目撃 ゴーンへの"社内忖度"が現れた瞬間
プレジデントオンライン / 2018年11月30日 15時15分
■せっかちで、すぐイライラしだす
「ゴーンさんは当時の日産幹部には絶対にできなかった仕事をした。会社に何かあっても、ゴーンさんが何とかしてくれる。そんな安心感があった」
そう振り返るのは、20年以上日産に勤めた男性だ。一方でただひとつ、その男性も不満に思っていたことがある。それはゴーン容疑者の給料の高さだ。
「“コストカッター”のゴーンさんが来てから経費が切りにくくなった。それでも会社のためと思ってはいるが、さすがにあの給料は高すぎる。現場が踏ん張るなか、業績が低迷したときですら、同等の給料をもらっていた」
ゴーン容疑者の給料は株主からもたびたび「高すぎる」と指摘された。しかし「自動車産業はサバイバル競争に突入しており、グローバル企業は世界基準で報酬を払う必要がある」と一蹴していた。
そんななか、ゴーン容疑者と関わりを持つ日産関係者は「ゴーンに対する忖度が社内にあった」と打ち明ける。
「何か問題が起きたとき、社内では常に『ゴーンなら、どう対応するか』と考えていた。ゴーンは教科書で、ある意味教祖的な存在。周囲はつねに気を使っていた」
社員の忖度はいつ現れるのか。
「やり手のイメージの一方で、ゴーンには独特な怖さがあった。たとえば、ゴーンはよく工場見学に行くが、見学先に選ばれた工場は秒刻みでスケジュールを組んだり、休憩場所を設置したり、不自然なくらい準備に力を入れる。ゴーンはせっかちで、少しでもダラダラすると怒りだす。怒るとその工場の評価が落ちるので、現場は必死になる」
青山学院大学の八田進二名誉教授(会計監査論)は今回の事件に関し、「内部統制の限界だ。日産にゴーン容疑者に対して物を言える監査や社外取締役がいたのか」と指摘する。
「5年間にわたり、計数十億の不正があったのに気づけなかったのは、有価証券報告書の内容について検証すべき監査役が何をしていたのか疑問が残る」
一部報道によると、オランダに設立された日産の子会社が海外の高級住宅などを購入し、ゴーン容疑者に無償で利用させていた。「そもそも、その海外子会社に経済合理性はあったのか。いくら現場に倫理観がある人間がいても、上から決裁が出てしまえば従わざるをえないのが現状だったのでは」。
日産にゴーン容疑者を止められる人はいなかったのか。
(プレジデント編集部 写真=iStock.com)
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