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不動産投資で"表面利回り"を重視するバカ

プレジデントオンライン / 2019年1月20日 11時15分

定年退職を迎えると、退職金という形で2000万円、3000万円というまとまったお金を手にする。しかし、マイナス金利のあおりを受けて、預金していても利息は微々たるもの。そこで、つい手を出してしまうのが投資なのだが、そこには思わぬ落とし穴がいくつも待ち受けているのだ。今回は「不動産投資」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2016年11月14日号)の掲載記事を再編集したものです。

■セミナー話を鵜呑みにすると、後で痛い目を見る

不動産投資を考えている人向けの書籍が数多く出版され、著者によるセミナーも頻繁に開催されているようです。でも、その話を鵜呑みにすると、後で痛い目を見ることもあります。

特に増えてきたのは、著者が自らの成功体験をもとにした「自称有名投資家」の人たちです。しかし、不動産投資のプロを自負する私から見ると、その投資法で成功している人は1割に満たないでしょう。なかにはセミナーの受講者に「特定の物件」を紹介し、不動産業者や建設業者からの紹介料を懐に入れているケースもあるようです。

そうした自称有名投資家の説明や、不動産投資の広告で最も気をつけなければならないのは、「表面利回り」の高さを強調する話。この表面利回りは、1年分の満室賃料を単に物件価格で割ったもので、家賃が高ければ、当然、表面利回りも高くなります。特に新築の場合は、誰も入居していない状態ですから、家賃を高く設定できます。しかも「新築プレミアム」で満室になる可能性も高くなるでしょう。

■プロが一番重要視する数字は「営業純利益」

しかし、1度でも入居したら中古物件となってしまい、新築プレミアムはすぐに剥がれ落ちます。また、年を経るにつれて設備が古くなるなど見劣りがするようになり、家賃を下げざるをえなくなってきます。つまり、一時の表面利回りに惑わされてはいけないのです。

では、プロが一番重要視する数字はなんでしょうか。それは「営業純利益」であり、物件価格に対するその割合が「真実の利回り」になります。図にあるように、まず満室賃料から空室による損失を除いて実効総収入を計算し、そこからさらに運営費を差し引いたものが営業純利益です。この場合、表面利回り10%に対して、真実の利回りは8.55%になります。

■運営費がかさむ地方の物件

運営費には、管理費や修繕費、清掃費用、固定資産税などに加え、エレベーターの保守管理費、電気代などのランニングコストが含まれます。区分所有のマンションなどでは管理費や修繕積立金、それに共用部分にかかる費用も入ってきます。そして営業純利益からローンの年間負債支払額を差し引けば、税引前キャッシュフローが算出できます。

写真=iStock.com/SvetaZi

ところで地方の投資物件の場合、物件価格が安く、表面利回りが高く見えるものがありますが、特に中古の1棟物件には注意が必要です。修繕費やランニングコストがすごくかかるケースがあるからです。

購入後すぐに給水ポンプやエレベーターなど高額な設備が壊れたら、それこそ悲惨です。都心部に比べ家賃が安い割に、それらの修繕費はほとんど変わりません。その結果、営業純利益が圧縮されて、真実の利回りも低い水準に押しとどめられます。

不動産投資は、転売をするときの“出口”で初めて利益が確定されます。自分が投資して取得した後、その物件が経年劣化でどのようになるのか。また、ライバルとなる周囲の物件がどれだけ増え、転売価格がどのくらい見積もれるのかなど、長い目で見る必要があります。

不動産投資の正しいやり方は、出口を迎えた段階で資産を組み替え、利益を確定する手法です。私は5年以内で勝負するのが基本だと考えています。実際にリタイア後に不動産投資で成功している人の多くは、物件の売買を繰り返しながら、資産の組み替えを絶えず行っているものなのです。

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大村昌慶
ダイムラー・コーポレーション代表取締役
CPM(米国不動産経営管理士)、CCIM(米国認定不動産投資顧問)などの資格を保有。投資不動産を中心に事業を展開し、国内外での不動産・資産管理・資産運用の提案・相談に応じる。

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(ダイムラー・コーポレーション代表取締役 大村 昌慶 写真=iStock.com)

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