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「GAFA」でさらに化けるのはアマゾン

プレジデントオンライン / 2019年3月2日 11時15分

■マイクロソフトと4社の違いとは

「GAFA」の4文字を目にする機会が増えた。Google・Apple・Facebook・Amazonの4社は、マイクロソフトとあわせて、近年、世界時価総額ランキング上位5位の常連であり、その動向を世界が注目している(グーグルは親会社アルファベットの傘下)。

なぜマイクロソフトを除外した4社がことさら話題に上るのか。たしかに同社は約10年前の世界時価総額ランキングでも5位以内に食い込んでおり、当時上位を占めていたエクソンモービル、GE、ウォルマート・ストアーズ、中国移動などがランキングから姿を消す中、唯一、現在も5位内に留まっている企業である。

しかし、かつてWindowsで人々の生活を大きく変えた同社も、PC市場の衰退とスマホ市場の躍進の波で、いまや世界のOSの約8割はグーグルのAndroidに占められている。そして新興「GAFA」と決定的に異なるのは、「世の中を本気で変えよう」という情熱の温度差といえるかもしれない。前経営者時代にライバル企業との競争に力を傾けがちだったマイクロソフトに対し、「GAFA」4社は自らの理想を明確に持ち、その実現に邁進する姿勢がより鮮明という共通点がある。

いまや私たちの生活はこの4社抜きでは語れない。電話の概念を大きく変えたスマホを生み出したアップル、自宅にいながら気軽に商品を注文する便利な生活を定着させたアマゾン。グーグルが整理する膨大な情報を得て、フェイスブックを通じて世界中の人々とコミュニケーションする生活は「GAFA」なしでは実現しなかった。

だがこの4社は単なる検索エンジン会社やEコマース企業という範疇には収まりきらない広がりを持つ。彼らの守備範囲と強みと弱み、そして将来性を整理してみよう。

■フェイスブックは将来性に不安あり?

まずは創業20年のグーグルだ。自由な企業風土のもと、世界中から奇想天外な天才たちが集うグーグルは、2015年にアルファベットを親会社とする組織再編を行ったが、依然として同社の中核事業は検索・広告・クラウド・Android・YouTubeなどを運営するグーグルが担い、実に売上高の99%を賄っている。ところが残りのわずか1%未満の売り上げしか生み出さない非中核事業に、積極的に人材・資力を傾けるのが同社の特徴でもある。それは自動運転車開発、生命科学研究、先端技術研究、ベンチャー投資などだ。

写真=iStock.com/metamorworks

その理念は、人々の生活をより良いものにすることと一貫している。たとえば自動運転車の開発で、自動車メーカーの多くはより快適なドライブ体験を追求するが、グーグルは高齢者や障害のある人々でも自由に外出を楽しめることを目標に掲げる。直近の収益に結びつかずとも、人々が抱える課題を解決したいという努力を惜しまない。

一方で、ビジネス上の懸念材料もある。企業全体の収益の約9割を検索広告収入に依存しており、YouTube動画にヘイトスピーチや過激派テロ動画も混在しているという理由で、大手企業が続々と広告撤退処置に踏み切るなどすると、同社全体の収益に大きな影響が出る。また独占禁止法に敏感なEUから莫大な制裁金を科されたこと、巨大市場中国における検閲やハッキング問題をクリアできないジレンマなども今後の課題である。

次いでアップルだが、かつて斬新なPCでユーザーを魅了した同社は、いまやすっかりスマホ企業となり、同社の全売り上げの6割をiPhoneが稼ぎ出している。既存技術を応用し組み合わせることでより便利な商品を生み出す力、最高のデザインとクオリティを追求する妥協のなさが同社の強みだ。携帯型音楽プレーヤーiPodの発売、楽曲を一曲ずつ購入できるiTunes Storeの誕生、そして定額課金制音楽配信サービスApple Musicへの移行と、音楽業界大手と衝突、折衝を繰り返しながらも結果的に大きなビジネスチャンスも得てきた。

ただ、そのアップルも盤石ではない。圧倒的カリスマ性で同社をけん引してきたジョブズ亡き後、どこまでユーザーを魅了する商品を生み出し続けられるかが不安視された。はたして、一時人気だったタブレット端末iPadは不調。なによりスマホ市場の飽和により、同社の主力商品iPhone販売に陰りも出始めている。今後、自動運転車の開発や健康・医療分野での取り組みなどが、発展の鍵を握るだろう。

「GAFA」の中で、一番将来性に危うさがつきまとうのはフェイスブックである。いまや世界で20億人を超すユーザー数で、傘下のInstagramも好調だが、収益の9割近くを広告収入で稼ぐビジネスモデルの危険性はグーグルと同様だ。さらに利用者の約半数が日々のニュースをフェイスブックで読む中、16年の米国大統領選以降のフェイクニュースの蔓延に同社は頭を悩ませている。情報流出問題や、EUによる一般データ保護規制、さらには世代交代の波も無視できない。フェイスブック利用者の30~40代層が年をとり、次世代がフェイスブックとは異なる他者との関係性を求めていったとき、変わらずSNS王者の地位を維持できるか確証はない。同社が注力しているAR(拡張現実)とVR(仮想現実)技術の将来性も気になるところだ。

■何にでも化けうるアマゾンの可能性

さて、最後はアマゾンだ。結論からいえば、今後「GAFA」で覇権を握るのは同社ではないかと私は考える。その理由は一番何にでも「化けうる」業態だからだ。

1994年に書籍のネット販売から始まった同社は、いまや売上高で世界最大手のウォルマートを猛追する企業に成長した。成長の秘訣は、「稼いだ利益を惜しげもなく使い、投資を続ける」こと。電子書籍Kindleや、AIスピーカーAmazon Echo、ドラマや映画など大量の映像コンテンツを楽しめるAmazon Prime Videoなど、奇抜な商品やサービスを次々と繰り出す一方で、膨大な商品を世界中に届けるため、陸海空すべてを網羅する一大物流システムも整えつつある。巨大になりすぎたイメージがあるが、アメリカの小売り全体におけるEコマース市場のシェアは約10%。まだまだ成長する余地が残されている。小売業・物流業・メディア業、IoT分野など、どんな分野に進出してもおかしくなく、可能性が無限に広がるのがアマゾンという企業の最大の強みといえるだろう。

18年9月末、ルノー、日産自動車、三菱自動車の3社連合がグーグルAndroidを車載システムに搭載することを発表した。自社開発OSに執着してきた自動車メーカーがついに世界シェア8割を超えるOSの採用に踏み切ったのだ。既存ビジネスと熾烈な争いを経たのち、「競合から協力へ」市場が態度を変えていく様は4社ともに経験している。強すぎる商品に対して「勝てない」と悟った段階で対抗から手を組む相手へと変化するものである。

だからこそ、仮に将来「GAFA」が失墜することがあるならば、それは新たな市場が登場し、彼らのビジネスが用なしになったときだけだ。アップルにとっての脅威はiPhoneを超える高機能スマホの登場ではなく、全く次元の異なるデバイスの登場でスマホ自体が不要になることなのだ。

ただ、いかんせんこの4社は巨人に成長している。新ビジネスを立ち上げ彼らに立ち向かうベンチャー企業が現れても、ことごとく買収、吸収するだけの力を蓄えている。その隙をつくには、彼らが「こんなものは売れない」と無防備になっている盲点をつくしかないだろう。いま、世界のどこかに存在する課題を解決する糸口を見つけること。まだ意識化もされず概念も名称さえもないが、大きなビジネスに発展していく何かを見つけ、新たな市場を創出すること。そこにのみ「GAFA」を超える道が隠されている。

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小久保重信(こくぼ・しげのぶ)
ニューズフロント フェロー
1961年生まれ。翻訳者、同時通訳者を経て、日経BP社ウェブサイトで海外のIT関連記事を執筆。2000年にニューズフロントを設立し、代表取締役に就任。著書に『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社)。

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(ニューズフロント フェロー 小久保 重信 構成=三浦愛美 写真=iStock.com)

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