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橋下徹"三角関数は絶対必要な知識なのか"

プレジデントオンライン / 2019年1月9日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tom-Kichi)

三角関数は絶対必要な知識なのかどうか。橋下徹氏の発言に対し、「三角関数絶対必要派」がネット上で猛然と批判を浴びせかけた。国民大多数の現況を顧みず、狭い自分周辺の感覚だけで物事を判断する人々はどこが危険なのか。天皇譲位が迫る中、橋下氏が本質的な問題を指摘する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(1月8日配信)から抜粋記事をお届けします――。

■他のメディアには出さなかったコメントをここに書きます!

明けましておめでとうございます。今年も、このメルマガで、ちょっとひねくれた僕の視点から社会を論じていきます。単なる社会・政治評論にならないように、社会や政治を論じながらも、課題を見つけ出してその解決方法を探っていく《問題解決の授業》を展開していきます。よろしくお願いします!

さて、いよいよ本年5月1日には新天皇が即位される。

今上天皇の譲位にあたって、色々なメディアからコメントや寄稿を求められたけど、全て断った。各メディアは内容が内容だけにという理由などで取材料や原稿料は0円と主張してくるけど、こちらも時間を取られるので0円というわけにはいかない。さりとて、このような内容で金額交渉するのもいやらしいので、それなら、僕はメルマガで自分の考えを述べればいいやと思い、今号から書きます。

(略)

■三角関数は生きて行くために絶対に必要不可欠な知識じゃない

僕は大学生の頃は天皇制に反対だった。少し本を読みだした大学生にありがちな、青臭い頭でっかちな理屈を基にしてね。いわゆる大学という狭い世界に閉じこもったり、本を読んで知識を持っていることが立派だと勘違いしたりした者が、世の中を語るとおかしな方向に行ってしまう典型例。

そういうインテリ連中の多くは、国民のことを「大衆」などとバカにし、国民の感覚で政治を行うことを「ポピュリズム」と批判するけど、教育レベルがある程度高い国においては、自分たちは賢いと信じているインテリたちの感覚よりも、国民大多数の感覚の方が賢明なことが多い。

お正月にAbemaTV「NEWS BAR 橋下」のスペシャルで教育が話題になったときに、「三角関数なんて大人になってから使ったことがない。国民全員が絶対に学ぶべき義務教育と、さらに深く勉強する教育は分けて、後者は選択制にすればいい」旨、僕は発言し、その発言概要がネットで出回った。

そしたら僕を批判する連中が、世の中で三角関数は使われている! 建築、建設の現場で三角関数は使われている! 俺は料理をするときにも三角関数を使っている! 人生の選択の幅を広げるためにも三角関数は必要だ! 三角関数くらい人間の教養として必要不可欠だ! なんて喚き始めた。

中には、難しい数学の世界や物理の世界の話を持ち出して来て、「俺は三角関数を知っているからこういう話の面白さを理解することができるんだ、凄いだろ?」とその道のプロの学者でもない一般人が悦に入っているものも多くあった。

この人たちの話を聞くと、あー、三角関数を知っていることで優越感を持ちたいんだな、と感じたね。

三角関数が世の中で使われていることくらい、知ってるよ。僕が番組で発言したのは、「三角関数は世の中で生きて行くために絶対に必要不可欠な知識じゃない。国民全員が深く知っておくべき知識ではない。興味がわかないなら、無理やりやる必要はない。授業内容を理解できないまま席に着くことは拷問以外の何ものでもないし、三角関数ができないくらいで劣等感を抱く必要もない」ということ。

今回、「三角関数は、国民全員が絶対に勉強しなければならない!」「これくらいのことを知らなければ恥ずかしい!」と叫ぶ人たちの姿をみて、僕は「あー、こういう人たちは世の中のことをほんと知らないんだな」とつくづく感じたね。

三角関数なんか深く知らなくても人間的に立派な人、仕事を成功させている人、人生を謳歌している人たちはたくさんいる。むしろ、ここで三角関数は絶対に必要だ! と喚き散らしている人たちよりも、仕事面でも、収入面でも、生活面でも人生充実していることの方が多いんじゃないか? 僕は自分の人生の中で、そういう人たちをたくさん見てきた。だから「人生において三角関数は絶対に必要不可欠な知識ではない」と断言できるんだ。

ところが、一部狭い空間だけで人生を過ごしてしまうと、そういう人生の充実者に出くわすことが少ないのか、三角関数が絶対的なものになってしまうんだろうね。そういう知識を持っているか否かで優劣が決まってしまう世界しか知らなければ、なおさらだ。

そして、三角関数は万人が絶対に勉強しなければならないものだと言い張るような連中、すなわち国民大多数の現況よりも、自分の周辺の状況を絶対的な基準としてしまう連中が政治に携わってしまうと、多くの国民の感覚から乖離した政治をやってしまい、国民からソッポを向かれてしまう危険性が高い。イギリスをはじめとするヨーロッパやアメリカ、さらにはブラジルまでもが、インテリ連中から言わせると「ポピュリズム政治」に陥っているらしいが、それはそれらの国々のインテリ気取りの政治家連中が、自分の周辺のインテリ連中に嫌われないようなカッコつけの政治をやってきた結果、多くの国民の感覚をすくい上げることができずに、いま国民からしっぺ返しを食らっているに過ぎないだけだ。

三角関数が世の中、特に理系の分野で使われていることくらいは誰でも知っている。しかしそれが、国民全員が知っておかなければならないことなのか、三角関数を知らない人たちは人生の敗者になってしまっているのか、多くの国民は三角関数を活用しているのか、という広い全体的視野を持つことが、国全体を動かしていく政治家に必要な能力だろう。一部インテリたちに好まれるような政治ばかりをやっていれば、必ず国民から痛い目に遭わされる。

■人生経験を積んで見えてきた「天皇制の意義」

ここまで政治の話を絡めて小難しく言わなくても、さっきも言ったように、三角関数を知らなくても人生に成功して、人生が充実している人をどれだけ知っているか、三角関数を知らなくても人間的に素晴らしい人をどれだけ知っているかという人生経験の多寡によって、三角関数の必要性についての認識が変わってくるんだろうね。

こういう三角関数的知識を重視する連中に限って、橋下は無知だなんだと罵ってくる。人生弁護士しかやったことのない弁護士、特にちょっとテレビでコメンテーターを務めたことを自慢に思っているプライドの高い弁護士なんかがよく罵ってくるんだよ。会ったこともないお前らに無知呼ばわりされる理由はないし、こう罵ってくる連中よりも、僕は人生それなりの経験をして、それなりの勉強をしてきたという自負はある。あえて言うけど、こういう三角関数的知識重視の連中に限って、人間的な魅力がないんだよね。三角関数を深く知るよりも、まずはもっと世間を知れっていうんだよ。

僕が大学生の頃に天皇制に反対だった話に戻すと、司法試験の勉強を始め、憲法を突っ込んで勉強すればするほど頭でっかちになっていき、天皇制と憲法の矛盾に頭を悩ませるようになってきた。そして周囲も憲法を必死に勉強している連中ばかり。ほんと狭い世界で考えていたよね。そうなると現実の国民の感覚、社会の実際からかけ離れた方向にどんどん自分の考えが進んで行ってしまう。おそらく学者の世界ってこんな感じなんだろう。

天皇・皇室を特別な地位にすることは平等主義とどう整合するのか。天皇は政治的権能を有しないとしつつ、選挙で選ばれていない者が一定の政治的役割を果たすことは、国民主権とどう整合するのか。

日本の長い長い歴史や今の国民の感覚からかけ離れてしまい、ただただ憲法の世界の中で考えてしまう。そして人生経験が乏しいと、この憲法の理屈に引っ張られて、天皇制と憲法の矛盾を乗り越えられず、最後には天皇制反対となってしまうんだよね。

それが社会人になり、人生経験を積んで世の中がだんだん見えてくると、天皇制の意義を理解してくるようになるんだよ。

他方、学生でもないのに、いまだに天皇制に絶対的に反対している人たちもたくさんいるけど、そういう人たちは、頭でっかちの学生のまま大人になってしまった人か、人生経験が乏しい人なんだろう。まさに三角関数絶対必要派みたいに、多数の国民のこと、実社会のことをよく知らない人たちなんだろうね。

(略)

(ここまでリード文を除き約3200字、メールマガジン全文は約1万400字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.134(1月8日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【迫る天皇譲位(1)】国民主権とどう整合するのか? 社会経験を積んで見えてきた天皇制の意義》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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