2ステップで終わる「2ケタのかけ算」の早業
私は子どものころから算数や数学の本質を考えることに喜びを感じてきた。小学6年生のときに、ある数を「9」で割る簡単な計算法を見つけた。今回は同じく小6のときに発見した、2ケタのかけ算(1□×1○、9□×9○)の簡単な解き方をご説明しよう。
2ケタのかけ算は一般的に筆算で解くが、桜井式計算法では筆算は使わない。たったの2ステップで終わる。「12×14=?」は、【1】前の数(12)と後ろの数の一の位(4)をたした数(12+4=16)が答えの百と十の位になり、【2】前の数の一の位(2)と後ろの数の一の位(4)をかけた数(2×4=8)が答えの一の位になる。つまり答えは「168」だ。
もう1つ、(9□×9○)のかけ算はどうか。これは「100」との差を利用する。「98×97=?」の場合、100との差が前の数は「100-98=2」、後ろの数は「100-97=3」。これを使い、上下2ケタずつ分けて答えを出す。上2ケタは、100に足りない数の和(2+3=5)を100からひいた数「100-5=95」になる。下2ケタは、100に足りない数の積(2×3=6)だ。つまり、「9506」が答え。
この2ケタのかけ算も数多くの問題(パターン)を並べ、それを見比べることで、共通する法則(ルール)を見出し、完成させたものだ。ビジネスの場でも、初対面の人と会話するとき、出身地や趣味など無意識に共通点を探しているはず。意識はしていないが、人間はみな数学的なのだ。
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サイエンスナビゲーター
1968年生まれ。東京工業大学理学部数学科卒業、同大学大学院修了。2000年、日本で初めてのサイエンスナビゲーターとして活動を開始。『面白くて眠れなくなる数学』など著書多数。
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(サイエンスナビゲーター 桜井 進 構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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