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"彼氏に成績で遠慮する"女子を変える方法

プレジデントオンライン / 2018年12月21日 9時15分

他の人の主張にも配慮しながら、自分の意見をしっかり発言できる子に育てるには――。(※写真はイメージです・写真=iStock.com/Stígur Már Karlsson /Heimsmyndir)

日本では女子の「自己肯定感」が低い。このため共学校では好きな人にかわいく見られるために、彼氏より上の成績を取ってはいけないという意識が働くことがあるという。東京都世田谷区の名門女子校「鴎友学園」の吉野明名誉校長は「女の子は過剰に空気を読むところがあるので、自己肯定感をつける教育が必要だ」と説く――。

※本稿は、吉野明『女の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)のCHAPTER2「知っておきたい女の子の特性」の一部を再編集したものです。

■反射的に「だよね~」と同調する女子

ヨコ並びを重んじる女の子たちは、過剰に空気を読み合っている部分があります。男性の私から見ると、なかなか大変そうに思うものですが、これを自然にしている子も多いですから、それほど心配するほどのことではないのかもしれません。

実際にある中学生の女の子は、「同調するのが苦痛と感じたことなんてない。だって当たり前だから。『これ、かわいいよね』と友達が言ったら、『そうだね~』と答えるのは反射みたいなもので、自分の中で「かわいいか、かわいくないか」なんて考えもしない。だから本心と違うことを言っている、という苦しさもない」と言っていました。

とはいえ、中には同調行動を強要されていることを苦痛に感じる子もいます。本当は1人で本を読んでいたいけど、お友達とのおしゃべりに参加する。家でのんびりしたいけど、誘われたから遊びに出かける。自分の意見を押し殺して、相手に同意ばかりしていることもあるでしょう。「わかる~」「だよね~」が女の子の口癖というのには、同調を常に求められるという背景があるのです。

家庭の中ではせめて、このような不満のはけ口として話を聞いてあげてほしいと思います。話すだけでスッキリするということもありますから、「そうだよね」「大変だよね」と受け止めてあげてください。これは大きく見れば、日本社会全体の問題とも考えられます。同調行動というのは、日本社会において強い圧力だからです。もしかすると同調することに疲れているのは、親御さんも一緒かもしれませんね。

■彼氏より上の成績をとってはいけない?

共学校の中では、女の子が無意識のうちに自分の能力を抑えてしまうことがあります。とくに好きな人ができると、相手のプライドを傷つけてしまうから、女の子はかわいく見られるために、彼氏より上の成績を取ってはいけないなどという意識が働くことがあるのです。

「父親は仕事、母親は家事」という役割分担の家庭で「女性は男性に尽くすものだ」という価値観の中で育った子は、とくにその傾向が強いでしょう。彼氏よりいい成績は取れない、兄よりいい学校には行けないと自分で枠を決めてしまい、自己肯定感を低くしている女の子は意外に多いのです。

自分の意見を持ち、それをはっきり言えるようにならなければ、なかなか自分でつくった小さな枠から抜けることはできません。鴎友では中学1~2年生に「アサーショントレーニング」というものを導入しています。

Assertion(アサーション)は「主張」という意味の英単語ですが、このプログラムでは相手の立場を尊重しながら、自分の意見を主張するということを実践的に学びます。もともとは自己主張の強いアメリカで、引っ込み思案な人でもちゃんと自分の言いたいことを伝えられるようにするために始まったもので、日本には1980年代に入ってきました。

相手を推し量ったり、周りに合わせてばかりいないで、自分の言いたいこと、言わなくてはいけないことを相手の立場もわかった上でちゃんと伝えられるようにするためのトレーニングと言っていいでしょう。

■ジャイアンに「本返して」という訓練

生徒たちが取り組む最初のプログラムの典型例は「本返してね」というものです。自分が本を貸した相手が、「ドラえもんのしずかちゃんだったら何て言う?」「のび太くんだったら?」「ジャイアンだったら……?」ということを話し合います。本を返してほしいのだけれど、「本返して」と言っても返してもらえないことがある。

相手が違ったら言い方を変えたほうがいい。どのように言えばジャイアンに伝わるだろう? なぐられずにちゃんと本を返してもらう方法は? このような答えのない問いを、皆で話し合いながら考えていきます。

その中で、言葉によるメッセージというのは単に自分が思ったことを相手に投げかければいいのではなくて、そこには関係性があるということが見えてくるのです。そして、相手を尊重しながら自己主張するスキルを学んでいきます。

このようなトレーニングが、実際にどのような場面で生かされるのでしょうか。例えば、友人とディズニーランドに行くことになりました。友人の家の門限は8時。一方の自分は6時です。「門限が6時なんて言ったら、バカにされるんじゃないか……」と不安になるのではなく、友人に「うちの門限は6時なんだよね」と話ができるかどうか。

その上で、「じゃあ、どうしよう」と考える。親に「この日だけは8時にして」と話をするのか、友人に一緒に早く帰ってもらうように頼むのか。「6時の門限があるから、ディズニーランドには行けない」と最初から諦めるのではなく、自分の主張を通すために知恵を絞るのです。

■価値観の異なる意見を尊重する

価値観の違う友人同士が一緒に遊びに行くという現実的な話から、お子さんが成長するに従って場面は広がっていきます。違う年代の人と働くにはどうしたらいいか。さらには文化、価値観も歴史観も違う隣国の人ともしっかり話し合い、明日の平和な世界を共に創っていくにはどうしたらいいか。そのような広い世界での活躍に向けた第1歩が、この「本返して」のトレーニングなのです。

吉野 明(著)『女の子の「自己肯定感」を高める育て方:思春期の接し方が子どもの人生を左右する!』(実務教育出版)

家でこの練習を行うには、例えば食事中がいいでしょう。「~に対して、どう思う?」と積極的に娘さんに問いかけ、意見を聞いてみてください。「お父さんはこう考えている」「お母さんはこう考えている」と、ご自身の意見を伝えてもいいでしょう。

その際は、できればご両親で意見が違うほうがいいですね。そして大切なのは、娘さんの意見であれ、パートナーの意見であれ、尊重することです。そうすることで、「自分の意見を言ってもいいんだ」「一つの意見が正解というわけではないんだ」ということを実践的に学ぶことができます。

鴎友では、中1の昼食の時間、最初のうちは「サイコロトーク」(編集部注:サイコロを振り、出た目が指示するテーマについて話し合うこと)を行って、意見を言い合うことが日常となる工夫をしています。

■空気も読めるけど自分の意見も言える子に

日本で育った女の子は、好むと好まざるとにかかわらず「場の空気が読める」という能力をすでに身につけています。場の空気を和ませることができるのは、この能力があるからです。

この非常に高いコミュニケーションスキルに加えて、「自己主張」という能力を手に入れることができれば、どこに出ても、国際社会の中であっても活躍することができると私は考えています。世界会議で各国の主張に配慮しながらも、日本の意見をしっかりと発言する。そんな未来の姿が、今目の前でがんばっている生徒たちの向こうに見えてくるのです。

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吉野明(よしの・あきら)
私立鴎友学園女子中学高等学校名誉校長。
東京三鷹生まれ。一橋大学社会学部を卒業し、鴎友学園の社会科の教師となる。以来、44年間、女子教育に邁進。鴎友学園における高校3年生時点での文系・理系選択者はほぼ半々という、女子校の中では極めて高い理系選択率を実現。女子の発達段階に合わせて考えられたプログラムなどにより、女子生徒の「自己肯定感」を高め、“女子が伸びる”学校として評価されている。

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(私立鴎友学園女子中学高等学校名誉校長 吉野 明 写真=iStock.com)

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