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一流の営業が「昨日のランチ」を聞くワケ

プレジデントオンライン / 2018年11月27日 11時15分

写真=iStock.com/kazoka30

いま営業現場で成績を残すのは「口数が少ない内向的なタイプ」だという。どうやって商品を売っているのか。サイレンスセールストレーナーの渡瀬謙氏は「無理に話しかけても警戒されるだけ。過去→現在→未来の順で質問するといい」とアドバイスする。「プレジデント」(2018年12月17日号)の特集「話がうまい人入門!」より、記事の一部をお届けします――。

一向に上向かない消費マインドに加え、インターネットの普及でいつでもどこでも商品の性能、価格を比較でき、クリックひとつで購入できる時代。営業マンを取り巻く環境は厳しい。しかも、振り込め詐欺など悪質セールスは相変わらず横行し、見知らぬ営業マンに対する警戒感は高まるばかりだ。

一方、企業はといえば生産性を上げるために管理部門を削減して営業部門に配置転換し、営業力強化を図ろうとしている。結果、自分は営業職に向いていないと思っている人が営業のフィールドに立つことになる。

立ちはだかる客との間の高い壁。営業回りをしても伸びない成績。やはり自分は営業に向いていないと溜まるストレス。

営業マンというと、バイタリティあふれる行動力とタフな交渉力、立て板に水のトークで契約を取る、外向的でエネルギッシュなイメージがある。

「自分をそちらにシフトしなくてはと間違った努力をしている人が多い。上司の指導も『俺が若い頃は~』となりがちですが、もはやそういう時代ではありません。むしろ言葉数が少ない、内向的な営業マンのほうが成績を残せる時代です」

と語るのは営業マン教育トレーナーの渡瀬謙さん。

「お客様の立場になれば、見知らぬ人が話しかけてきたら、警戒するのは当然のこと。初対面の人をオープンに受け入れる人はまずいません。ボクシングでいえば、完全にガードした状態です」(渡瀬さん、以下同)

もともと口下手な人がいくらセールストークの練習をしても、やはりどこかに無理が表れる。「この人、無理している」と思われたとたん「この人の素ではない」「嘘をついている」と警戒は深まる。

「内向的な性格は決して欠点ではなく長所がたくさんあります。口下手でも言葉を選びながらゆっくり話せばいいし、話すのが苦手でも、売るのが上手であればいいのです。まずは自信を持ってください」

■おしゃべりになる必要はゼロ

では相手の警戒心をどう解くか。

「まず雑談をしなさいと教育されますが、雑談の目的を理解していないから、笑わせればいい、盛り上げればいいと思っている人もいて、それができないと悩んでいる人も多いわけです。

雑談の目的は相手の警戒心を取り除くことです。こちらから面白い話をする必要もないし、盛り上げる必要もありません」

警戒心を取り除くポイントは自分が話すことよりもいかに相手に話してもらうかだと渡瀬さん。初対面の人とでも、出身地や趣味などの話を交わしただけで、距離が急に近く感じることがある。

「相手が構えたまま、いきなり仕事の話を始めても、そういう感じにはなりません。では、相手がガードを下げてから話せばいいかというと、そうでもありません。自分の扱っている商品に興味があるのか。どこまで商品の知識があるのか。そもそも相手にとって本当に必要なものなのかを確認する必要があります」

これがヒアリングといわれるステージだ。

「相手が商品に興味があるのかないのかわからないのに、イチから説明し始める人がいます。練習ばかりしていると、どうしても商品の説明をしたくなってしまう。でも伝わらなければ、それはただの独り言です」

客側にしてみれば、すでに知っていることや、興味のないことを丁寧に説明されても「うるさい」と感じるだけ。では、相手にニーズがあるかどうか、どう知るか。闇雲に質問してもうまくはいかない。聞き方のコツはひとつだけだと渡瀬さん。

「例えば、クルマをセールスする場合でも『最初に乗ったクルマは何ですか?』(過去の質問)、『今乗っているクルマは何ですか?』(現在の質問)、『これから買いたいクルマは何ですか?』(未来の質問)をうまく使い分ける。当然、営業マンの一番欲しいのはより売りやすくなる未来の質問に対する答えです。ところがお客様に未来の質問をいきなりぶつけても、なかなか答えてくれません。未来の質問は答えにくいのです」

なるほど「明日のランチ、何を食べますか?」と聞かれても答えにくいが、「昨日何を食べましたか?」(過去の質問)→ハンバーグ定食。「今日は何を食べましたか?」(現在の質問)→ラーメン餃子セットという流れがあってから「明日のランチ、何を食べますか?」と尋ねられたら、「少しあっさりめでそばにでもしようかな」と答えが見つかるように、過去、現在と聞いてから未来の質問をしたほうが、相手は答えやすいのだ。

過去の質問は、商品選びで相手が重視するポイント(価格なのか、機能性なのか、操作性なのか、デザインなのか)もあぶり出してくれる。

「相手を知ったうえで、ピタリと合わせた説明をできる人が売れるのです。つまり、話すのは苦手でも、相手の話を上手に聞くことができる人こそが営業マンに向いているのです」

目の前の相手にぴたりと合わせた説明。これこそがプレゼンだ。

「相手が大勢の場合でも同じです。大切なのは決裁者が納得すること。ヒアリングで決裁者が何を求めているのかを聞き出し、それに応じた展開を整えておく必要があります」

相手も自分の要望を理解した提案と感じればこちらへの信頼感は増す。しかし、成約となればよいが「納得したけれどいらない」と断られる場合もある。もう一押しすべきか。

「『そこをひとつ、なんとかお願いします』としつこく粘るのは逆効果。『わかりました。また新しい商品のパンフレットができたら、伺いますね』と残念そうな顔もしないで、爽やかに帰りましょう。今の時代、粘っても売れません。お客様のためにと商品を提示し、説明し、信頼を築いてきたのに、結局自分の都合かとなったとたん、信頼度は落ち、関係も悪くなってしまいます」

今買わなくても、半年後、もしかしたら10年後に買ってくれるかもしれない。誰かを紹介してくれるかもしれない。買ってくれなかった人と関係を切ってしまうのではなく、よい関係をキープすることが大事だと渡瀬さん。実際、優秀な成績の営業マンほど、買わなかった人との関係をたくさんキープしているという。

■断られない営業マンとは?

とはいえ、断られたときの精神的なダメージを考えると、ますます口を開くのが怖くなるが、渡瀬さんは、そもそも営業は断られないという。

「お願いするから断られるのです。目の前の10人全員に売るとなるとプレッシャーですが、この商品が欲しいという人を10人から探す作業と考えれば『こういう商品を扱っておりますが、興味はございますか?』と聞いただけですから『興味はない』という答えでも、断られたわけではありません。そう考えればプレッシャーは消えていくものです」

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※「プレジデント」(2018年12月17日号)の特集「話がうまい人入門!」では、本稿のほか、レクサス販売員のセールストークや全日本空輸の接客術、FBI交渉官の説得方法、「言いたいことを1分でまとめる法」など、「話し方」に関する話題を満載しました。ぜひ誌面もご覧ください。

 

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渡瀬 謙
サイレントセールストレーナー
1962年生まれ。明治大学卒業後、メーカーを経てリクルートに入社。異色のしゃべらない営業スタイルで営業達成率全国トップに。現在は独立し、生保、銀行をはじめとする営業マン教育のコンサルティングを行う。

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(フリー編集者 遠藤 成 写真=iStock.com)

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