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松岡修造「根性論では何も達成できない」

プレジデントオンライン / 2018年12月20日 9時15分

『プレジデントFamily2019年冬号』より(撮影=堀 隆弘 /ヘアメイク(石井さん)=櫻井由美子)

幼児の能力を最大限に引き出すには、なにが重要なのか。3児の父である松岡修造さんは「根性論では何も達成できない。小さな子であっても、きちんと道筋をつけることが『できる』につながる」という。小学校受験のカリスマ・石井美恵子さんとの対談をお届けしよう――。

■「自分の子供のことになると冷静ではいられないんです」

【松岡】今回、石井さんのご著書(『募集しない名門塾の一流の教育法』)を読ませていただき、子供が成長するうえで、親の関わり方がいかに大切かがよくわかりました。

【石井】ありがとうございます。

【松岡】この本を読んで思い知らされたのが「僕は超ダメおやじだ」ということです。「話し合いができていないな」とか、「妻に任せきりのことが多いなぁ」とか。もう読んでいて恥ずかしくなりました。父親としての向き合い方がもっとちゃんとできていたら、子供たちにとって良かったんだろうなって。

【石井】ご立派に成長されているじゃないですか。娘さんも難関の宝塚音楽学校に合格されたし。

【松岡】いや、それは僕の育て方が正しかったというわけではないと思います。お伺いしたいのは、子供と向き合ううえで大切なことは何でしょうか?

【石井】いちばんは「待つ」ということですね。やるべきことができないとき、子供たちができるまで、終わるまで焦らず待ちます。「何分でやりなさい」と時間を制限したりせず、自発的にやり抜こうという気持ちになるまで、気長に待つんです。

【松岡】なるほど、「待つ」ですね。冷静になって。僕も、テニス指導者としては冷静に取り組めるタイプだと思っています。テレビではいつも感情的に叱っているように見えるかもしれませんが、心の中では「ド」がつくくらい冷静なんですよ。ところが、これが自分の子供となると、冷静ではいられないんです。感情が先に出てしまう。テニスの指導で禁句にしている「早くしろ」「なぜできないのか」といった言葉をつい口走ってしまいます。

【石井】わかります。自分の子供には、つい怒鳴ってしまいますよね。

【松岡】石井先生もそうなのですか。少し安心しました。子供に接するうえで、ほかに大切なことは?

■「できないことも100万回やればできるようになる」

【石井】当たり前のことを当たり前にできるようにすること、ですね。挨拶をする、ちゃんと人の顔を見て話をするといった、ごく当たり前ができていないことが多いので。

【松岡】僕は高校生になってもお箸を正しく持つことができていなかったんです。慶應高校からテニスの名門、柳川高校に転校したのですが、生活指導に厳しく、「そんな持ち方があるか!」と徹底的に直されました。あのとき直してもらえていなかったら、「くいしん坊!万才」への出演オファーもなかったでしょうね(笑)。

【石井】基本的なことは、繰り返し練習して身につけさせることが大切ですね。私がよく言うのは「できないことも100万回やればできるようになる」。

【松岡】100万回!

■「選手は僕のことを『ウソつき野郎』と思っている(笑)」

【石井】繰り返し何度も練習を重ねることで、「こうすればいいんだ」という感覚をつかめるようになり、それが自信につながります。だから、現実にはあり得ないですけど、あえて100万回と言っています。

【松岡】僕の場合、繰り返し練習させたいときには、逆に「ラスト!」と言うんです。これが最後だと思えば、みんな一所懸命になる。すばらしいボールを打ってくるわけです。そのいちばんいい感覚を覚えてもらう。

【石井】「ラスト!」からが長い?

【松岡】「ラスト」の後は長ければ長いほどいいんです。選手たちは僕のことを「ウソつき野郎」と思っているでしょうけど(笑)。

(左)つくし会幼児進学教室代表の石井美恵子さんは「できないことも100万回やればできるようになる」と語る。『プレジデントFamily2019年冬号』より。(撮影=堀 隆弘)、(右)石井さんの著書『募集しない名門塾の一流の教育法』(プレジデント社)

■万全な状態へと逆算して備える修造流「目標シート」の威力

【松岡】石井さんの本でとても共感したのが、体を動かすことの大切さを説いているところです。解剖学者の養老孟司先生に伺ったのですが、「心身」という言葉は心に身体と書きますが、もともとは「身心」、つまり体→心という順番だったそうです。つまり体を鍛えることで心が育まれるという考え方。体を丈夫に保ち、鍛えることで脳も活性化するわけです。

【石井】私は運動能力の「能」は脳みその「脳」だと思っています。脳からの指令で体はすべてつながっていますから、運動するのは脳の力だし、逆に運動することで脳もいっしょに育っていくんですね。

【松岡】運動といえば、僕の3人の子供のうち上の2人は何でも器用にこなせるんですが、末っ子の次女は運動がとても苦手なんです。本人もそんな自分を変えたいと言うので、ラジオ体操の特訓をすることになりました。毎朝、人通りの多いところまでいっしょに歩いていって、「ラジオ体操第1!」と声をかけて始めるんですが、途中で僕はそっと離れて、彼女一人ポツンと立ったまま体操を続けるんです。

【石井】辛抱強く続けたんですか?

【松岡】最初は嫌だったみたいですけど。でも、続けるうちにどんどん上達していきました。できなくても繰り返し努力する姿勢は大切だなと。運動能力がないからダメ、なんて言ってはいけないんだと思いました。

【石井】そうですね。できないこともやり続ければできるようになる。私の教室では「やれば、できる!」が合言葉です。最後に私が「やれば」と言うと、子供たちが「できる!」って応えてくれるんです。

【松岡】「できる」という言葉は「松岡修造」の代名詞です。僕はサインをするときも「できる」ばかり書いています。

【石井】修造さんらしいですね。入試もそうですが、大事な試合の日に向けてどう準備するか、修造さん流のアドバイスはありますか?

【松岡】その日をどう迎えるか、逆算して備える必要がありますよね。そんな場合に僕が用意するのは「目標シート」です。

【石井】どんなものですか?

■「根性論ではなく、きちんと道筋をつけてやるべき」

【松岡】スポーツでも勉強でも同じですが、まず技術的なこと――何をどれだけ勉強すればいいのか、を目標として書き込みます。そして、メンタルにかかわること――片づけをするとか、人の役に立つことをする、も項目として加えます。特に「人に喜んでもらう」ことはとても大切で、試合では誰かが応援してくれている、という思いが大きな力になるんです。以上を1枚のシートにして、一つずつクリアしていってもらう。

「熱血」で知られる松岡修造さんだが、物事を成すには「根性論ではなく逆算して備える必要がある」と強調する。『プレジデントFamily2019年冬号』より(撮影=堀 隆弘)

【石井】すばらしいですね。

【松岡】根性論ではなく、きちんと道筋をつけてやるべきなので。

【石井】子供は経験値が不足していますから、具体的に示す必要がありますね。父親としてそれができれば何よりすばらしいです。

【松岡】ただ、先ほども申し上げたように、自分の子供に対しては、なかなか一筋縄ではいきません。この記事が掲載されたら、家族から「詐欺だ!」と言われそうです(笑)。

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石井美恵子(いしい・みえこ)
つくし会幼児進学教室代表
息子2人を慶應義塾幼稚舎に入学させた経験をもとに、1992年、小学校受験を専門にする幼児塾「つくし会」を設立。以来、四半世紀以上にわたり、独自の指導法で最難関といわれる慶應義塾幼稚舎をはじめ、早稲田実業、青山学院、学習院、聖心などの初等科に毎年多くの合格者を出している。
松岡修造(まつおか・しゅうぞう)
10歳で本格的にテニスを始める。1995年ウィンブルドンで日本人男子として62年ぶりのベスト8に進出。プロツアー卒業後、「修造チャレンジ」を設立。世界で活躍する次世代選手を育成している。テレビ朝日系「報道ステーション」などでスポーツの顔として親しまれている。著書に『弱さをさらけだす勇気』など。

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(つくし会幼児進学教室 代表 石井 美恵子、松岡 修造 構成=千崎研司 撮影=堀 隆弘)

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