トイレで死後3カ月"特殊清掃代34万円"
プレジデントオンライン / 2019年1月5日 11時15分
■死んで放置されると、3日で腐敗が始まる
孤独死が最も多い季節は夏です。死因の大半は熱中症。ゴールデンウィークあたりから増えてきます。体が暑さに慣れていないときにいきなり猛暑日になった夜、睡眠時に大量に汗をかいて脱水症状になり、そのまま起きられなくなる。そうして、ベッドや布団の上で、もがいた跡もなく亡くなられる方が多いです。
死んだまま放置されるとどうなるのか。夏季であれば、3日もすれば腐敗が始まり、糞尿や体液が染み出て異臭が漂います。5日するとウジが湧き、1週間もすれば何万匹というハエがご遺体に群がって、ご遺族に見せられないぐらいの状態になります。2週間経つと故人を特定できないぐらいに腐敗し、警察が本人確認のために、DNA鑑定を行うことになります。
痩せているか太っているかでも違います。痩せている方は比較的臭わず、虫の発生も少なめですが、太っている方は脂が溶けて腐るので、臭いも凄い。特に臭うのは脂と内臓です。
清掃するときには、ベッドで亡くなられた場合、マットレスが血液や体液を吸収してくれるので、比較的周囲への影響は少ない。しかし、畳やクッションフロアで亡くなった場合には、吸水力がなく体液が下に落ちますので、大変です。集合住宅では下の階からの通報で発見されるケースが少なくありません。
こうした状況になると清掃だけでは復旧できず、リフォーム工事が必要になります。柱や梁にも体液が染み付いてしまうので、床や壁を解体しての大工事になり、費用もかさむ。最も費用が高いのがお風呂場やトイレで亡くなられるケース。冬にヒートショック(温度差で心臓発作などを起こすこと)で倒れられる場合が多いのですが、ユニットバスやトイレなどを交換するとなると、単価が高くなります。
では、孤独死される方はどのようなところに住まれている方が多いのか。昔から多いのは、木造の賃貸アパートで比較的貧しい生活をされている方。ただ最近は、ベッドタウンの一軒家も増えています。独り身になり、離れたところにいる子ども家族は滅多に帰ってくることはなく、友人とも疎遠になり、近所にも仲の良い人がいない。さらに新聞も取っていないとなると、気づく人がいないのです。身寄りのない方ではなく、親族がいる普通の人でも、数カ月気づかれない方も少なくありません。
親族が一人暮らしをしている場合、孤独死を防ぐ最善の方法はこまめにコミュニケーションを取ることです。少なくとも2、3日に1回は、メール・電話などで連絡を取り、ときどき家にも行ってあげる。そして、変化に気づいてあげることです。体調の変化はもちろん、部屋が散らかり始めたり、家に来ることを嫌がったりするのも変化のサイン。一人暮らしで体調が悪くなったり、認知症が発症すると部屋が汚れてきます。どんなにきつくても、食べ物を買いに行ったり、トイレには行きますが、朝、ゴミを捨てに行くことができない。孤独死された方の家の6割ほどは、ゴミ屋敷のように散らかっています。こういう方は部屋を見られるのを嫌がる傾向があるのです。「親父が部屋に入れたがらなかったんですよ」というのは私たちが清掃に入る際、親族の方からよく聞く言葉です。
親を孤独死させたくなかったら、子どもであるあなたが、孤独死を回避する術を知り、伝えてください。暑い日があったら電話して、「エアコンつけて寝なよ」とか、「スポーツドリンクを枕元に置いて水分補給してね」と、伝えてあげる。そうすれば、一生の後悔をしないで済むはずです。
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特殊清掃ロード代表
東京・神奈川を中心に孤独死や自殺現場などの清掃を行う。大工経験をもとに原状回復のリフォームも手掛ける。年間200件以上の現場に入る。
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(特殊清掃ロード代表 鎌田 爵宏 構成=嶺 竜一 撮影=的野弘路 写真=iStock.com)
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