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先祖の墓の管理費滞納者を待ち受ける現実

プレジデントオンライン / 2019年1月12日 11時15分

写真=iStock.com/UygarGeographic

病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第10回は「墓守リスク」について――。

■最も避けるべきは、寺との連絡を怠ること

先祖の墓を継ぐ「墓守」。いざ自分がその責を担うことになったとき、どんなリスクが待ち受けるのか。

エンディングコンサルタントの佐々木悦子さんは「そもそも墓守は、民法上、祭祀承継者と呼ばれ、原則、1人と決まっています」という。一般的には、長男が引き継ぐ。親が墓守で自分が長男なら、墓守になるのが自然だ。

墓が自宅から近ければ大きな問題にはならないが、故郷に墓だけが残っている場合にはそうはいかない。寺の墓地にしても霊園にしても、基本的に毎年、管理費を支払う必要がある。また、寺の場合には、檀家との結びつきが強いケースも多く、行事に参加したり寄付金を求められたりすることもある。

「郷里に定住する予定がなければ、墓じまいという選択肢もあります」

墓を寺や霊園に返納し、先祖の遺骨は共同墓となる永代供養墓に移して、管理してもらう方法だ。その費用は寺や霊園によってまちまちで、納められている遺骨の数によっても異なる。

「先祖の墓を残したい」という気持ちが強ければ、故郷の墓を自分の住まいの近くに引っ越しをする「改葬」もある。やっかいなのは、寺の住職の了解を得る必要があることだ。地方の寺では、墓の数が減るのは死活問題。それゆえ、「法外な離檀料を請求される場合もあります」。

ただ、改葬ならではのメリットもある。最近は、一人っ子同士が結婚して、両家の墓守を引き受けなければならないこともある。

「その場合には、墓をひとつにまとめる改葬をお勧めしています」

新たな墓地を用意しなければならないが、家の近くに両家を合わせた墓があれば、先祖の供養もしやすい。

改葬の場合も、先祖の遺骨をすべて引っ越すのは難しいため、祖父母の世代までの遺骨だけを引っ越し、それ以前の遺骨は永代供養墓に移すケースが多いという。今ある墓を更地にしてお寺に返し、先祖代々のお骨(複数)を永代供養した場合の費用は約300万~1000万円になる。

最も避けるべきは、墓の管理者との連絡を怠ること。転勤などで引っ越ししたまま手続きを忘れていると、寺や霊園から墓守に連絡する手段がなくなる。管理費を滞納すれば、後でまとめて請求されることもあるし、最悪の場合、墓が撤去されてしまい「無縁仏」になる可能性もある。

「無縁仏とは、『祭祀承継者』がいないということです。霊園の場合、管理料を3年以上滞納していると無縁仏扱いされ複数の家族を同じ墓で葬る『合祀』などで整理されてしまうことが多い。お寺の場合には3年と限らず、数十年放置された後に無縁仏になる場合もあります」

管理料を払いたくないため確信犯的に連絡を絶つ人もいるが、先祖が草葉の陰で怒っているのではと心配になり、後悔するケースが後を絶たないという。

一方で「墓守」として注意しなければいけないのは、寺や霊園の経営状態だ。資金難によって運営が継続できなくなる場合もあるという。寺の場合、運営が難しくなれば、同じ宗派の別の寺がその墓地も合わせて管理するようになり、基本的に影響はない。公営の霊園も破たんリスクは少ないだろう。問題は民間企業が運営する霊園だ。

「今のところ事例はありませんが、今後、霊園の破たんは大きな問題になる可能性がありますね」

とくに都会で重宝されているマンション型の墓地の場合、寺は名義を貸しているだけで、実際の運営は民間に委ねている場合が多い。経営が悪化し、運営会社が破たんすれば、遺骨の行き場がなくなる可能性もある。

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佐々木悦子
エンディングコンサルタント
一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長。証券会社などを経て、2012年10月より現職。著書に『お墓・仏壇の選び方・祀り方』など。
 

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■▼【図表】一目でわかる! 墓守リスク

(ライター 向山 勇 写真=iStock.com)

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