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開成 麻布 筑駒 灘のOBの"政官界支配"

プレジデントオンライン / 2019年1月21日 9時15分

開成中学校・高等学校(東京・荒川区)

多感な高校時代をともに過ごした同窓ネットワークは、社会人になってから強い威力を発揮することがある。その結束力は社会の動きの背景に、高校人脈の存在をうかがわせるものでもある。

■政界と官界を結ぶ開成の「永霞会」

大学以上の強い仲間の結びつきで伏流水のようにつながっているのが出身高校の同窓人脈だ。なかでも東京大学合格者数で37年連続トップの開成高校はOB同士の結束が固いことで知られる。職域別、地域別に多種多様な「開成会」が置かれており、その社会的影響力は非常に大きいとされる。

2017年9月に発足した開成出身の国会議員と中央官庁の官僚が集う「永霞(えいか)会」は話題を呼んだ。会員は国会議員が9人、霞が関の官僚は約550人。初代会長には岸田文雄自民党政調会長が就いた。

「総裁選出馬が取り沙汰されてた頃で、“ポスト安倍”を目指す岸田氏を囲む強力な『応援団』との見方が強かった」(全国紙政治部デスク)

周囲から政治的な思惑絡みで見られることに、事務局を務める元建設官僚の井上信治自民党副幹事長は「開成が大好きなんです」と前置きし、こう話す。

「国会議員の開成OBの集まりは前からあり、各省庁にも開成会があるので、開成全体で集まる機会を持ちたいと思っていた。開成会では開成時代の話が多く、運動会の話などで盛り上がります。政治家と官僚だから仕事の話も時にはしますが、周りから『岸田さんを総理にするため』と言われて困惑しています。公務員を集めても総裁選の投票権はありません」

開成は一言で言えばバンカラだ。開成卒業生で教育評論家・大学講師の伊藤悟氏は「毎年の運動会のために、半年がかりの練習を続けます。クラスを縦割りにして中1からの6学年が高3の指導を受けるため、上下の結束は異様なまでに強まる。運動会終了後に、中1と高3が号泣しながら健闘をたたえ合い、その関係は卒業後も続く」と指摘する。この上下関係の強固なところが社会に出てからの強い紐帯を生み出しているのだろう。金融界にはマネックスグループCEOの松本大氏が立ち上げた「金融開成会」、ベンチャー企業経営者が集まる「ベンチャー開成会」「ニューヨーク開成会」「外科学会開成会」など各科の医師からなる開成会まである。

■ガリ勉よりも天才肌の筑駒

開成と並ぶ都内の名門校といえば麻布高校だが、柿沢未途代議士は開成との違いを「麻布は開成のように各所で同窓会をつくり集まることはしません。自由な校風で、自分の頭で考えて行動をする。自分を殺してまでメインストリームに乗りたいとは考えません。物事に対して斜に構え、権威にたてつき、反抗するタイプが多いのではないでしょうか」と強調する。麻布からは橋本龍太郎、福田康夫の2人の総理大臣を輩出していることでもわかるとおり、出身者に政治家が多いが、大きな存在なのが麻布を卒業した国会議員を支える「麻立(まりゅう)会」だ。

「設立当初は橋本氏を後援することが目的だったこともあり、『麻龍会』とも呼ばれていた。麻布のイメージは政治家の二世が多く、育ちのよさと自由な校風があいまって、やんちゃで無邪気だが、自分の理想にこだわる」と話すのは『政治家・官僚の名門高校人脈』の著書があるジャーナリストの横田由美子氏だ。加計学園問題で安倍政権に造反した文科省の前川喜平前事務次官、現政権に批判的な元経産官僚の古賀茂明氏などは、そのいい例だろう。

東大合格者数では開成に譲るが、筑波大附属駒場高校は「東大合格率では60%を超えるトップクラス。筑波大というよりも東大の附属校といってもいい。面白い学校で、ガリ勉ではなく天才肌が多い」と解説するのは『名門高校人脈』の著者でジャーナリストの鈴木隆祐氏。目立つ存在は少ないが、官界から政界に転ずるOBはおり、隠然と力を発揮している。齋藤健農水相、細田博之自民党元幹事長ら自民党の政治家ばかりではなく、共産党の小池晃書記局長、笠井亮代議士、官界には黒田東彦日銀総裁がいる。

後藤田正純代議士が筑駒気質について説明する。

「僕の同期で財務省だけでも3人、霞が関の官僚では10人ほどいる。ガツガツした目立ちたがり屋ではなく、社会貢献なども自然にやれる人たちが多い。共産党の小池さんとは消費者金融の金利の正常化を目指し、貸金業法改正では意気投合しました。筑駒の校風は自由闊達で自己責任。あるポジションに就きたいから根回しをするというよりも、期せずして裏方から世の中を動かす立場になる人が多い」

東の開成、麻布に対抗するのは西の雄、灘高校だ。灘の卒業生には、ノーベル賞受賞者の野依良治氏や作家の高橋源一郎氏、元経産官僚で投資家の村上世彰氏、西村康稔官房副長官らがいる。

■伝統と地域密着性で「人脈力」を深める

灘には校則や制服がないことでわかるように校風は自由。創立時に顧問として設立者一族の嘉納治五郎が参画したことで、柔道の精神として唱えた『精力善用』『自他共栄』が校是だ。ただ、灘校生風の解釈は少し異なり、「『精力善用』は要領よく勉強して東大に受かる。『自他共栄』は、みんなで協力してウィンウィンの関係になろうという精神。徹底した合理的精神が灘校精神の中枢にある」と本郷赤門前クリニックの吉田たかよし院長は話す。

横のつながりが強いのは「自他共栄」ばかりではなく、「中学1年から高校卒業まで、複数の教師が繰り上がってずっと指導してくれます。“担任団”という特定の恩師とともに6年も過ごすこともあって、一体感はより強くなる」(吉田院長)。

有力進学校は東大をはじめ有名大学へ進み、社会に影響を与える官界、政界、大企業へ身を置き、横のつながりを強固にしていく。その点、地方の有力公立高校はどうか。

「東大内の有力高校閥は、国公立医学部や浪人回避志向が強いため、一部例外を除けば、かつてほど見受けられません。ただ、地方の名門県立高校は伝統と地域との密着性を盾に、少数派ながら東大内でも『人脈力』を深め、地元政治経済に依然として影響を与えています」(鈴木氏)

(ジャーナリスト 吉田 茂人 撮影=中島みなみ)

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