「毎日安売り」なのに安くない西友の限界
プレジデントオンライン / 2018年12月30日 11時15分
■1990年代後半から財務状況は悪化
今年7月、複数の報道機関が「米ウォルマートが傘下のスーパーマーケット・西友を売却する」と報じた。その後、イオンやドン・キホーテ、三菱商事、楽天、投資ファンドなど、さまざまな企業が売却先として取り沙汰されている。ウォルマート側は「売却の決定を下していない」と否定し、11月にはあらためて「日本で長期的に事業を構築する決意でいる」と説明しているが、いずれにせよ西友の経営改革は待った無しの状況にあるようだ。なぜ西友は、経営不振が続いているのだろうか。
西友は、1990年代後半のバブル崩壊から業績・財務状況の悪化にあえいでいた。そして2002年、ウォルマートと資本業務提携を結ぶ。その後、ウォルマートはさらに踏み込んだ支援を行うため、05年に西友の株式の過半数を取得して子会社化し、08年には完全子会社化に踏み切った。
■ウォルマート流EDLPで業績回復をはかった
ウォルマートは自身が得意とする「EDLP(Every Day Low Price/毎日安売り)」を西友に移植することで事態を打開しようとした。日本のスーパーの多くは、一部商品を大幅に値下げして集客する「ハイ&ロー戦略」を採用している。大胆に値下げされた特売品に単品単位では勝てなくとも、1回の買い物の総額ベースでより安く商品を提供できれば勝てると考えたのだ。だが、西友のEDLPは“それなり”には安いものの、競合を打ち負かすほどの安さを実現できなかった。
一方で、EDLPで成功しているところもある。首都圏で店舗を展開する食品スーパーの「オーケー」だ。18年3月期の売上高は3573億円。前年比7.9%増と大きく伸びており、いまノリに乗っているスーパーのひとつだ。売上高経常利益率は4.1%と、業界平均2.2%を大きく上回っている(新日本スーパーマーケット協会「2018年スーパーマーケット白書」より)。
西友は非上場のため、詳細な業績は不明だが、現在の年間売上高は7000億円程度とみられる。親会社であるウォルマート・ジャパン・ホールディングスの17年12月期の最終損益は0で、現状で利益が出ているとは考えにくい。
■西友の「顧客満足度指数」は第9位
オーケーは顧客満足度が高いスーパーとしても知られる。日本生産性本部サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数 スーパーマーケット部門」(2018年度)で8年連続となる1位を獲得した。なお2位は会員制スーパーのコストコで、3位は関東で展開するヤオコーだった。西友は9位に甘んじている。
オーケーはそのコスト・パフォーマンスの良さも評価されている。同調査では「顧客満足」を含む6つの指標でブランドを評価しており、その中のひとつにコスト・パフォーマンスの良しあしを示す「知覚価値」という指標がある。オーケーはここで1位を獲得しており、西友は6位にとどまっている。
■西友とオーケーで価格を調べてみると……
西友は本当に安くないのか。そこで筆者は、西友とオーケーの実店舗で、販売価格を調べた。調査したのは「西友三軒茶屋店」と「オーケーストア池尻店」(ともに東京都世田谷区)の2店舗。いずれも11月14日に実施した。飲料・食品の計13点について、同一品目・分量の商品の店頭価格(税抜き)を比べた。調査結果は以下の通りだ。
・ヤマザキ「ロイヤルブレッド 1斤」…西友:138円/オーケー:122円
・ハウス「バーモントカレー 中辛 230g」…西友:189円/オーケー:179円
・ヤマサ「有機丸大豆の吟選しょうゆ 1000ml」…西友:189円/オーケー:179円
・マルコメ「料亭の味 20%減塩 だし入り750g」…西友295円/オーケー:249円
・雪印「雪印メグミルク牛乳 1000ml」…西友205円/オーケー:188円
・キッコーマン「調製豆乳 1000ml」…西友169円/オーケー:153円
・サントリー「烏龍茶 2000ml」…西友127円/オーケー:117円
・大塚製薬「ポカリスエット 1500ml」…西友178円/オーケー:164円
・アサヒ「スーパードライ 350ml」…西友183円/オーケー:173円
・カルビー「BIGBAGポテトチップスうすしお 170g」…西友:178円/オーケー:178円
・サンヨー食品「サッポロ一番 みそラーメン 100g×5」…西友:328円/オーケー:288円
・明治「ブルガリアヨーグルトLB81プレーン 400g」…西友:128円/オーケー:131円
調査した限りでは、13品目のうち、西友のほうが安かったのは1品目のみだった。オーケーのほうが安かったのは11品目にのぼる。西友にこの理由をたずねたところ、「総合的に判断し、価格設定をしております。詳細については非開示とさせていただきます」(西友広報部)とのことだった。
ここで対象にした品目以外でも、オーケーのほうが安いものが多かったと感じる。さらにオーケーでは、会員組織「オーケークラブ」に加入していれば、酒類を除く食料品について約3%割引になるサービスが存在している。
■「EDLC」を徹底したオーケーの工夫
なぜ西友は同じEDLPを採用しながら、オーケーほど低価格を実現できていないのか。それはローコスト経営が徹底できていないためだろう。
EDLPには、EDLC(Every Day Low Cost)が欠かせない。オーケーは、EDLCを徹底している。商品の仕入れ面では、トップシェアのブランドにこだわらず、カテゴリー内での品目数を絞り込み、そのかわりに大量に仕入れることで売価を下げている。
店舗運営においては、レジ袋をあえて「1枚6円」と高額に設定し、ここにかかる経費をまかなっている。また、刺し身パックにツマを入れなかったり、弁当などにしょうゆやドレッシングなどを付けずに別売りにしたりして、コストを削減している。ビールやジュースは常温で陳列して、冷蔵設備代や電気代を節約しているのだ。
■世界最大のスーパーでも抜きん出られず
一方の西友はどうか。ウォルマートはもともと、メーカーと直接取引し、大量仕入れによる低価格を実現してきた。しかし、日本ではメーカーとのパイプを十分に築けず、規模の経済を思うように発揮できていない。世界最大のスーパーではあるが、日本での知名度や影響力は限定的で、協力的なメーカーが多くはなかったのだ。
販管費の面でも十分な成果を出せなかった。発注や在庫確認などができる「スマートシステム」や、取引先と販売・在庫情報を共有できる「リテールリンク」を導入するなど、新しいシステムを駆使して業務や物流の効率化を進めてきたが、競合企業も同様の施策を行っており、西友だけが抜きんでることはなかった。
■ネットスーパー事業で楽天と提携
西友は今後、再建の道筋をどうつけるのか。いま同社が注力しているのは、ネットスーパー事業だ。もともと西友が「西友ネットスーパー」を開業したのは2000年と、業界内でも早かった。2013年からはDeNAと提携して「SEIYUドットコム」へリニューアル。16都道府県で、店舗からの配送を行ってきた。2016年7月時点で会員数が139万人を突破していた。
今年に入って、ウォルマートは楽天との提携を発表。西友と楽天の共同でネットスーパー事業を行うことを明かし、10月から「楽天西友ネットスーパー」がスタートした。10月25日に開催された記者発表会では、楽天西友ネットスーパーの竹田珠恵社長が「(西友売却の報道があるが)第三者と交渉している事実はない」と述べている。
■楽天の力を借りて品揃えを拡充
イトーヨーカドーやイオンなど、大手スーパー各社もネットスーパー事業に取り組んでいる。競合との差別化をどう図るのか。
「楽天が有するID数1億超の強固な会員基盤やECの知見、西友が実店舗で培ってきた生鮮食品の販売を中心とするスーパー運営のノウハウ等、両社の強みを最大限に活用しながら協働運営することで、お客様のニーズにお応えできると考えている。具体的には、従来の西友ドットコムのネットスーパー商品に加え、楽天が開発した商品などの品揃えを追加することで品揃えを拡充する。店舗からの配送に加え、新たにネットスーパー専用センターを設け、配送能力も拡大した。お客様の希望の時間にお届けができる体制となっている」(西友広報部)
不振の実店舗に代わり、ネットスーパーが西友を救うことになるのか。今後の行方を注視していきたい。
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店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)
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