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"気軽に抗生物質&ロキソニン"が怖いワケ

プレジデントオンライン / 2018年12月28日 9時15分

写真=iStock.com/metamorworks

これからの時期、猛威を振るう風邪とインフルエンザ。治療のために「抗生物質」や「抗インフルエンザ薬」の処方を医師に求める人も多い。だがそれは最善の行動とはいえない。専門医が最新の治療法を解説する――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の特集「本当にいい病院は、どっち?」の特集記事を再編集したものです。

▼風邪
家にある余った抗生物質を飲むと起こる体の異変

聖路加国際病院で循環器内科医として勤務する水野篤医師は、患者との薬への意識の違いをこう話す。

「患者さんが、服薬を自己判断でやめることはよくあります。世の中には『飲まなくてもいい薬』の情報が溢れていますから。反対に、患者さんが飲みたがる薬もあって、その代表格が抗菌薬、いわゆる抗生物質です。2016年から厚生労働省が『薬剤耐性(ARM)対策アクションプラン』としてむやみに抗菌薬を服用することで菌に薬剤耐性(※1)がついてしまうと注意喚起するキャンペーンをしているのですが、認知度はまだまだです。患者さんもとりあえず抗菌薬を飲めばいいと安心するところがある。医師、病院の側も求められれば処方してしまうところもまだあります。しかしながら、例えば風邪のほとんどはウイルスが原因。ウイルス性のものに抗菌薬を投与しても意味はありません。それでも、患者さんが欲しがるので、併発する咽頭炎や扁桃炎などの炎症の診療報酬名をつけて処方してしまっていることもあると聞きます」

同じように、鼻づまりの原因である副鼻腔炎も「炎症がよほど酷い場合、明らかに繰り返す場合でなければ、抗菌薬は使わないほうが患者さんにメリットがあります」と話すのは医師たちがつくるオンライン医療事典「MEDLEY(メドレー)」を監修する園田唯医師だ。園田氏によれば中耳炎も同様で「原因の大半はウイルスだといわれており、それであれば抗菌薬は効果がない。副鼻腔炎と同じく症状が酷かったり、繰り返す人以外は使わないほうがいいです」と言う。水野氏が続ける。

「抗菌剤はどこか万能薬のように思われていて、家庭で余った抗菌薬を飲んだり、自己判断で使う人が多いのも問題です。勝手に内服することでの特殊な副作用はもちろん、抗菌薬に耐性ができてしまう。薬剤耐性菌はときに体を飛び越えて人から人へ、また、人から環境へと拡散してしまい、いざ病気のときに自分だけではなく、周りの大切な人への効き目まで低くなる恐れもある」

つまり、抗菌薬を多用することで、結局耐性菌を増やしてしまうなら、必要のないシーンで抗菌薬を使うことは避けたほうがいいというのが医療のトレンドになっているのだ。水野氏はほかの薬についても指摘する。

「痛み止めとして処方されるロキソニンも、家族が処方されたものを使う人もいるのですが、困りものです。腎臓病や、高齢者で心不全の人が痛み止めを使うと、症状が悪化することもある。心不全増悪因子の1つなんです。ロキソニンはここ数年で一気に広がりましたが、なかには定期的に飲んでしまう人がいる。実は解熱作用もあるので、感染症などの発熱も抑えてしまうこともあります。慢性疼痛の人などは仕方がないですが、本来は常用する薬ではありませんので、あくまで症状を抑える薬であると考えてもらえればと思います」

(※1)菌が薬に抵抗性を持ち、薬が効かなくなること 

▼インフルエンザ
病院でタミフルをもらうだけが治療ではない

これからの時期流行するインフルエンザ。実は、米国の疾病予防管理センターでは子どもと高齢者(5歳以下と65歳以上)、肺や心臓などに持病がある人以外では抗インフルエンザ薬の使用を推奨していないことをご存じだろうか。もちろん重症者には使用するべきとされているが、一般的な成人に対して抗インフルエンザ薬はあまり必要ないのではといわれてきているのだ。

「薬を飲んだところでウイルスを体外に出す時間が短くなるというデータはありません。高熱で体調に負担はありますが、薬の効果によって発熱がおさまるのが半日から1日ほど早まるといわれています(※2)解熱剤を飲めばたしかに高熱の時間は短くなりますが、診察所に行って2時間待って診てもらって解熱剤をもらうより、家で安静にしていたほうがいい場合もある。熱が酷いだけなら、市販薬で十分です」(園田氏)

たしかに、インフルエンザの疑いで外出して、ほかの人に感染させてもいけないだろう。しかし、会社には報告しなければいけないし、いつから出勤または通学するかという問題もある。

「インフルエンザは高熱と関節の痛みという自覚症状がはっきりしているので、流行する時期には診察を受けなくても8割くらいの精度で自己判断が正しいというデータがあります。外出、出勤は気になるところでしょうが、基本的には家で休んで、解熱してから2日経つまで待てばいい。自宅待機の時間を結論付けるような研究がないため、今後さらに議論が必要となるところです」(同前)

(※2)プレジデント誌2018.12.31号掲載時「解熱時間は16時間、つまり半日から1日ほどといわれています」と標記しておりましたが、「発熱がおさまるのが半日から1日ほど早まるといわれています」の誤りでした。訂正致します。

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水野 篤(みずの・あつし)
聖路加国際病院心血管センター・循環器内科QIセンター急性期看護学・臨床准教授。
2005年、京都大学医学部卒業。17年より現職。著書に『研修医のアタマと心とからだ』など。
 

園田 唯(そのだ・ゆい)
日本内科学会認定内科医
日本呼吸器学界専門医。日本赤十字社医療センター、静岡がんセンターなどでの勤務を経て2016年より現職。
 

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(伊藤 達也 撮影=研壁秀俊 写真=iStock.com)

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