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偏差値40台の小学生を早大入学させる技

プレジデントオンライン / 2018年12月4日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/mizoula)

大学附属の中高一貫校の人気が沸騰している。特に人気なのが「GMARCH」の附属校。中学受験塾代表の松本亘正氏は「名門私大は定員を抑制しており、エスカレーター式に大学進学できる附属校の“お得感”が注目されています。あの日大の附属校も例年通りの人気です」という。来年の中学受験の最新動向を報告しよう――。

■「学費は高いがお得」大学附属の中高一貫校の人気が沸騰中

大学附属の私立中高一貫校の人気上昇が止まらない。

来年2月に東京、神奈川で本番試験を迎える中学受験。3万7000人以上が私立中学を受験するが、その腕試しとして、11月に多くの子供が大手中学受験塾・四谷大塚主催の全国模試(「合不合判定テスト」)を受けた。その結果、エスカレーター式に大学まで進学できることが多い大学附属校、とりわけ「GMARCH」の附属校の志願者数が昨年比で大幅に増えたことがわかった。

「GMARCH」とは、学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学の総称。「早慶」(早稲田大学、慶應義塾大学)あるいは「早慶上理」(早慶、上智大学、東京理科大学)に次ぐ難関大学とされている。

例えば、2月1日、2日に試験が行われる大学附属校を取り上げてみると、男子は以下のように志願者数が増えている。

明大中野(昨年同時期比122%:445人→545人)
青山学院(127%:175人→222人)
立教池袋(129%:136人→176人)
中央大附属横浜(150%:72人→108人)
明大明治(113%:227人→256人)
法政大学中(118%:66人→78人)
明大中野八王子(112%:93人→104人)

女子も同様だ。

中央大附属横浜(145%:107人→155人)
中央大附属(130%:113人→147人)
明大中野八王子(155%:66人→102人)
立教女学院(113%:141人→159人)

■青山学院大学の合格者数:9504人(16年)→7313人(18年)

この模試を受けていない他塾の子供もいるので、実際の競争率はさらに高くなる。なぜ大学附属校の人気が過熱しているのか。理由は、「大学入試改革」と「首都圏の大学定員抑制」にある。

特に後者のインパクトは大きい。文部科学省が定員管理の厳格化を進めており、大規模大学は入学者が定員の1.1倍以上になった場合、助成金をゼロにされてしまうことになった。そこで、青山学院大学が9504人(2016年)→7313人(2018年)と合格者を減らしたように、今春の大学入試では私立大学が合格者を絞るようになり、不合格者が続出した。

これまでなら早慶に合格した生徒がGMARCHに流れ、これまでならGMARCHに合格した生徒が不合格になり、それより入りやすい大学へ。そして、翌年はさらに定員抑制が厳しくなることが予想されたため、今のうちに現役で入学しておこうという妥協が生まれた結果、辞退者が減り追加合格も抑制されるという状態になったのだ。

すると、これまで早慶やGMARCHに多くの合格者を出してきた進学校の中には急激に実績が下降した学校が出てきたのである。

■「偏差値50前後の進学校」GMARCH合格者数“半減”

四谷大塚の模試で「80%偏差値」(※1)が50程度、また、「50%偏差値」(※2)が50弱の中堅校のうち、男子校の高輪、女子校の共立女子を例にあげてみよう。なお、偏差値が50であれば「合格圏」とされている。

※1 80%の可能性で合格できる偏差値 ※2 50%の可能性で合格できる偏差値

2校のGMARCHと早慶への大学合格者数の推移は以下の通りだ。

●「GMARCH」合格者数 2016年度→2018年度
高輪 234→135
共立女子 311→207
●「早慶」合格者数 2016年度→2018年度
高輪 104→41
共立女子 95→51

わずか2年間で大きく実績を落としている。高輪にいたっては、早慶104人から41人と激減。共立女子も95人から51人と半分近くになっている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Manmarumaki)

もちろん、同じ「偏差値50」の学校であっても上記2校とは異なり、大学実績を落としていない学校もある。ただ、それらの学校は複数回の入試を行い、第一志望の滑り止め校として受験されることも多く、実力のある生徒が入学することもある。よって、大学進学実績もそれほど悪くならないのだ。

実はこの2校も複数回受験を行っているが前述の学校とは異なり、複数回ともだいたい同程度の難易度となっている(通常は、2回目、3回目……のほうが、難易度が高くなることが多い)ので、「あと一歩で早慶」「GMARCHには合格できる」という子が、定員抑制で大きく影響を受けることになった。

■「明治大学合格20名」でも、実際に合格したのは10名?

一般的に、各高校が毎年公開する合格者数は、のべ人数であることが多い。たとえば「明治大学に20名合格」といっても1人で複数の学部に合格したら重複カウントされていることがほとんどだ。実際は10名が2学部ずつ合格して20名合格かもしれない。ホームページ上などに掲載された数字と実際に合格した生徒数には乖離があり、数字は割り引いてみる必要がある。

しかし、中学のうちからその大学の附属校に入れば、かなり高い確率で入学が叶う。そのあたりが、附属校人気の核心と言えるだろう。

たとえば、明大中野であれば403人中332人、80%以上の生徒が推薦で明治大学に入学できる。しかも国公立大併願の場合、明治大学の推薦を保持してチャレンジでき、1名が東京外国語大学に入学した。また、推薦枠を活用せずに東京大学や一橋大学に合格した生徒もいる。

中央大附属も409人中346人、85%近くの生徒が推薦で中央大学に入学できる。他大学併願制度を活用して7名が東京工業大学や国際基督教大学など他大学にも進学している。

このように100%が推薦されるわけではない一方、実力と意思が伴えば国公立大も受験できる学校も多い。附属校だからといって必ずしも進路が固定されていないというのも、大学附属校人気の理由のひとつだ。

■「偏差値40台でGMARCH」は厳しい時代になった

大学附属校は受験人数だけではなく、偏差値も上昇傾向にある。

中央大附属、法政大学中、明大中野は、昨冬の受験では偏差値49で合格可能性50%だった。つまり、偏差値40台でも合格できたわけだ。しかし、来年の入試ではそうはいかない。四谷大塚によれば、中央大附属は偏差値51、明大中野は偏差値51と予想されている。偏差値40台でもGMARCHというのは過去の話になりつつある。

中学受験においてGMARCHなどの大学附属校に入れるというのは、極めて「お得感」が高い。中高6年間と大学4年間を私立で学べば確かに学費は莫大だ。

しかしながら、大学附属ではないほかの私立の進学校と比べると、大学受験をしない分、塾代も少なくて済む。また、もともと国公立大学は狭き門であり、近年は前述したように早慶上理どころか、GMARCHの合格も厳しくなっていて、勉強を一生懸命すれば合格できる保障があるわけでもない。それであれば、中学から附属校に入れてしまったほうがいい。ここにきてそのコストパフォーマンスの良さに気付いた保護者が増えたということだろう。

■塾関係者注目「香蘭女学校」の人気が大爆発している理由

そんな中、今、塾関係者や保護者の間でもちきりの私立中高一貫校がある。

香蘭女学校のウェブページより

香蘭女学校中等科(東京・品川区)だ。昨冬までは2月1日の1回だけの入試で160人募集していたが、来年は2月2日の午後入試にも参入し計2回の入試を行うことになった。その影響で2月1日の定員は100人と減ったが、前出の四谷大塚の模試の結果から、志願者数がかなり増える見込みなのだ。

さらに、学校説明会において「2月1日は定員同等の合格者数しか出さない」と説明しており、競争が激化するのは必至だ。2月2日は60人定員のところ、四谷大塚の模試受験者だけで353人が志願している。今回の同校の試験では多くの子供が涙をのむことになるだろう。

いったいなぜ香蘭女学校がこれほどまでに注目されているのか。

実は「立教大学に卒業生の半数が進学できる」学校なのである。これは塾関係者の中では常識だが、一般的にはそれほど知られていない。

今春の香蘭女学校高等科の卒業生数は168人。80人の立教大学推薦枠があるので、約半数は立教大学に進学できる。本番試験での一発勝負で合否が決まる中学受験と比べると、中学に入ってからの学内の成績は年数回ある定期テストで決まるため、挽回可能だ。偏差値40台で香蘭女学校中等科に入学したとしても、6年間努力して学年で「真ん中より上」なら立教大学に進学できる、というのはかなり魅力的なものに映るはずだ。

しかも昨年度の場合、香蘭女学校高等科からは国公立大8人、早稲田大6人、慶應大2人、明治大2人、青山学院大2人、学習院大2人が進学している。168名人100人超が国公立大+GMARCH以上に進学しているのである。

昨冬は偏差値40台でも香蘭女学校中等科に合格できたのだが、来年は確実に厳しくなるだろう。2017年は偏差値46だった合格ラインは、2018年は48と上昇し、来年は2月1日入試が偏差値49、2月2日入試は偏差値55と予想されている。

■偏差値40台でも早稲田大に進学できる中高一貫校

一方、偏差値40台で早稲田大学への進学が可能な中高一貫校もある。

早稲田佐賀中学校・高等学校のウェブページより

早稲田実業中高であれば男子は偏差値60以上、女子は偏差値65以上ないと合格できない。しかし、早稲田大の系属校である早稲田佐賀中学校・高等学校(佐賀県唐津市)は偏差値40台でも合格できる。来年の合格ラインは偏差値47と予想されている。

同校は早稲田大学の系属校として、入学定員の50%を上限とする推薦枠を設定している。2019年は110人が早稲田大学の推薦を獲得している。国公立大や医学部を目指し、自ら推薦権を捨て、退路を断って受験する生徒もいるため、学年全体の上位70%~75%程度の成績が取れていれば(下位4分の1にならなければ)、早稲田大学への推薦入学がかなう結果となっている。

これほどのお買い得な学校はなかなか見当たらない。首都圏からは遠く離れているが、寮も併設されているので、寮に入れてもよいという覚悟と資金が保護者にあれば、偏差値40台で早稲田大学への道を切り開くことができるのである。

■バッシング浴びた「日大」の附属高が例年通り人気のワケ

香蘭女学校と早稲田佐賀は、大学附属にわが子を進学させたい保護者にとってはかなりの狙い目となるはずだが、大学附属と言えば、2018年に数々のバッシングを浴びた日本大学の付属校の人気度や難易度はどうなっているだろうか。

調べてみると、これが、どこも人気が落ちていない。

2月1日が試験日になっている学校は、日大第一、日大第二、日大第三、日大豊山、日大豊山女子、日本大学、日大藤沢で、そのすべての学校の予想偏差値が前年度とほぼ同じになっている。日大アメフト部の「危険タックル」に関する報道による影響が懸念されていたが、日大附属校の人気は衰えていない。

昨今の大学入試をめぐる状況を考えると、中学のうちに「日大を確保できる」というのは受験者本人とっても保護者にとっても強みになるということだろう。大学附属校人気を裏付ける証左といえる。

(中学受験専門塾ジーニアス代表 松本 亘正 写真=iStock.com)

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