年収1000万でも"教育費貧乏な家"の末路
プレジデントオンライン / 2018年12月13日 9時15分
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■2000万円の貯金はあっという間になくなった
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■「舞のためにマンションを売ることにした」
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■子供も「仲間」の一部に過ぎない
少子高齢化の影響を和らげようと、「子育てに優しい社会づくり」に邁進する日本。待機児童ゼロや幼児教育の無償化、不妊治療への支援などの施策を政府が打ち出す一方で、企業も「子育て中の社員が働きやすい環境整備」に余念がありません。
ただ、そんな“子育て至上主義”が国全体を包み込む中、疎外感を強く覚えている人も存在します。様々な事情から子供をつくらなかった(つくることができなかった)人たちです。
「自分の人生はやはり不幸かもしれない」
子供がいない人の中に、そんな悩みを抱え続ける背景には、「子育ては素晴らしい」「子供がいないのはかわいそう」という世間の同調圧力(常識)があります。
ですが、本当に子供がいる人は幸せで、そうでない人は絶対に不幸なのか――。そんなことを改めて考えさせられるのが、本章の「教育費貧乏な家庭の末路」です。
■一般的な進路でも教育費貧乏の可能性
主人公である上野勉の家庭の例はやや極端ですが、年収1000万円程度の家庭でも、子供の教育にお金を注ぎ込みすぎると、状況次第では、同様の事態に陥りかねないのが今の時代の現実です。
教育費に関する指標は様々なものがありますが、結論はほぼ同じ。作中に登場するのは、文部科学省が公開しているデータなどから、書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』に登場したファイナンシャルプランナーの小屋洋一さんが試算したものです。これによると、次のような試算となりました。
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(1)幼稚園から高校まですべて私立だと約1600万円
(2)大学は私立の場合、年間200万円ほど(自宅以外から通学した場合)
(3)幼稚園から大学まですべて私立に通った場合、1600万円+(200万×4年分)で合計2400万円の教育費が発生
もう少し一般的なルートで中学まで公立で高校から私立でも総額約1490万円になるそうです。
高校も大学も公立で自宅から通学する場合は、負担はかなり軽減されますが、それでも約1000万円は覚悟しなければなりません。バイリンガルだの何だの言い出さず、ごく一般的な進路を選んだとしても、子供の数など状況次第では、教育費破産(困窮)しかねないというわけです。
■「子供がいない人生=不幸」ではない
「たとえ自分の生活が窮しようとも、子供は素晴らしく、子育てにはお金に換算できない価値がある。子供さえいれば貧乏でも幸せになれる。子供がいないのは不幸だ」。そんな意見もあるとは思われます。が、これについても気になるデータや統計があります。
例えば、プリンストン大学とストーニーブルック大学の研究チームの調査では、「子供の有無で夫婦の幸福度に差はない」という結果が判明しています(調査期間は2008~2012年、約180万人を対象とした米ギャラップ社の調査を活用)。
また英オープン大学が約5000人を対象に実施した調査では、夫婦関係の満足度は、子供がいない夫婦の方が子供がいる夫婦よりも高い結果となっています。
■子供をつくったことを後悔する人の言い分
さらに米国のビッグデータ解析では、子供がいる成人は、いない成人よりも、3.66倍も多く子供を持った決断を後悔しているとの分析結果もあります(『誰もが嘘をついている』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ著、光文社)。
子供をつくったことを後悔していると感じている人が、そう思う理由は必ずしも教育費だけではなく、子育てにまつわる様々なトラブルや困難が含まれているはずです。こうしたデータからは「子供のいる人は幸せで、そうでない人は不幸」と単純に言い切れない現実がうかがえます。
子供の教育費をきっかけに不仲が続いていた上野夫妻も同様です。
2人はマンガの終盤で、奇跡的に信頼関係を回復しますが、これはあくまでフィクション。現実問題として、ここまで関係が崩壊してしまうと夫婦の信頼修復は難しいはずです(せっかく前向きな終わり方にしてくれた脚本家さん、漫画家さん、すみません!)。
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誤解なきように言っておきますと、『マンガ 宝くじで1億円当たった人の末路』の目的は、子供がたくさんいて幸せに暮らしている人の生き方にケチをつけたり、子供に教育費を注ぎ込んでいる人に考え方を見直してもらったりすることではありません。
そうではなく、「子供がいない人生=不幸で悲惨」という社会の空気を感じ取り、「自分の人生はやはり不幸かもしれない」と悩み続けている……そんな人に、「人生は人それぞれ。『子供がいない幸せ』を楽しめばよし」と伝えるのが真意です。子供がいなければいないで、人生の自由度が大きく広がるのも事実です。
友達や子供というものは、人生に必要な「仲間」の一部でしかありません。そんな考えもあっていいのではないでしょうか。
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日経ビジネス副編集長
1967年生まれ。1991年慶応義塾大学経済学部卒業、同年日経BP社に入社。「日経ビジネス」、日本経済新聞産業部、「日経エンタテインメント!」「日経トップリーダー」を経て、2011年1月より現職。中小企業経営、製造業全般、事業承継、相続税制度、資産運用などを中心に取材。著書『宝くじで1億円当たった人の末路』(日経BP社)は15万部を突破。2018年11月に出したコミック版『マンガ 宝くじで1億円当たった人の末路』は発売2週間で3万部を突破。末路シリーズは累計18万部のベストセラーとなっている。
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(日経ビジネス副編集長 鈴木 信行 シナリオ=星井博文 作画=nev)
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