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"60歳に見えない"美容室社長の引退計画

プレジデントオンライン / 2019年1月18日 9時15分

アースホールディングス社長 國分利治氏

■65歳までに社長を譲る

私は2018年12月で60歳になります。18年はまたアースホールディングスの前身であるビッグモアの創業から30年目にあたり、かねての経営目標であった「フランチャイズオーナーを100人に」という目標を達成した、区切りの年でもあります。

実は5年ほど前から「65歳でアースホールディングス社長を交代し、経営の第一線から身を引こう」と計画していました。最初は「60歳で」とも思ったのですが、当社の場合は独自のフランチャイズシステムをとっているため、トップの交代には仕組みの整備が必要です。それには時間がかかると考え、65歳に延長したのです。

新しいトップは今のアースホールディングスの取締役の中から選ぶことになります。彼らはみなそれぞれの会社を持つ、フランチャイズオーナーでもあります。その中の誰かにバトンタッチする流れを、65歳までにつくっていこうと考えています。

フランチャイズ本部であるアースホールディングスで社長を務めるには、グループ全体をまとめる力が要りますから、十分な実力と経験を持った人を選ぶことになるでしょう。

■次のトップはきちんとした人がいい

第1に、自分の会社とアースホールディングスを両方見ないといけないので、両者をきちんと平等に扱えることが絶対条件です。

むしろ自分の会社を犠牲にしてでもアースホールディングスのために働くようでなければ、グループの人たちがついてきてくれないでしょう。その意味で「自分の会社を伸ばしたい」と思っている人は難しい。

第2に、平常心を保ち、あまり感情的ではない人がいいと思っています。私自身はあまり怒らないタイプです。怒ってみせることはありますが、基本的に感情的にはなりません。

感情的にならなければ判断がブレないし、好き嫌いがないので公平に人を扱えます。そうして敵をつくらないというのも、トップに立つ人に必要な資質でしょう。

第3に、私自身はいい加減な人間なので、次のトップはきちんとした人がいいですね(笑)。

私の故郷は福島県福島市です。父は母方の祖父が創業した製材会社のナンバー2で、営業全般を見ていました。しかし祖父が引退してからは、苦労が増えたのか愚痴が多くなりました。たとえば「社長がもっと営業の苦労をわかってくれたらなあ」とこぼすのです。

その気持ちも今ならばよくわかります。でも当時は「ナンバー2のまま愚痴を言うなんて無意味だ。嫌なら辞めて独立すればいいのに」と考えました。私は高校卒業後、堅実な電気関係のサラリーマンをしていたのですが、そのままでは社長になれそうもなかった。それで19歳で会社を辞め、東京に出ることにしたのです。

■独立したのは31歳のとき

転職先は新宿の美容室でした。5年間で仕事を覚え、25歳で独立開業するつもりでしたが、実際にはもう少し時間がかかりました。

その美容室は、従業員のなかからフランチャイズオーナーをつくってどんどん独立させるという経営方針でした。私が最初に入店した新宿店の店長は、同じ会社の赤字店を会社から譲り受けて独立しました。一緒に店を移った私は、それから8年間で17店の出店に立ち会い、出店準備、求人、マーケティング、フランチャイズシステムなどを一通り学びました。独立したのは31歳のときです。

以来、ひたすら目の前のことを一生懸命やるだけでした。独立して店を構えると、その年のうちに2号店を出店。10年間で50店舗まで増やしました。その後、ビッグモアがフランチャイズ本部となり、そこに独立したオーナーが加入するという形に切り替えました。1999年に1人目のオーナーが誕生したのを皮切りに、2006年までに23人のオーナーが誕生しました。

そして07年にはアースホールディングスを設立。直営店をなくし、ビッグモアを含めてすべてをアースホールディングスのフランチャイズ店とする、現在の形態が出来上がりました。

今、私は自分の会社であるビッグモアを経営しながら、フランチャイズオーナーとしてアースホールディングスに加盟し、その一方で本部であるアースホールディングスの社長でもあるという立場です。力のついた店長たちにはどんどん店を譲って独立させていったので、今ではビッグモアには数店を残すのみとなっています。

直営店をどんどん独立させていったのは、「オーナーとしての意識がある人が店を切り盛りしたほうが経営はうまくいく」という信念があるからです。

■及第点のオーナーは3割

その意味では、アースホールディングスに加盟している各フランチャイズ店では、経営者から有能な部下に経営を譲っていくのが一番自然な形だと思っています。

私はガーデニングが好きなので、田舎に引っ込んで植物を世話しながらのんびり暮らすという生活にも憧れはありますが、実際には社長を退いたとしても、会長になるなど、なんらかの形でアースホールディングスに関わり続けることになると思います。経営から引退しても、人を育てる仕事は残るからです。

目標だった100人の経営者(フランチャイズオーナー)はつくりましたが、私の目から見てそのうち及第点をつけられるのは全体の3割ほど。あとの7割をちゃんとした経営者に育てるには、まだ10年は必要でしょう。

私は今、日本全国の全240店舗を毎年回って経営指導をしています。そこではノウハウだけでなく、経営者としての哲学を伝えていくことが必要と考え、一緒に温泉宿に泊まったりして、いろいろな話をしています。

私はこれまで「100年続く企業をつくる」と言ってきました。そのためにまず100人のフランチャイズオーナーをつくり、その中から本部の社長を務められる人を育てる。そしてその人がまた次の社長と交代できるような体制をつくっていく。そうしないと100年続く企業にはなりません。

私の次の次の次、3代先まで見えてきたら、完全に会社を離れてもいいかなと思っています。「もう自分は退いたほうがいい」という日がきたら、おそらく誰よりも先に自分でそうわかるのではないでしょうか。

國分利治
アースホールディングス社長/59歳、妻52歳、長男29歳、長女25歳、次女17歳
1958年:福島県福島市生まれ
1976年:工業高校を卒業し、電気関係の会社のサラリーマンになる
1978年:経営者になるため上京、新宿の美容室に就職
1982年:17店を管理するマネジャーに
1989年:独立してビッグモアを創業
1999年:フランチャイズシステムに切り替え
2007年:フランチャイズ本部のアースホールディングスを設立
2018年:「オーナー100人」を達成

(アースホールディングス社長 國分 利治 構成=久保田正志 撮影=永井 浩)

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