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橋下徹「なぜ大阪に万博が必要なのか」

プレジデントオンライン / 2018年11月28日 11時15分

2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まり、喜ぶ(右2人目から)松井一郎大阪府知事、誘致委員会長の榊原定征経団連前会長、世耕弘成経済産業相ら=11月23日、フランス・パリ(写真=時事通信フォト)

2025年の「大阪万博」開催が決定した。政府や大阪府・市、経済界が一体となった招致活動が実った結果だが、これによって「大阪都構想」の必要性が証明されたと橋下徹氏は断言する。その理由とは? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(11月27日配信)より抜粋記事をお届けします――。

■完全にダメダメだった大阪が復活した理由

2025年の大阪万博の開催が決定した。前回の1970年の大阪万博以後、大阪経済は衰退の一途をたどり、日本における第二の都市と言われながら、東京との差は広がるばかり。この数十年間、大阪の再興が叫ばれ続けてきたが、それらしい雰囲気を出すことすらできなかった。

しかし、今、大阪は動き始めている。大阪を訪れる外国人観光客の増加率や、ホテル稼働率、百貨店の売り上げの伸び率、地価の上昇率は日本の中でもトップクラスに入っている。

(略)

この万博会場兼IR誘致予定地は、6000億円とも言われる税金を突っ込んで大失敗し、そのまま放置されている埋め立て地だ。夢洲(ゆめしま)と名前が付けられているが、ブラックジョークならセンスがいい(笑)。この夢洲とその周辺の埋め立て地も含めて、大阪市は未来都市構想を描いたが失敗。その後、オリンピック招致にも失敗。大阪湾岸部は完全なる負の遺産と化していたが、今回の万博決定によって、それが宝の土地に蘇るチャンスを得た。

僕が大阪府知事に出馬した2008年の大阪は完全にダメダメモードだった。府民も負け癖がついているというか、大阪は何をやってもダメだろうという雰囲気だった。それが徐々に上向き加減になってきたところで、万博という明確な希望的目標ができた。これからの大阪は2025年に向けて完全にトップギアに入る。うちの子供ですらワクワクすると言っている。都市を活性化させるには、このようなワクワク感が最も重要だ。自称インテリたちが言う小難しい話ではなく、そこに住んでいる人たちの前向きな「気持ち」が街の活性化の原動力だ。

今回の万博決定にあたっては、何よりも安倍政権の力が大きかった。松井一郎大阪府知事と菅義偉官房長官の強力な人間関係によってこの話が動き出し、安倍晋三首相の大号令によって日本政府が一致団結して動いてくれた。世耕弘成大臣率いる所管省庁の経済産業省のみならず、外務省や世界各国の在外公館、そしてその他関係する省庁も怒涛のごとく動いてくれた。政府から経済界への協力要請もきっちりと行われ、経団連(日本経済団体連合会)や関経連(関西経済連合会)をはじめとする経済団体も一丸となってくれた。やっぱり日本全体が一つになって動くと、物凄い力を発揮するんだよね。

(略)

■なぜ「大阪オリンピック」は惨敗したか?

これくらいの話だと、その辺の学者や3流コメンテーターが言っていることと何ら変わりないので、知事・市長経験のある僕があえて言うとすれば、今回の大阪万博決定の最大の成功要因は、やはり大阪都構想の思想だったと断言できるということだ。実際、大阪都構想は2015年5月の住民投票で否決されたが、やはり大阪都構想を実現することこそが、大阪において必要不可欠であることがはっきりした。

万博という超ビッグプロジェクトを動かすには、その巨大な歯車を動かす最初のひと押しが重要で大変なことなんだ。歯車が動き出せば、あとは勢い。日本政府や与党自民党、そして経済界が一丸となって動き出したのは、歯車が動き出して勢いが付き始めてからのことだと言える。

静止している巨大な歯車を動かそうと思えば、まずは地元大阪において万博誘致方針をきっちりと固めなければならない。そして誘致方針を固めた後は、日本政府を動かす強烈なひと押しが必要になる。

ところが、これまでの大阪府と大阪市の関係では、万博誘致の方針など絶対に固めることはできなかった。

万博誘致そしてIR誘致の会場は、さっきも述べたけど、夢洲という大阪湾岸部の巨大埋め立て地。土砂を埋め立てるお金もなく、埋め立てが途中で放ったらかしになり、今でも水が貯まっている状態だ。関空の航路下にこの寂れた巨大埋め立て地があるので、関空を利用する外国人は、飛行機の窓から眼下に広がるこの埋め立て地を見て、大阪はスラム街かと感じるかもしれない。ここは長年、大阪の負の遺産としてその活用方法に悩んでいた。この埋め立て地の周辺にも埋め立て地があるが、どれも当初の夢のような計画通りには進まず、冴えない湾岸部となっている。東京のお台場とは大違いだ。

この埋め立て地は、大阪市港湾局が所管している。すなわち大阪市長、大阪市役所に権限がある土地だ。歴代の大阪市長や大阪市役所は、この使い道をあれこれ考えてきたけど、役人が考えることには限界がある。役人は、現状の法制度を前提としてできることを考える。役人には、これまでの方針を大胆に変え、日本政府を動かし、さらには新たな法律を作って現状の法制度を作り変えることまでして、とんでもないビッグプロジェクトを実行していく力はない。それは政治の役割だ。役人の力は、決められた方針の中で、具体案を精緻に作っていくことに発揮される。

あの390ヘクタールを超す巨大な埋め立て地を有効活用するには、大阪市役所の役人が考えるような案では起死回生は図れない。かといって、大阪市長や大阪市議会議員の政治力では日本政府も関西の経済界も、ましてや府民全体が動くということはない。ここが大阪市長、大阪市議会議員、大阪市役所が最も勘違いしているところで、大阪衰退の最大の原因なんだよね。確かに、大阪市役所の、役所として持っている権限や扱える予算規模は、東京都庁に次ぐ2番目の大きさだ。だから大阪市長、大阪市職員、大阪市議会議員は大阪市には力があると錯覚してきた。しかし、大阪市が持っている力とはしょせん法制度によって与えられた力、すなわち「行政の力」に過ぎない。他方、大阪全体、日本全体を動かすのに必要な力とは「政治の力」であって、この力は、大阪市長、大阪市議会議員、大阪市役所にはないんだよね。

大阪市は、行政の力はあるかもしれないが政治の力はない。ところが、大阪市は、なまじっか行政の力を持っているので、自分たちで何でもできると勘違いし、大阪府と力を合わる必要性を感じてこなかった。

かつて2008年のオリンピックを大阪へ招致するために、大阪市は全エネルギーを注いだ。ところが、このオリンピックは、「大阪市」主催であって、大阪府や大阪府内の市町村は知らん顔だった。大阪市長、大阪市役所、大阪市議会議員、大阪市内の関係団体は必死になっていたが、日本政府や経済界はおろか、大阪市のお隣、近くの市町村、そして関西の自治体も我関せずという状態。

結果は、大阪市は世界IOC委員102票のうち、6票のみ獲得。自分の一票を除けば、世界からは5カ国にしか支持してもらえなかった。大惨敗。これが大阪市単体の力なんだよね。ちなみにこのとき開催が決定したのは北京オリンピックだった。

他方、2020年の東京オリンピック。こちらは1380万人東京都で勝負。1380万人が一致団結したときの力は凄まじい。東京の経済界のみならず、日本政府も、日本の経済界も動かした。このような巨大なプロジェクトをやるときには、やっぱり都市の力、役所の力、首長の力、すなわち総合的な政治の力がものをいうんだよ。これが現実。

じゃあ、大阪における巨大プロジェクトを進めるのに、880万人大阪府、大阪府知事が旗を振ればなんとかなるのか? これが、なんとかならなかったのが、これまでの大阪だった。

(略)

■都構想は政策やビジョンそのものではなく実現のための「装置改革」

万博誘致案、IR誘致案などの超ビッグプロジェクトは、これまでの大阪府と大阪市の関係だったら絶対にまとまらなかった。大阪でまとまらなければ、安倍政権が動くこともなかった。逆に言えば、大阪府と大阪市が一体となって動けば、日本政府も動き、このような超ビッグプロジェクトも進めることができることが証明された。

そして、僕と松井さんの関係、松井さんと吉村さんの関係は、しょせん大阪維新の会という政治グループの中での人間関係に拠っているに過ぎない。選挙次第で、別政党に属する知事、市長が誕生することもあるだろうし、大阪維新の会に属する知事、市長であってもその人間関係がどうなるかは分からない。知事、市長の人間関係で大阪府と大阪市が一体性を保つということは、非常に不安定なものだ。

(略)

そこを未来永劫、恒久的に、府と市を、組織として一体化するのが大阪都構想なんだ。府庁組織と市役所組織という二つの存在を二度と認めない。都庁に一本化する。このように大阪が一本化すれば、今回の万博誘致やIR誘致くらいのビッグプロジェクトをガンガン進めることのできる大阪に生まれ変わる。

大阪都構想というのは政策やビジョンそのものではない。政策やビジョンを実行するための装置改革なんだよね。

(略)

(ここまでリード文を除き約3500字、メールマガジン全文は約1万2300字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.129(11月27日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【決定!大阪万博(1)】誘致成功は「松井・吉村コンビ」だったから。都構想実現で個人の人間関係に頼らない組織づくりを急げ!》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)

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