イラク日報が体育会系ノリで書かれたワケ
プレジデントオンライン / 2019年1月13日 11時15分
■「日本はアメリカの犬だった」
「現地の人々にすれば、日本はアメリカの犬だった」と『自衛隊イラク日報』を監修したジャーナリストの志葉玲氏は語る。
「イラク戦争後、現地で取材を続けました。ときには銃を突きつけられながら、地元の若者から『日本は友達だと思っていたのに、アメリカのイラク侵略に加担するとは何事だ』とも非難を浴びました」
本書には2005年9月26日~06年7月18日の295日間、バグダッドとバスラに派遣された自衛官が記した日誌の全文が収められている。
当時、日本政府は、自衛隊派遣は非戦闘地域における人員や物資の運搬、インフラの修復のためのものであり、多国籍軍とは指揮系統が異なる、と合憲性を強調。特措法を施行して派遣を強行した。
だが「日報には駐屯地付近で激しい戦闘が行われた事実や、『敵』という文言が見受けられる」。現地の自衛官たちは、多国籍軍の会議に参加し、データをまとめ、発言し、交流を深め、公私ともに「綿密に付き合って」いた。
多国籍軍に「共通の目標に向かって事に臨もうとする『戦友意識』」を抱き、多国籍軍と在イラク米軍指揮官を兼ねる人物を「イラクオペレーションの神様」と称える。
■「多国籍軍と心情的に一体化している」
また、米兵による民間人への虐殺や暴行、集団強姦事件に関する報道をきっかけに、現地での反米感情が高まったことについて、「メディアの力を振りかざすジャーナリストの横行」「イラク情勢の悪化は、少なからずメディアの責任もあるのではないか」などと米兵に肩入れした責任転嫁論を展開する箇所もある。
そこに、彼らの「逸脱した感覚」が端的に表れている。これを、志葉氏は「多国籍軍と心情的に一体化している」と指摘する。政府の公的な発表と、現地の自衛官の意識の乖離は明らかだ。「文民統制の危機」か、「政府が国民に嘘をついていた」のか。
公開当初、日報の軽い語り口を多くのメディアが「ほのぼのしている」と評した。
日報は男性だけが集まった共同生活下の、“体育会系のノリ”で記されている。だが、「それは極度の緊張やストレスの裏返し」と志葉氏は分析。
独特のノリの裏に、コントロールを失いかけた自衛隊の不穏さが透けて見える。
安倍政権が憲法改正を目指す日本では今、自衛隊の扱いに関しても議論されている。
「憲法の制約があっての自衛隊。このまま憲法に自衛隊を明文化するのは尚早ではないでしょうか」
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ジャーナリスト
2003年3月からイラク戦争の現地取材を複数回行い、06年のレバノン戦争、14年のガザ攻撃など紛争地取材を重ねる。
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(梁 観児 撮影=横溝浩孝)
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