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内閣参与が「コンビニ」に激怒した理由

プレジデントオンライン / 2018年12月20日 13時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TkKurikawa)

今年のスモーカーズコーナーも、これが最後になった。毎年、毎年、テーマを少しずつ変えながら、タバコをテーマにエッセイを書き、そのあとで、本稿にうつるというものだ。今年も大きな反響を頂いており、読者諸賢には感謝申し上げる次第だ。

※本稿は、プレジデント誌の連載「リーダーの掟」に一部加筆したものです。また12月19日9時の配信時、記事の後半部分が別の記事と差し替わっていました。訂正します。

以前は、タバコが持つコミュニケーション能力を高めるという機能について話をしていた。タバコ部屋でもいいし、喫煙所でもいい。これだけ喫煙者が虐げられている状況で、喫煙者同士、話が合わないはずがない。自然と他部署や他社との垣根を超えたネットワークができあがる。喫煙時間が無駄だという経営者もいるようだが、黙々とパソコンに向かって仕事に打ち込めということなのだろうか。そんな光景は、私のような古い人間には非人間的なように思えてしまう。

そんな話をしていると、今度は、タバコが体に悪いので禁止しろという話をしてくる人たちがいた。確かに、私はタバコを(精神的にはひじょうに落ち着くが)体にいいものだと思って吸っているわけではない。しかし、タバコと同じぐらい体に悪い影響を与えているものなど、世の中にいくらでもあるだろう。そう考えて調べていくとお酒があった。

「お酒はほどほどにすればいい」というのは迷信で、少量でも体に悪いことが英国のがん研究所で発表された。各種がんとの関係も指摘されている。挙げ句に、DVや交通事故などの社会的損失もタバコの倍。これでどうして、タバコばかりが厳しい規制を受けるのか、と考えていたら、世界保健機関(WHO)をはじめとする世界的潮流は、「お酒も規制」のようだ。

タバコに腹を立てている諸君に、今一度、聞きたい。タバコだけ規制されるのは不公平だと思わないのか。そして、このままタバコとお酒を禁止してしまう社会でいいのか。私はお酒をほとんど飲まないが、それでもお酒は飲んでいいと思う。分煙をより進めるという前提で、日本は、他者に対して、寛容な国であってほしい。そんな願いを込めて、最終回に進みたいと思う。

■極限状態の私への無慈悲なる拒絶

私はとても怒っている。先日、コンビニのローソンがトイレを貸してくれなかったのだ。私は、どうしても移動中にトイレへ行きたくなり、ローソンへ駆け込み、「トイレ、貸してください」と言うと、アジア系の店員が、「ありません」とハキハキと大声で応じた。

嘘をつけ、店舗にトイレがないわけがない。じゃあ、君たちは仕事中にトイレへ行きたくなったらどうするんだ、とハラワタが煮えくり返ってしまった。それぐらいの緊急事態だったのだ。

こちらは極限状態で、すがる気持ちで入店しているのに、どういう了見なのか。それからはコンビニに入るたびにトイレを客に貸すか、貸さないかをチェックするようにしているが、私が入店した範囲では、ローソンではトイレを貸さない率が高いように思う。もしも、物さえ売れればいい、顧客の人生がどうなろうと知ったことではない、という考えなら、企業努力が足りないのではないだろうか。

調べてみると、バックルームにある金庫などお金を管理する場所の近くや、その動線上にトイレがあり、防犯上の理由で貸せないという場合もあるようだが、一回のトイレ掃除には、24分かかるというデータがある。やはり、最近の人手不足も影響しているようだ。

1分1秒でも、従業員の手間暇を削り、なるべく少ない人数で店舗を回したいという経営者の気持ちもわからなくはない。従業員に日本人を多く雇えず、外国人労働者が多いのも、業界として人材確保に苦戦をしている証拠だろう。

11月末、成り行きが注目されていた出入国管理法改正案が衆院本会議で可決された。この改正案は、外国人労働者の新たな在留資格を設けることで、建設、介護、農業などの分野での人手不足解消に対応するものとして期待される一方、「事実上の移民政策ではないか」「外国人労働者の権利が守られていない」などと反対意見も多く賛否両論が拮抗している。衆議院の審議での、こうした反対意見や疑問への対応が、国民が納得できるものだったかというと不満が残る。私が心配しているのは、コンビニのアルバイトをしている程度では、放っておくと貧困層になってしまうということだ。財界の要請が「人手不足の解消」というよりも「安く働いてくれる人材不足の解消」というものであれば、日本の将来に禍根を残すのではないだろうか。外国人労働者の本国よりもマシな状態であったとしても、これから長期間日本に滞在するのであれば、きちんと給料をあげられる職種の人材を日本に招く政策を打ち出してほしい。

とは言うものの、いま日本中が人手不足に悩んでいることは紛れもない事実だ。経営状況は悪くないのに、人手不足で倒産に追い込まれた企業は年々増加している。東京商工リサーチの調査によると、2018年1~9月、人手不足を理由に約300社が倒産、年末までに400社に達する勢いだ。帝国データバンクの2018年度上半期のまとめでも同様の傾向が顕著で、人手不足倒産が多い業種は「サービス業」、細かい分類では「道路貨物運送」「老人福祉事業」「木造建築工事」「労働者派遣」となっている。

こうした業界では人材を高齢者に頼らざるをえない。東京都は20年の東京五輪に向けて建設ラッシュだが、ビルの工事現場に行くと、高齢者が多いのに驚かされる。総務省「労働力調査(17年)」によれば、建設業に従事する人の55歳以上の割合は、33.8%、29歳以下は10.8%だ。特に交通整理の方はヘルメットの下の顔をのぞくと、おじいちゃん、おばあちゃんばかりになっている。

こういう働き手の取り合いのような状況になると、人材派遣業ばかりが儲かることになっていく。介護業界では一人の人材を雇うのにかかるコストは、50万~80万円レベルにまで到達しているという。これでは、国がいくら政策的に介護業界にお金が流れるようにしても、「介護人材派遣業」という、介護業界のようでいて、実はまったく違う人材派遣業界にお金を流しているだけの状態になっている。介護人材派遣業の規制が急務だ。

■美人の受付嬢か、障がい者雇用か

もはや社会に欠かせない外国人労働者/「ローソンのライバル・ファミリマートでは、トイレ掃除用のシートを使い捨てにすることで、24分の掃除時間を10分に短縮できた」という。「ローソンには頑張ってほしい」と飯島氏。(写真=時事通信フォト)

もう一つ、いま日本の雇用が抱える問題としては、今年の夏に発覚した障がい者雇用の水増し問題がある。

障害者雇用促進法では、行政機関、民間企業に対して一定割合以上の障がい者雇用を義務付けている。法定雇用率は行政が2.5%、民間が2.2%だ。今回発覚した問題は、国の行政機関の約8割にあたる27の機関で実際の雇用者数よりも多いように見せかけられており、本当の障がい者雇用率は1.19%だったという“事件”だ。

パラリンピックサポートセンターを運営するなど、障がい者支援に力を入れている日本財団の尾形武寿理事長に話を聞いたところ、どうしても障がいのある方に割り振られるのは、コピー取りやファクスの受領など補助的な業務が多くなりがちで、働く意欲の高い障がい者にとっては不満も多いらしい。最近はペーパーレス化が進んでいるので、そうした仕事も減っている。

もちろん、体に何らかの障がいがあっても、他の従業員とのコミュニケーションや、パソコンを使った業務などをこなして、一般の従業員以上に有能な人もいる。しかし、障害者手帳を持っている人は限られており、日本中の行政機関や企業が障がい者雇用の法定雇用率を守ろうとすると、人材の奪い合いが起きてしまい、ここでも人手不足が発生しているのである。中央官庁では障がい者雇用の水増し問題を解決して、法定雇用率に回復するために、来年度は約4000人の雇用をめざしているが、数値目標としては非常に厳しい。

いまでもいるのかどうかわからないが、厚生労働省、環境省の入っている合同庁舎で障がい者に「エレベーターガール」を、小泉純一郎政権時に、お願いしていたことがある。役所では「昇降手」という職種で呼ばれていて、乗客に目的階を質問してボタンを押すという仕事を担当していた。正直にいえば、エレベーターに乗って自分でボタンを押したほうが早いし、彼女たちのたどたどしい仕事ぶりにエレベーター内に妙な緊張感があったようだ。

ヤマト運輸の小倉昌男さんは障がい者雇用を積極的に進め、いまでもヤマト運輸は、スワンカフェなどで多くの障がい者を雇用している。障がい者を積極的に採用できる企業、活躍できる国、社会というものは、それだけの余裕があるということを、外に向けてPRできるのではないだろうか。

例えば、会社の受付にものすごい美人が座っていると「この会社、暴利を貪り食っている」ように思えてしまうが、一人でも障がい者がいたら「きちんとした利益を出す、きちんとした会社」のように、私には思えてならない。

(内閣参与(特命担当) 飯島 勲 写真=iStock.com/時事通信フォト)

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