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"センター廃止"がプラスに働く中高30校

プレジデントオンライン / 2019年1月27日 11時15分

大規模な入試改革に伴い、人気が急上昇している中学・高校があるという。そこで、教育業界の第一人者に今後伸びる学校をあげてもらった。

■高1から中1までは、気の毒な世代!?

2020年度から始まる大学入試改革。英語に民間試験を活用するなど、これまでにない大きな改革になるのではないかと話題だ。実際にはどんな影響があるのか。

「最初の構想より、かなり後退した」と語るのは、安田教育研究所の安田理氏。「たとえば、マークシート式を廃止して、大幅に記述式を導入するという構想だったのに、センター試験の代わりに実施される『大学入学共通テスト』では、数学と国語の一部が記述式になっただけです」

ただ英語は、民間試験を活用する点で大きく変わる。しかし「大学入学共通テスト」でも英語はあり、民間試験をどう活用するかなど、いまだ不透明な部分が多い。

写真=iStock.com/ferrantraite

「24年度からは全面的に民間試験を活用する方針ですが、それまでは大学によっては両方のテストが課されます。準備を両方しなくてはならないという点では、今の高1から中1までは気の毒とも言えますね」

では、小6以下が恵まれているかと言えばそうとも言えない。24年度からは、理科や社会でも記述式が出題されたり、「理数探究」など多数の新科目、プログラミングといった情報科目も導入される予定だ。

そんな不透明な状況のなかで、「中学、高校ともに、受験を避けて内部進学できる大学付属校の人気が高まっている」と話すのは、森上教育研究所の森上展安氏。なかでも“半付属”が人気と言う。

「内部進学と外部受験の両方可能な学校で、成績が伸びれば付属大学より高いレベルもめざせます」

さらに、教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、「探究型の学びを展開している学校は、これから伸びる」と断言する。

「今回の大学入試改革は、知識偏重の教育から、自ら考え解決する力、21世紀型能力を育てる方向に舵を切るための改革です。テーマを設定し、調べ、発表したり、論文を書くような探究型の学びは、子供たちのそういった能力を伸ばすと言えます」

たとえば、海城の社会科では生徒が自ら研究課題を設定し、調査や取材を実施。中学3年次には、論文を作成する。かえつ有明の独自教科「サイエンス科」もユニークだ。織田信長とスティーブ・ジョブズの共通点や違いについて考えるなど、答えのない問いに取り組むことで論理的思考力を養う。

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▼探究型の授業とは
探究型の授業は、一方的な講義形式ではなく、生徒が能動的に参加するアクティブ・ラーニング形式で行われる場合が多い。具体的には体験学習や調査学習、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどがあり、生徒の「主体的な学びの姿勢」を引き出すと言われている。

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安田氏は、21世紀型能力を養うためには、リベラルアーツ教育の実践校もおすすめだと言う。

「都立で言えば、日比谷、西、戸山などの伝統校では、受験のために教科を絞らず、幅広く自由に学ばせます。地方のトップ公立高も、同様の傾向がありますね」

さらに、多彩な経験ができる学校も、社会を生き抜く自主性や意欲を養えると言う。たとえば、洗足学園や市川では、コンクールやコンテストなどへのチャレンジを、学校をあげて推進している。

「自分の体験を発表したり、生徒同士が情報交換する学校も多い。身近な友達がチャレンジする姿は、大きな刺激になります」(安田氏)

また、森上氏も多彩な体験は、「AO入試で活かせる」と話す。16年度より私立大学の定員厳格化が実施され、17年度には多いところでは一般入試の合格者数が3割もダウン。その分、AO入試枠を各大学が増やしている。国立大学も、定員の3割をAO入試で取る方針を発表。今後、AO入試枠は拡大傾向にあるのだ。

理系女性、いわゆるリケジョの育成も教育改革の柱の1つ。その動きを受けて、女子校の理系進学者が増えていると森上氏は話す。

「豊島岡女子学園、鴎友学園女子、吉祥女子、洗足学園などは理系進学に力を入れていますね」

豊島岡女子学園では、最先端の科学技術を使った「モノづくりプロジェクト」などが評価され、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている。SSHとは、文部科学省が科学・理数教育が充実した高校を指定する制度。安田氏は「SSH認定校は、難関大学への進学者が多い」と言う。理系進学を考えているならチェックしよう。

また、芝浦工業大学附属、学校法人大阪医科薬科大学と合併した高槻、聖光学院など、独自プログラムを展開している学校も、人気が高まっている。

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▼学校選びの裏ワザ
【中曽根氏】
卒業生にどんな人がいるかは参考になります。これからは出身大学などに意味がなくなります。中高は自分の核をつくる時代。どんな核をつくれる学校なのかが見えてくると思います。
【森上氏】
財務諸表が読めるならば、都道府県庁で各学校の情報請求ができます。実は赤字の学校って多いんです。もし赤字であれば、その原因を学校説明会などで質問してみてもいいでしょう。
【安田氏】
教室の清掃状況で、落ち着いて勉強できる環境かがわかります。また、サイエンスコースがあるのに実験室がお粗末、英語コースがあるのに図書館に洋書がないなどもNGですね。

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■英語力は当たり前、異文化理解も重要

英語力育成に取り組む学校は多いが、それだけでは不十分と中曽根氏は言う。

「これからは、英語力がある上で多様性を受け入れ、異文化を理解する力も育成できる学校がおすすめです」

たとえば、渋谷教育学園幕張、渋谷教育学園渋谷では、留学生・帰国生の受け入れや留学プログラムの充実など、国際交流が活発だ。また、両校は海外大学への進学者が多いことでも知られている。

森上氏は「海外大学への進学を考えているなら、東京学芸大学附属国際などの国際バカロレア(IB)認定校も視野に入れてみては」と言う。IBとは国際的な大学入学資格が得られるプログラムで、教育改革の一環として、日本でも認定校を増やす方針が取られている。

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▼国際バカロレア(IB)
スイスに本部を置く国際バカロレア機構が提供する教育プログラム。対象年齢などに応じた4つのプログラムがあり、ディプロマ・プログラム(DP)の修了試験で所定の成績を収めると国際的な大学入学資格が取得可能。2017年6月時点の、日本におけるIB認定校は46校で、DP認定校は33校。IB認定校のなかで、日本の学校教育法の1条校は20校。最近は国際バカロレアのスコア等を活用した特別入試を実施する日本の大学も増えている。

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「IBは世界の大学からの信頼が高く、ディプロマ(DP)で高いスコアを取れれば、ハーバード大学などの名門校にも入学できます」

国際教育が充実した学校としては、「人気が急上昇中の広尾学園も外せない」と森上氏は言う。

「特にインターナショナルコースは、外国人教員による高いレベルの国際教育が行われています」

さらに、関東学院六浦、横浜女学院などでは英語で内容を学ぶ「クリル教育」、佼成学園ではモンゴルなど多様な海外体験ができる「グローバルリーダープロジェクト」、佼成学園女子では英語を使って教科を学ぶ「イマージョン教育」など、特色ある教育が行われている。

「佼成学園女子はSGH(スーパーグローバルハイスクール。国際的に活躍できる人材育成を重点的に行う高校として文部科学省から指定された学校)指定校です。また、SGHアソシエイト校の大妻中野も帰国生や留学する生徒が多く、国際的な感覚が身につきます」(安田氏)

■人気が落ちる学校の見分け方とは?

では、どんな学校の人気が落ちていくのか? 3人の識者は「時代感覚に疎い学校」と声を揃える。

「少子化が厳しい地方でも、さまざまな政策で生徒数を伸ばしている学校はある。ビジョンのない学校は難しいでしょう」(森上氏)

「閉鎖的で情報発信の弱い学校や、校長や教員が時代の変化や社会に無関心な学校は発展しないでしょうね」(安田氏)

中曽根氏は、学校説明会などで、今後の社会の変化やそれに対する対応などを質問するとよいと言う。

「明確な回答が返ってこない学校は厳しいですね」

これは公立高校も同様だ。さらに安田氏は「すべての子供にとっていい学校はありえない」と強調する。まずはわが子を知り、わが子の個性に合う学校を選ぶことが重要だ。

さらに3人の識者は、偏差値や大学合格の実績ばかりを重視した学校選びも避けるべきと話す。

「東大合格者が出ると翌年の出願者数が増える傾向がありますが、合格実績を参考にするなら、ボリュームゾーンがどのレベルの大学に合格しているかを見るべきです。もちろん、それだけで判断するのはナンセンスですが」(森上氏)

中曽根氏は「学校の本質的な部分を見てほしい」と言う。

「たとえば、桐朋女子は教育改革が話題になるずっと以前から探究型の学びを行ってきました。本当の意味でわが子の力を伸ばしてくれる学校を選びたいものです」

親に求められるのは、社会の変化にアンテナを張り、わが子を伸ばしてくれる学校を見極める目だ。

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安田 理
安田教育研究所代表
出版社での雑誌の編集長を経て、受験情報誌・教育書籍の企画・編集に従事。教育情報プロジェクトを主宰、教育に関する調査・分析を行う。
 

森上展安
森上教育研究所社長
中学受験塾、私立中高一貫校と父母向けのセミナー開催、ニューズレター発行、リサーチ・コンサルティング業務、執筆、講演活動を行う。
 

中曽根陽子
教育ジャーナリスト
教育雑誌、経済誌、新聞連載など幅広く執筆。海外の教育視察や講演も行う。「Mother Quest」を立ち上げ、ワークショップを定期的に開催。
 

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■▼【図表】探究型教育

■▼【図表】探究型教育・理数系教育

■▼【図表】国際教育

(松本 史 撮影=平山 諭、和田佳久 写真=amana images、iStock.com)

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