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お金・死・性を教える私立が子供を伸ばす

プレジデントオンライン / 2018年12月24日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ferrantraite)

中学受験の本番が迫ってきた。親はどんな学校を選べばいいのか。受験カウンセラーの鳥居りんこ氏は「合格実績だけで学校を選ぶとミスマッチになりやすい。『宣伝フレーズ』を鵜呑みにせず、慎重に学校を選ぶ必要がある。キーワードは『真の教養』だ」と話す。どういうことなのか――。

■数年経つと“死語”のように消える中高一貫校のキャッチフレーズ

暮れも押し迫り、中学受験の本番が間近に迫ってきた。

受験生のいる各家庭では最終的な志望校選定の時期を迎えたことになる。その際、保護者は今一度、“わが家の教育方針”とは何かということを再確認するといい。すなわち、親として「中高時代に、わが子にどんな力をつけてもらいたいか」を明確にするということだ。

筆者の友人に中高一貫校の取材経験が豊富な女性ライターがいる。彼女はこう言った。

「中高を取材していると、先生方のコメントにも流行があることがわかります。ちょっと前までは『リーダーの育成』。同じ方向性で少し盛った表現だと『国際社会で活躍する真のリーダー』。そして、今のはやりは『解のない社会を生き抜く力』。これを全部盛りこんだ表現にすると『ITによる変革が激しい時代にあって、探求により深い思考力、表現力、プレゼン能力を身につけ、道具としての英語力を身につけ、異文化を理解し、コミュニケーション能力を育む』という感じでしょうか」

筆者も中高一貫校への取材経験が長いが、全くその通りと言わざるを得ない。

学校説明会、あるいはパンフレット、ホームページという手段を使って、学校情報を発信する場合には“キャッチコピー”が必要となるのだろう。その文言自体にはさほど違和感を抱かないが、問題はそれが「流行」してしまうことだ。

ある学校がそのキャッチコピーで集客(受験者数増加)に成功したと見るや、同じような文言があふれることになる。「キャリア教育」「アクティブラーニング」「グローバル」「国際教育」「ITC」「サイエンス」「理数教育」……。数年経つと“死語”のように消えて行く運命のものも数多い。

■受験者数を増やすため有名大学合格実績目標を掲げる

昨年と今年では全く違う事を堂々と言う学校の先生もいる。その見事な朝令暮改ぶりには面食らうというよりも、先生方も少子化の中、「生き残りに大変なんだな」という感想を持ってしまうのだった。

少し前の時代は「お約束」を掲げる学校も多く、例えば「G-MARCH100」など、6年後の大学合格実績目標を前面に打ち出す学校も多かった。中高一貫校にとっては、「出口」となる生徒の進学先の大学の知名度にはこだわりたいのだろう。それが、「入口」である受験の人気度や偏差値にも直結する。

もし親がわが子の最終学歴を難関大学にさせたいと願うなら、学校よりも予備校のように受験対策に特化している場所にわが子を置いたほうが結果は出るかもしれないが、それを実行する親は案外少ない。なぜか。親の多くは学校に対して、最終学歴を得るためだけではない“効能”を期待していることの現れではないかと筆者は考えている。

■2019年以降のキャッチコピーは「真の教養」

また、前出の知人ライターは今後、2019年以降の私立中高一貫校が掲げるキャッチコピーの流行予測として、この言葉を挙げている。それは、「真の教養」だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

「完全版の文言としては『永遠の命題である哲学、科学、文学、芸術について、世界の教養人と伍して語れる真の教養』。これがくると思います」

これについても筆者は完全に同意だ。いかにも言いそうなフレーズである。

先行き不透明な時代の今、「大学受験スキル&養成力」だけではなく、わが子に中高一貫校で得てほしい力、つまり「わが子に中高時代で付けてもらいたい力」を下記に挙げたい。

1 共感力

筆者は不登校や成績不振といった問題を抱える子を持つ親の相談も受けているが、そうした生徒は圧倒的に中2が多い。中2は鬼門なのだ。思春期ど真ん中のこの年齢は「自分がいて、他人がいる」ということが理解しきれず、友人や部活の先輩・後輩などとの摩擦を繰り返しがちだ。

自分の主張が簡単には通らなくなることに気付き、他人が自分とは異なる意見を主張することに戸惑い、合わせるべきか否かで悩む。おまけに他人からどう思われるかが気になりだすので、自我と迎合のはざまで悶えることになるのだ。

この時期を通過することによって、自分がいて、他人がいる、ゆえにそれぞれがいろいろな考え方を持つという「みんな違って、みんな良い」的思考法ができるようになり、さらには、人はひとりで生きているわけではないことに気が付くのである。

この実感を級友、先輩後輩、恩師といった人間関係の中で得ていくことは彼らの今後の人生において大きな財産となるだろう。

2 出来事の本質を見抜く力

「出来事」は、流れゆくものと普遍的なものにわかれる。また、「物事」には、まやかしか真実か、あるいはどちらのカテゴリーにも属さないものも含まれる。それらを見抜く力を養うことで、自分の“核”となり得るベースを作ることができる。すなわちそれは「生きる力」を育むことになる。

3 自分の頭で考え、それを自分の言葉で表現する力

他人の言動に振り回され、迎合することをよしとするのではなく、しっかりと自分の頭で考え、それをきちんと言葉で表明できることが「自律の一歩」だろう。この自律=“意志”という“快感”を得ることが、人生を楽しくするコツであるはずだ。

4 楽しむ力

「自分が好きだから、これをやる!」という意識、あるいは「好きなこと」を「好き」と言える勇気・確信を持てれば、人生は輝き出す。学校生活のあらゆる学びと経験はわが子の幅を広げるに役立つので、そこに「好き」が加われば無敵である。さらに、それに対して、「好き」を超えて「心弾む」、ときめく感情を持てたならば、「青春」は長く続いていくことだろう。人生は楽しもうとする人が楽しめるのである。

■お金・性・死の教育をする私立が子供を伸ばす

それでは、上記の4つの力を踏まえ、筆者がこれから中高一貫校で本格的に取り組んでほしいと思う「未来の教科」を紹介したい。それは以下の3つだ。

1 お金の教育

日本人は「金(マネー)」に関することを口にすることをはばかる傾向がある。大学で専門的な勉学に励んだ人もお金に関するノウハウを学んだことがなかった人が大半ではないだろうか。しかし、これは全員が学んでおいたほうが良いことであるはずだ。金利、為替、株、投資、保険、相続、給与システム、各種社会制度、あるいは家計管理、さらにはもっと踏み込んだ「お金儲けの方法」「働くとは何ぞや」「お金の価値」といったことを基本的教養として理解させておくことは、生きていくことにおいて、かなり重要なことになると思う。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/stevanovicigor)
2 性の教育

現在の保健体育の授業の内容では不十分だ。もっと踏み込んで、学習していく必要があると筆者は考えている。男女関係のトラブルやリスクだけでなく、男女の脳(思考法)の違い、ジェンダー教育などを通し、誰もが自身の尊厳を傷つけられないようにするための学びである。

3 人生の四季教育

大半の家庭が核家族で、しかも病院で死ぬケースが多い現在では、人が死にゆく姿を目にすることは稀である。大多数の日本人にとって「死」は遠い存在だ。だからこそ、若いうちに、人は生まれてから、どのように成長し、どうやって老いていくのかを学ぶことで得るものもまた大きいように感じる。

人間を含めた生物の致死率は100%。この当然すぎることを改めて、学習することにより、「今をどう生きるか?」の連続が「人生」なのだという気付きを与えられるのではないか。それにより、自身の人生はもちろん、他人の人生についても尊重できる人になれる。

以上、期待を込めて3つの「新科目」を予想してみたが、いかがだろうか。今後の中高一貫校は、こうした「真の教養」の獲得を目指す方向に舵を切るのではないだろうか。

もちろん、上記は筆者の私見である。中学受験を目の前にする保護者さんは今一度、わが子に付けさせたい力を、偏差値とは別の角度で吟味することをお勧めしたい。くれぐれも各学校が打ち出すキャッチコピーに安易に流されず、学校の本質を見抜いたうえで、わが子の特性・個性に本当に合った、「ミスマッチのない学校選び」をすること。それが親と子の幸せな未来につながるはずだ。

(エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー 鳥居 りんこ 写真=iStock.com)

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