"退職金でデビュー"する人の残念な老後
プレジデントオンライン / 2019年1月15日 9時15分
■現役時代に磨いておくべき「現場力」
資格はその人の持つスキルをわかりやすく証明してくれる。退職後に新しい道を拓いてくれそうだが、対象を広げすぎて「資格貧乏」に陥る場合もある。
「継続のため、年会費や諸経費を求められる資格もあります。ただ名乗りたいだけの複数の資格にお金をかけていては出費がバカになりません。老後のために資格を取ったはずなのに、そのせいで貯金が減るという本末転倒が起きるんです」(ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏)
趣味で資格をたくさん取得するのは、ボケの防止になるし、生活の張りにもなる。しかし合格しやすい資格ばかり集めたところで、仕事につながることは少ない。「老後の収入源にしたいなら、いまの仕事の延長にある資格を一点集中して取得するべき。たとえば私のようなFPの場合、社労士、行政書士、宅建など。いまも将来も使えて、仕事が広がりますから」(同)
老後に役立つスキルは、突貫工事ではなく、長い年月をかけて磨いたもののようだ。
金融の知識も、少しずつ学んでおくべきスキルである。
「個人で勉強しても、ある程度の知識は学べます。しかし自腹で投資してリスクにさらされないことには、肝心なときにどうすればいいかという機微は身につきません。だから早い時期に1度試して、自分の向き不向きを把握するのも大事。たとえ高収入で資金があっても、損失を被ったときに即取り戻そうと、不利な状況下で強引に投資を進めるタイプは不向き」(ファイナンシャルプランナーの長崎寛人氏)
「自分の好きなことをセーブしてこつこつ貯蓄に励んできた人が、老後にいきなり投資や運用に挑戦してもまず失敗します。退職金がデビュー戦というのは、かなり危険」(畠中氏)
元大手銀行支店長でコンサルタントの菅井敏之氏は、磨いておくべきスキルとして「現場力」を挙げる。
「現場力とは、消費者と直につながり、そのニーズを理解していること。社内政治にばかり意識が向かう人は現場を忘れているから、会社の看板を失った途端、相手にされなくなる。しかし消費者と関係を築いておけば、独立して業種や扱う商品が変わっても、お客さんはついてきてくれます。40代を超えて社内のポジションが上がってきたら、『もう1回現場を回らせてほしい』と上に頼むべき。そのほうが社内的な価値が上がり、社外での信用や絆も残りますよ」
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新しい環境に馴染むコミュニケーション能力も不可欠だ。
「定年後、地元の集まりで楽しめれば、自宅の光熱費が節約でき、みんなが持ち寄ったものを食べたりして食費も浮く。そこから交流関係が広がれば、アルバイトの声がかかったりして、意外に臨時収入もある。人に求められている実感もあって、楽しく老後を送れます」(畠中氏)
逆に苦労するのは、新しい環境に適応しようとせず、過去を引きずるタイプ。背広を着て元の職場近くの馴染みの居酒屋に通ったりして現役時代と同じ支出を重ね、ジリ貧になっていく。
「そこで地元の居酒屋に切り替えられる人は、老後貧乏になりません。若いうちから地元の会合やツアーに1人で飛び込んで、会社のバックグラウンド抜きでコミュニケーションを取る技術を磨いておきましょう」(同)
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ファイナンシャルプランナー
2000年、駒澤大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。大学時代よりフリーライター、1992年ファイナンシャルプランナー。各メディアに連載多数。セミナー、講演、個人相談など。著書に『サヨナラ お金の不安』『ひきこもりのライフプラン――「親亡き後」をどうするか』(共著)ほか。
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ファイナンシャルプランナー
1963年、長野県生まれ。NPO法人日本FP(ファイナンシャルプランナー)協会会員、CFP認定。国内銀行、外資系損害保険会社を経て保険代理店を経営。その後、介護スタッフとして障がい者施設や高齢者介護施設などに勤務、介護に特化したFPに。著書に『脱・老後破産マニュアル』。
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元メガバンク支店長
コンサルタント。1960年生まれ。83年学習院大学卒業、三井銀行(現・三井住友銀行)入行。東京・横浜で支店長。48歳で退職、起業。アパート経営のほか都内で喫茶店を営む。資産形成や住宅・保険の選び方などで講演・セミナー多数。著著に『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』『お金が貯まるのは、どっち!?』ほか。
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(プレジデント編集部 鈴木 工 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
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