NTTを辞めて「連続起業家」になった理由

レノバ代表取締役会長 千本倖生氏

■「いまの日本のスピードはあまりに遅い」

第二電電（現KDDI）、イー・アクセス（現ワイモバイル）などの連続起業家として知られる千本倖生氏。現在は再生可能エネルギー発電事業・国内大手のレノバで経営の指揮を執る。

日本電信電話公社（現NTT）からキャリアをスタートさせ、フルブライト奨学生として留学したフロリダ大学では電子工学の博士号を取得。慶應義塾大学大学院教授や海外企業の社外取締役も務めるなど、その豊富なキャリアは野心あるビジネスパーソンのロールモデルともなってきた。そんな千本氏が、70代半ばで『あなたは人生をどう歩むか』を上梓した。その理由とは何か。

「今の日本はいろいろな面で世界の中で周回遅れになっています。世界では様々な分野で急激にメガトレンドが起こっているのに、日本のスピードはあまりに遅い。そんな日本を世界トップクラスの国に再生するには若者の行動力が必要なのです」

そのヒントになる国が米シリコンバレーと並び、ITメガトレンドの中心にいるイスラエルだと千本氏は言う。

「人口900万人弱の小さな国ですが、なぜ勢いがあるのか。それは中東各国と対峙しなければ生き残れないという徹底した危機感。徴兵制をもとにした強烈な同胞意識。そして子どもたちに“リスクを取れ”と教育する母親の影響力があるからなのです」

その意味で、今の若者に必要なものこそ、ビジョン、ミッション、リスクテイクだと語る。

「そもそも私が第二電電をつくったのも世界と日本の差を感じたからです。このままでは日本は大変なことになる。それが私のミッションとなり、その思いに共鳴してくれたのが京セラの稲盛和夫さんだったのです。稲盛さんに直に接し、経営の神髄を学ぶことができました」

■隠れた成功の条件は「若者とグレイヘア」の組み合わせ

千本氏にとって稲盛氏は恩人のような存在だが、今の若いベンチャーも先達の存在をもっと活用すべきだという。

「若い人たちをサポートする経験豊かな年配の経営者を、英語で“グレイヘア”（白髪まじりの髪）と言います。シリコンバレーで成功したベンチャー企業には必ずグレイヘアがいる。躍動する若いリーダーと適切なアドバイスをするグレイヘアの組み合わせこそ、隠れた成功の条件なのです」

千本氏も自身で大きなリスクを取ったからこそ、人生のパラダイムを変えることができたと振り返る。

「若者にはもっと世界を見て、いろんな人に会ってほしい。それが自分の人生観を変えるきっかけになるのです」

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千本倖生
第二電電、イー・アクセス、イー・モバイルを創業、通信業界の革命児と呼ばれた。2014年にレノバ社外取締役就任、15年から同社代表取締役会長。

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（経済ジャーナリスト 國貞 文隆 撮影＝的野弘路）