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"細かすぎて"に石橋貴明が絶対必要なワケ

プレジデントオンライン / 2018年11月24日 11時15分

『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ2018』公式ホームページより

今年3月に終了したバラエティー番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の人気コーナー、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」が11月24日に特番として復活する。なぜこの企画は人気なのか。お笑い評論家のラリー遠田氏は「マイナーな題材のモノマネで笑いを生み出すのは簡単なことではないが、この企画には視聴者を笑わせる画期的な『工夫』があった」と分析する――。

■まさかの復活に期待の声

『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の人気企画「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」が、11月24日に特番『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』として復活します。石橋貴明、バナナマン、今田美桜が約50組の芸人たちのフレッシュなモノマネを見届けます。

『とんねるずのみなさんのおかげでした』で「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」が初めて放送されたのは2004年のこと。それ以来、年に1~2回ほどのペースで続けられ、放送されるたびに大きな反響を巻き起こしてきました。2018年3月に番組が終了したため、この企画も二度と行われることはないと思われていました。今回まさかの復活を遂げられたのは、なぜでしょうか。

■あえてマイナーなモノマネを披露

「モノマネ」は、テレビバラエティーの世界で不動の人気を誇っています。『ものまね王座決定戦』(フジテレビ系)をはじめとして、モノマネ番組には長い歴史を持つものが多く、モノマネというジャンルでは毎年のように新しいスターが生まれています。

「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は、モノマネという芸を今までとは違った切り口で見せる画期的な企画でした。そもそもモノマネがなぜテレビで多くの人にウケやすいのかというと、真似される対象が有名人だからです。

例えば、「和田アキ子のモノマネ」は、和田アキ子というタレントを知っている人なら誰でも理解することができます。基本的に、テレビで披露されるモノマネで扱われるのは、どんな人でも分かるようなメジャーな題材ばかりです。だから、芸を披露する前に余分な説明や前振りが要りません。これがモノマネという芸の優れているところです。

しかし、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」では、あえてメジャーではないものをモノマネの題材とします。また、たとえ有名人を扱う場合であっても、今までなかった新しい切り口でネタが作られていることが多いのです。この手のネタはそれまでにも「マニアックモノマネ」などと呼ばれていて、モノマネの1つのジャンルではありましたが、主流ではありませんでした。

マイナーな題材でモノマネを披露して、それを多くの人に理解させて、笑いを生み出すのは簡単なことではありません。しかし、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」では、いくつかの工夫によってそれを実現させています。

■笑いの山をつくる「斬新な工夫」

まず、舞台に登場したパフォーマーが自分自身でこれから披露するネタのタイトルを述べます。タイトルは「○○しているときの○○」のように説明的なものが多く、かなり長文になることもあります。

題材がマニアックであればあるほど、この説明は長くなる傾向があり、その時点で「そんなところに目をつけたのか!」という驚き混じりの薄い笑いが起こりやすくなっています。それによってネタに対する視聴者の心理的なハードルが下がり、笑いやすくなります。説明をあえて馬鹿丁寧にすることでマニアックモノマネの面白さを際立たせているのです。

また、ネタを終えたパフォーマーが「穴に落ちて舞台の底に消えていく」という演出も画期的でした。この企画では1つひとつのネタの時間が短いため、パフォーマーの出入りに時間がかかるとそれだけでテンポが悪くなってしまいます。もちろん舞台から退場するシーンだけを編集でカットすることはできますが、そこを切ってしまうとライブ感が損なわれてしまいます。ネタが終わるタイミングでパフォーマーを穴に落としてしまえば、退場する時間を削れる上に、笑いどころが増えて一石二鳥です。

たとえモノマネ自体がそれほどウケなくても、人が穴に落ちる姿はそれだけで笑いになります。パフォーマーを穴に落とせば、1つひとつのネタの最後に必ず笑いの山を作ることができるのです。これもマニアックモノマネを見せる工夫として斬新でした。

■「ショートネタ」流行の火付け役

「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」の手法を応用する形で、2007年には『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)という番組が始まりました。この番組では、芸人が1~2分程度のショートネタを披露して、ネタが終了するとベルトコンベヤー状の舞台装置に乗って横に流されていきます。穴に落とすという「縦移動」の代わりに、ベルトコンベヤーで流す「横移動」が発明されたのです。

『爆笑レッドカーペット』は特番として話題になったのち、レギュラー化されて2009年にはゴールデンタイムに昇格する人気番組となりました。この時期には深夜番組の『あらびき団』(TBS系)などもあり、「ショートネタ」のブームが起こっていました。もともとテレビでは長い時間のネタを集中して見てもらうことが難しいという傾向はあったのですが、この時期にはそれに拍車がかかり、どこの局でもショートネタ番組が乱立していました。

そんなショートネタのブームを生み出すきっかけになったという意味でも、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は革新的な企画だったのです。

■レギュラー陣につられて笑う仕組み

とんねるず、バナナマン、関根勤さんというこの企画のレギュラー陣が、出演者のパフォーマンスを温かい目で見守っている、というのも大事なポイントです。彼らが腹を抱えて笑っているからこそ、多少マニアックなネタであっても、視聴者はつられて笑ってしまうのです。

そもそも、関根さんは「元祖マニアックモノマネ芸人」とも呼べる人物です。若手の頃から千葉真一、大滝秀治など、ほかの芸人が扱わないような意外な切り口のモノマネを得意としてきました。豊富なレパートリーの中には「国を開けなさい」と言うペリー、電球を発明した瞬間に「サクセス!」と叫ぶエジソンなど、歴史上の人物のモノマネもあります。

さらに言えば、番組のMCを務めるとんねるずが世に出たきっかけとなった『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で披露したネタの中にも、「マニアックモノマネ」が多く含まれていました。『巨人の星』の星一徹の顔マネ、正月にたこ揚げをするアントニオ猪木のモノマネ、当時の人気番組『11PM』のオープニング再現など、当時の彼らのネタには目の付け所だけであっと言わせるような面白さがありました。

■河本準一も博多華丸もメジャーにした

とんねるずと関根さんは自分自身がマニアックモノマネを武器にして世に出てきたからこそ、それを見つめる眼差しが温かいのです。

漫才、コント、本格派のモノマネといったネタに比べると、マニアックモノマネは「邪道」というイメージがあります。しかし、単純な面白さや破壊力では決して引けは取らないのです。とんねるずと関根さんの立ち振る舞いからは、マニアックモノマネという独特の道を行く芸人に対するリスペクトが伝わってきます。

次長課長の河本準一さんの「お前に食わせるタンメンはねえ!」というギャグも、博多華丸・大吉の華丸さんの児玉清のモノマネも、この企画で披露されたのがきっかけでメジャーになりました。この2人をはじめとして、この企画で人気者になるチャンスをつかんだ芸人はこれまでに大勢います。

新しい才能を発掘するための貴重な場所として、今でも「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」は必要とされているのです。(文中敬称略)

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ラリー遠田(らりー・とおだ)
ライター、お笑い評論家
1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『逆襲する山里亮太 これからのお笑いをリードする7人の男たち』(双葉社)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など多数。

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(ライター、お笑い評論家 ラリー 遠田)

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