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"埼玉・千葉"を侮る者は本命校で涙を飲む

プレジデントオンライン / 2019年1月7日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/alexsl)

1月、埼玉・千葉で首都圏の中学入試が幕を開ける。学校によっては数千人規模の受験者が集まるが、これは2月1日から東京・神奈川で試験が始まるのを前に、「事前練習」で受ける子供が多いからだ。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「『1月入試は滑り止め』と油断すると、2月入試でも実力を発揮できないことがある」という――。

■中学受験幕開け、受験生が殺到する埼玉・千葉の「1月入試」

「本日、多数の受験生のため、埼京線ならびに湘南新宿ラインは混雑いたします」――近年、JR渋谷駅では1月10日の早朝、このような構内アナウンスが流れる。

東京の中学受験生が挑む都内・神奈川県の中学入試は2月1日に幕を開ける。ただし、「入試本番」ということであれば、彼ら彼女たちの多くは2月1日から始まるのではない。1月から始まるのだ。

1月には埼玉県と千葉県の私立中学入試が各校で実施される。それだけではない。寮制度を導入している地方の学校が東京会場での入試をおこなっている。東京の中学受験生の大半は第1志望校の「事前練習」でこれらの1月入試を受験するのだ。1月入試の代表校は以下の通り。

【埼玉県】

栄東、開智、浦和明の星、埼玉栄、大宮開成、城北埼玉、星野学園、獨協埼玉、立教新座など

【千葉県】

渋谷教育学園幕張、東邦大学東邦、市川、専修大学松戸、国府台女子学院、東海大学浦安など

【地方】

西大和学園、北嶺、土佐塾、愛光、早稲田佐賀、佐久長聖、札幌聖心女子学院、不二聖心女子学院、函館白百合学園、函館ラ・サールなど

冒頭の1月10日のエピソードは埼玉県の私立中学入試の解禁日であり、何校もの入試がおこなわれる。たとえば、昨年1月10日に実施された栄東(埼玉県さいたま市)の入試会場には、この1日だけで実に約4000名の受験生たちが集まった。

また、1月20日に実施される市川(千葉県市川市)の入試はその規模の大きさがよく知られている。入試会場は幕張メッセで、昨年は約3000人の受験生が集まった。ずらりと机が並ぶ光景は壮観だ。

■「1月入試は滑り止め」埼玉・千葉をなめる親子の末路

※写真はイメージです(写真=iStock.com/gyro)

東京や神奈川在住の受験生にとっては、1月入試を実施する学校は遠く、第一志望校ではないことが多い。しかしながら、これらの学校の入試は決して「模擬試験」ではない。本物の「入学試験」なのだ。地元の受験生には、その学校への進学を熱望し、受験勉強に日夜打ち込んできた子がたくさんいる。

よって、緊張感の漂う1月入試の学校を受験する当日は「今日はこの学校が第1志望校なんだ」というくらいの強い気持ちが必要である。

にもかかわらず、「1月入試は練習台」「1月入試は滑り止め」……こんなふうに入試を甘く考える親子がいる。それも受験をする子より、その親に多いように感じる。親の油断が子に伝播したまま入試当日を迎えれば、結果は手痛いことになる。予期せぬ不合格にパニックになった親子はそのショックを引きずったまま、2月を迎える羽目になってしまうのである。

1月入試ではちょっとした「障壁」に出くわす可能性がある。教室の暖房が効きすぎていて暑い、反対に寒い、机が凸凹していて書きづらい……。いつもと違う環境に戸惑って、試験の時間配分に失敗することもあるだろう。

しかし、その苦い体験こそが2月1日以降に向けた絶好の「備え」となる。

■都内の中学受験生、1月入試の理想は「1勝1敗」!?

わたしの経営する塾の生徒たちのほとんどは1月入試で複数受験する。保護者と受験校選びで相談する際は、子どもたちの性格面などを考慮することになる。

たとえば、第1志望校が難関校であれば、1月入試でも「不合格」を覚悟の上で、レベルの高い学校の受験を勧めることがある。2月の第1志望校と同じレベルの子どもたちが集う入試を体感したほうがいいからだ。もちろん、1月入試では「合格確実」と思われる学校も受験してもらい、そこで自信も付けさせる。

昨年の事例でいうと、わたしの担当していたクラスでは1月入試の学校で「不合格」を味わった子が3人いた。が、結果として全員が本命校に合格している。彼ら彼女たちは「不合格」にショックを受けながらも、結果が出たその日のうちにその学校の入試問題をやり直して、どこが悪かったのか自己分析したのだ。

このような手痛い失敗経験があったからこそ、同様のミスを2月1日以降で避けられたのではないか。この子たちがもし1月に「全勝」していたならば、本命校に合格できたかどうかは微妙だとわたしは考えている。

■「負けに不思議の負けなし」1月入試の典型的失敗例

一方、自信が持てずすぐにへこんでしまうタイプの受験生には、あえて「連勝確実」な受験パターンをわたしは勧めている。通うつもりがない学校とはいえ、合格証書を受けとれば、親子ともにうれしいし、2月1日以降に向けて弾みがつくことは間違いないからだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Milatas)

なお、「進学候補にはならない」と考えていたはずの1月の学校が、思いのほかアクセスがよいことを知り、また、学校の雰囲気を親子ともに気に入ることで、突如、進学候補になる事例も数多くある。こうなると、進学先がひとつ確保できたという安心感が子の自信を生み出し、2月1日以降の入試で実力をいかんなく発揮できるケースもあるのだ。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という格言がある。これは肥前国平戸藩第九代藩主であり、心形刀流剣術の達人でもあった松浦静山のことばである。

この格言は1月の中学入試にも適用できる側面がある。つまり、「失敗にはそれなりの理由がある」ということである。

これまでわたしが見てきた1月入試失敗例のいくつかを紹介したい。受験生親子はこれを反面教師にしてくださると幸いである。

*1月入試校に友人たちとワイワイ向かったので「失敗」

先述したように1月入試は立派な「本番」。そこでは適度な緊張感が求められる。しかし、子ども同士というより、ママ友たちが連れ立ってみんなでワイワイ入試に向かうケースがよく見られる。こうなると、ほどよい緊張感を得られない状態のまま入試問題に取り組むことになってしまう。結果として不合格をくらってしまうケースが多い。中学入試はあくまでも「個人戦」である。それを肝に銘じて1月入試に臨んでほしいと思う。

*道に迷って「失敗」

塾で指導している子の1月の入試会場に応援に行くと、決まって入試開始時刻ギリギリ、あるいはやや遅れて親子でゼイゼイ息を切らして駆け込んでくるケースがある。子はすでに半ベソをかいている。最初から「負けて」しまっているのだ。これでは普段の実力を発揮することは難しい。到着が早すぎるのも問題だが、アクセスを下調べの上、余裕を持って入試に向かってほしい。

*過去問を解かずに「失敗」

1月入試を「練習台」「滑り止め」と考えるがゆえに、その学校の「過去問」(過去に出題された問題)に一切目を通さずに入試に臨む受験生がいる。が、学校によって出題形式や入試問題の体裁はまちまちである。いざ入試問題を解こうとして途中で要領がわからなくなり、頭の中が真っ白になる受験生がいる。こんなことがないように事前対策は手を抜かないようにしたいもの。

■1月受験でママ友の付き合いを避けるべき理由

1月は入試本番が始まっているが、塾や学校は普段通りおこなわれる。この時期、ちょっとしたことが原因で受験生保護者同士のトラブルが勃発することがある。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AndreaAstes)

たとえば、何の気なしに「この前の1月の学校はウチの子、余裕で合格だったわ」と周囲に言いふらす。その中に不合格になった子の親が含まれていたら、果たしてそこでどういう感情を抱くだろうか。

ここまで露骨な話でなくとも、本当にささいなボタンの掛け違いで親同士の争いが生じることがある。

わたしの経験則でいえば、中学受験率の高い小学校に子が通っている親は細心の注意を払ったほうがよい。また、同じ学校、同じ塾、同じ性別、同じ志望校など、相手との共通項が多ければ多いほど、親同士の濃密な付き合いは避けたほうがよい。

大切なわが子の人生の岐路となる中学入試。余計な心配事を抱えることなく、第1志望校入試に向けて親子とも専心できることを願っている。

(中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平 写真=iStock.com)

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