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3万人を集客「YouTuberフェス」の中身

プレジデントオンライン / 2018年12月21日 9時15分

人気クリエーターが集まった「U-FES.」の集合写真(写真提供=UUUM)

「YouTuber(ユーチューバー)」の人気が、ネットの外にも拡がっている。11月に東京で開催したイベントには約3万人が集まった。彼らはなぜリアルでも人を惹きつけられるのか。ユーチューバーをサポートするUUUM(ウーム)執行役員の笠原直人氏は「若者にとっては、彼らと会うこと自体がエンタメになっているからだ」と分析する――。

■“リアル”でも動画クリエーターが人気の理由

YouTubeで活動する動画クリエーターの人気が、リアルイベントにも拡がっています。私の所属するUUUM(ウーム)では、動画クリエーターのマネジメントを行っており、2015年から「U-FES.」というイベントを毎年開催しています。初年度の来場者は2000人でしたが、年を追うごとに規模が拡大。今年は11月10日と11日の2日間、東京ドームシティでイベントを行いました。

今年の「U-FES.」では、HIKAKIN、Kazu、Megumi、ジェットダイスケなど総勢20組が出演するプレミアムライブを計4回開催。各回5000円で約3000席を用意していましたが、すべて完売しました。そのほか期間中の関連イベントをあわせると、来場者は2万8000人に達しました。

彼らはあくまで動画クリエーターです。ここまでリアルイベントに人が集まるとは、われわれも当初は考えていませんでした。ただ、イベントを開催してみると、人気の理由がわかるようになりました。

動画クリエーターの魅力とは、“ファンとの距離の近さ”です。テレビタレントやモデルのような「遠い憧れの存在」ではなく、「隣のお兄さん」や「クラスの人気者」のような近い存在です。

フィッシャーズや東海オンエアなどのクリエーターはその典型です。一歩先ではなく、半歩先を歩く人たち。SNSや動画のコメント欄でファンと気軽にやり取りする姿勢などもあって、そういった距離感を生んでいます。

これは既存のメディアであまり見られなかった関係であり、彼らを支持する人たちはその距離感を好んでいると考えます。そして、その距離感がリアルイベントと相性がいいのです。距離が近くエンゲージメントが濃いぶん、「会いたい」という気持ちにつながると言えます。

■「観客の前で遊ぶ」で盛り上がる

彼らのリアルイベントを見ると、既存のリアルイベントとは違うところがあります。これまでのイベントは、音楽や演劇、ショーなど、パフォーマンスコンテンツありきでイベントに人が集まってきました。一方、U-FESの場合、音楽ライブなどを行うのは半分ほどで、それ以外のクリエーターは、観客の前で会話をする、遊ぶなどの様子を披露します。しかし、ファンは彼らの一挙手一投足に盛り上がっています。

最近はゲーム実況の投稿が多いはじめしゃちょーがステージでもゲーム実況をする。普段の投稿でも「トークがうまい」と評価されている水たまりボンドがステージ転換の間にフリートークをする。その他、登壇者全員でゲーム「荒野行動」をしたり、ミニゲームに挑戦したりと、普段クリエーターが動画でやっていることをステージ上で実演しました。

なぜ遊びがコンテンツとして成立するのか。それは、動画クリエーターという「人」そのものが完全なコンテンツになっているからです。観客は「何かを見にくる」のではなく「会いにきている」のです。クリエーターはクリエーターで、会話したり、遊んだりする中に観客とのコミュニケーションを挟むなど、「一緒に遊ぶ」という感覚を持っています。それは舞台に立つ人間と観客の関係性として新しいものだと感じます。

ゲーム実況で盛り上がるクリエーターたち(写真提供=UUUM)

■「成長の過程」を見せることがエンタメに

一方、ファン層の中心は10代から20代前半なので、U-FESが初めてのリアルイベントという方も多いようです。手拍子でアンコールを要望しても、なかなか盛り上がらないなど、ライブに慣れていない雰囲気が伝わってくるのです。

ここから感じるのは、動画クリエーターのイベントはまだ黎明期で、今は会えることに価値を感じていただける段階だということ。ファンもまだイベントの経験値が少ない状態ですが、その両方が成熟し、会うことが通例化する、並行してファンもイベント経験値を上げていくと、会うことを主体としたイベントでは満足しない可能性があります。つまり、会うことの先にある内容面の完成度を上げなければいけません。

実際、U-FES.でも今年は舞台セットを全面的に見直したり、サプライズの仕掛けを入れたりと、内容面の向上にフォーカスしています。会うだけでなく、体験として持ち帰られるものを作るフェーズに来ていると言えます。

また遠い憧れの存在ではなく、半歩先の存在であるからこそ、彼らの成熟する過程を一緒に楽しむことがファンの魅力になるとも言えます。100パーセントの完成度のものをいきなり出すだけでなく、成長の途中も見せていく。その過程自体がエンタメになるのも新しい兆候と考えています。

■今の若者は「コンテンツファースト」だ

これまではネットとリアルの垣根を超えて活躍の幅を広げているという話をしてきましたが、これは決してリアルイベントに限った話ではありません。たとえばHIKAKINやフィッシャーズ、水溜りボンドといった人気クリエーターが地上波テレビに出演するなど、ネットと電波という垣根も超えはじめています。また、逆にテレビタレントがYouTubeに進出しているケースも目立ちます。つまり、エンタメ内でさまざまな垣根を超える現象が起きています。

こうした現象からは「コンテンツファースト」という若者のエンタメ感が見えてくるのではないでしょうか。私たち40代以降の世代は、テレビやYouTube、リアルなど、チャネルの違いを意識しますが、若者はあまり違いを意識しません。テレビもYouTubeも、あるいは他のプラットフォームも、同じ土俵の上にあって、何を見るかは単純にコンテンツで選んでいる。配信するチャネルやプラットフォームは、その後ろについているものという意識なのです。

コンテンツを配信するチャネル、プラットフォームは急激に増え、若者たちは幼い頃からさまざまな領域でコンテンツを楽しんできました。「プラットフォームネイティブ」と言えるかもしれません。その中で自然と、コンテンツファーストの好みが身についたと言えます。

HIKAKIN&SEIKINのライブ(写真提供=UUUM)

その結果、プラットフォームがどれかよりも、コンテンツが何かを若者は求めるので、各領域を飛び越えたコンテンツが出始めていると考えます。

さまざまなプラットフォームは、若者の支持を求めます。そして若者はコンテンツファーストな考えを持っています。そうなると、若者に人気のコンテンツは、出身のチャネルやプラットフォームにかかわらず、別の領域にも呼ばれる。これは自然な現象といえます。当事者である若者にとっては、多数のチャネルをコンテンツとして一括りに考えており、その領域を超えることにはあまり疑問や抵抗を抱かないのでしょう。

■「人」軸と「内容」軸で見る、新しいエンタメの分布図

若者世代の考えるコンテンツとは、大きく分けて2軸あると思います。ひとつは動画クリエーターや出演者といった「人」。もうひとつが、“ドッキリ”や“恋愛ドラマ”といった「内容」です。

「人」については、これまでに話した動画クリエーターの例が挙げられます。誰かのファンになれば、たとえそれがリアルでもテレビでもネットでも、プラットフォームに関わらず見にいきます。

一方の「内容」ですが、たとえばYouTubeでも“ドッキリもの”の企画や内容のコンテンツを回遊しながら視聴するのはよくある行動です。若い世代であれば、似た内容のコンテンツを探して別のプラットフォームに移ることも自然です。

つまり、若い世代にとって、コンテンツは「人」軸と「内容」軸で展開されており、そのグラフ上にあらゆるチャネル、プラットフォームが分布しているのでしょう。あくまで同じグラフの中に、さまざまなプラットフォームのコンテンツが同一面で存在しているイメージです。

もちろん、コンテンツの量が増えたことで、人も内容も多様化しています。2つの軸はともに肥大化し、テール部分がどんどん広がっている状況と言えます。これが、若者世代におけるエンタメ感の現状ではないでしょうか。

■エンタメは領域を超えた可処分時間の奪い合いへ

遊園地の写真展示にも多くの人が集まった(写真提供=UUUM)

今、エンタメ分野で起き始めているのは「可処分時間の奪い合い」です。つまり、2つの軸上にさまざまなコンテンツがある中で、どれだけ個人の時間を占有していくか。「テレビだからこの時間内で」といった括りはもはやなく、すべてのプラットフォームが同じ土俵で可処分時間を取り合う形になるでしょう。

となると、私たちUUUMは、「人」軸でどれだけ時間を占有するかという考えになってきます。YouTube上で活躍する動画クリエーターではなく、プラットフォームを超えた“動画クリエーター”として活動の幅や領域を広げる必要があります。

それは、まさにこれまで話したようなチャネルやプラットフォームの垣根を超えることを意味します。当然ながら、動画クリエーターそのもの人気を上げて、ファンとのエンゲージを深めることは必須ですが、あわせて活躍できるチャネルを増やす。そうして占有時間を増やすためのプロデュースを行う。いわば、占有時間という「量」と、エンゲージメントという「深さ」を両立させる作業が求められます。

若者世代はコンテンツファーストの価値観を持つ中で、どう占有時間を広げられるか。そのためには、さまざまな活躍の場(=チャネル)を用意することがきわめて重要です。エンタメビジネスの今後を考える上では、この点がポイントになると考えています。

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笠原 直人(かさはら・なおと)
UUUM 執行役員/ライブ・エンタテインメントユニット統括
1977年生まれ。2000年に株式会社IMAGICAに入社。映像編集エンジニアを経て番組・CMのプロデューサーを経験し、その後ソニーネットワークコミュニケーションズへ転職。転職後は放送局との共同事業による番組立ち上げや、ソニーグループ企業のデジタルマーケティング戦略構築に従事。2015年、映像業界とインターネット業界で得た経験を活用し、ネット動画市場の拡大・動画クリエーターの活躍の場を広げるためUUUM株式会社入社。

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(UUUM 執行役員/ライブ・エンタテインメントユニット統括 笠原 直人 写真提供=UUUM)

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