女性の5割はホルモンのせいで昇進を断る
プレジデントオンライン / 2019年3月3日 6時15分
■ホルモン変化を考慮して最適なライフプランを
妊娠や出産に深く関わり、一生を通じて女性の全身に作用する女性ホルモン。女性らしさをつくるエストロゲン(卵胞ホルモン)と、妊娠を継続させるプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があり、心とカラダに大きな影響を与えています。
性成熟期が妊娠・出産の適齢期ですが、36、37歳ぐらいから急激に卵巣機能が衰え、妊孕(にんよう)力(妊娠できる力)も低下します。40代での出産も耳にしますが、それはレアケースと考えてください。キャリア女性がライフプランを立てるときには、そのことは知っておいてほしいですね。
エストロゲンの分泌量のピークは25~30歳で、そこから着実に下降し、閉経後にはほとんど分泌されなくなります。12カ月間生理がなければ閉経と定義づけられ、日本女性の閉経年齢の中央値は50.5歳です。更年期とは閉経の前後5年間を指し、女性ホルモンの急激な減少によって全身にさまざまな症状が現れます。特に、閉経前後の2年間は症状が強く、仕事に支障をきたす人もいるほど。更年期とキャリアの充実期は重なるので、更年期の乗り越え方は、社会全体の課題であると感じます。
■女性ホルモンは増やせない。減らさない心がけを
更年期にさしかかると、さまざまな変化が起きます。その1つが月経の変化。女性ホルモンの分泌量は緩やかに減少するというよりも、アップダウンをしながら次第に減っていくので、経血量が少ない月もあれば、驚くほど多い月もあり、変化に戸惑うこともあるかもしれません。子宮筋腫などの病気も増える年代なので検診をしっかり受けることは大前提ですが、年齢相応の変化として心構えをしておくと慌てずに済みます。
女性ホルモンの減少は避けられませんが、分泌を妨げる要因を遠ざけることはできます。二大要因がストレスとタバコ。ホルモン分泌の司令塔である脳の視床下部はストレスの影響を受けやすく、過剰なストレスが続くと、排卵障害や生理が止まることもあります。放置すれば、そのまま閉経に向かうことも。タバコは卵巣機能を低下させると考えられ、喫煙者は2年早く閉経するというデータもあります。また、エストロゲンには肌のうるおいを保ち、丈夫な骨を維持し、動脈硬化を防ぐ働きもあります。若々しく健康でいるためにも、女性ホルモンを急激に減らさない生活習慣を心がけましょう。
・排卵を起こし妊娠を助ける
・肌のうるおいを保つ
・血管をしなやかに保つ
・骨を丈夫に保つ
・脳の認知機能を助ける など
▼エストロゲンの減少が招く症状や病気
・皮膚の乾燥・シワ
・高脂血症による血管の病気
・骨粗しょう症
・認知症・腟(ちつ)の萎縮 など
■PMSも更年期症状も女性ホルモンの波で起こる
生理前のイライラやむくみを引き起こすPMS、ほてりや多汗、関節痛などの更年期症状。どちらも女性ホルモンの変動によって起こると考えられ、程度の差こそありますが、多くの女性に起こる身近な不調です。
黄体ホルモンが増える生理前に出現するPMSは、生理の始まりとともに症状が消えるのが特徴で、PMSがあるということは、きちんと排卵が起きている証しです。一方、年齢を重ねると脳からのホルモン分泌の指令に卵巣が応えられなくなることで、自律神経の中枢でもある視床下部の働きが乱れて起こる全身の不調が更年期症状です。どちらも、人によっては日常生活が困難になることもあり、女性のキャリアを左右する可能性が。ホルモン療法や漢方など、さまざまな手だてがあるので1人で悩まず婦人科へ相談を。一生を通じて起こる女性ホルモンの「波」とうまく付き合いましょう。
■更年期は月経の異常が始まりのサイン
■年齢とともに眼窩が拡大。顔の骨の密度低下は早い
人の顔を見ればだいたいの年齢がわかるものですが、見た目年齢を左右するのは、シミやシワよりも、たるみの影響が大きいと私は考えています。原因は加齢、紫外線、糖化などが複雑に絡みますが、土台の骨が萎縮することでも顔はたるみます。
エストロゲンが減少すると骨粗しょう症になりやすいことが知られていますが、顔の骨も例外ではありません。アメリカの研究で腰椎(ようつい)と顔面の骨密度を比べたところ、腰椎よりも顔面骨のほうが加齢による骨密度減少割合が10%も大きく、しかも腰椎が61歳以上の高齢層で減り始めるのに対し、顔面骨は41~60歳の中年層ですでに減少していました。また、骨密度の減少とともに骨の萎縮も起こります。すると、肌にもひずみが生じ、顔がぼやけた印象になります。眼窩(がんか)と呼ばれる眼球の入る穴が広がることで、上まぶたの脂肪は眼窩に落ち込み、眼窩内の脂肪は眼窩外に出て下まぶたが膨らみ、老け顔が進行します。
女性ホルモンの減少を補うサプリメントを取り入れるのもいいでしょう。UV対策や保湿、規則正しい睡眠などのケアも大切です。
・基本はUV対策!
・急激なダイエットをひかえる
・規則正しい睡眠
・食物繊維をしっかり摂る
・保湿・エクオールなどを取り入れる
■女性ホルモンのウソ・ホント
「バリバリ働くと男性化する」などちまたにはホルモンにまつわる根拠のない噂がたくさん。イーク表参道副院長の高尾先生がホントのことを教えます。
閉経すれば卵巣がんにはならない
ウソ:閉経して役目を終えた卵巣は、やがて萎縮していきますが、卵巣がんは遺伝子変異によっても起こるため、年齢が上がるとともにリスクが高まります。また、子宮体がんなど閉経前後から増えるがんも多いので、定期的に検診を。
太っている人はエストロゲンが多い
ホント:女性ホルモンは卵巣以外にも、副腎や脂肪からもつくられます。太っている人はそのぶんエストロゲン量が多く、閉経後もその影響を受け続けることになります。肥満の人が乳がんや子宮体がんのリスクが高くなるのはこのため。
ホルモン補充療法はがんリスクを上げる
ウソ:子宮体がんのリスクはホルモン補充療法(HRT)によってむしろ低下します。一方、乳がんリスクは5年以上のHRTで高まりますが、5年未満であればリスクは増えません。HRTを受けている間はがん検診を必ず受けましょう。
更年期症状の強さは遺伝する
ホント:母親の更年期症状が強かった場合、娘も似ることが多いようです。また、更年期障害は几帳面でまじめなタイプの人がなりやすいといわれます。両親の介護や死による心身の疲労や喪失体験が引き金になることも。
30代で生理が不順なのはプレ更年期のサイン
ウソ:視床下部はストレスの影響を受けやすいため、生理周期が短く、出血量が減るといった更年期に似た症状が出ることがあります。これはストレスによるホルモン分泌の乱れ。プレ更年期という言葉は医学的にはありません。
PMSがひどいと生理痛も重い
ウソ:因果関係はありません。生理痛の原因となる子宮を収縮させるプロスタグランジンは、子宮内膜から産生されます。よって子宮内膜が厚い人は生理痛が重い。子宮内膜を薄く保つピルが生理痛の緩和に効くのはこのためです。
閉経後は男性よりもエストロゲンが減る
ホント:男性も副腎などで女性ホルモンがつくられています。女性のエストロゲン量は閉経で急激に低下し、ついには男性よりも減ることがわかっています。それにともない、高脂血症、動脈硬化などのリスクも男性並みに高くなります。
恋愛をすると女性ホルモンが増える
ウソ:恋愛やセックスによって女性ホルモンが増えることはありません。また、女性ホルモンの分泌は年齢とともに減るものなので、増やすことは難しいです。ストレスを減らして禁煙するなど、急激に減らさないように心がけましょう。
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イーク表参道副院長
産婦人科専門医・婦人科スポーツドクター。慈恵医大病院産婦人科助教を経て現職。ヨガ指導者としても活躍し、女性のカラダと心を多角的にサポート。
アオハルクリニック院長
ウェルエイジングを日々探求する皮膚の専門家。順天堂大学医学部卒業後、2011年より現職。同医学部皮膚科助教(非常勤)、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本美容皮膚科学会会員、日本抗加齢医学会専門医。
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(構成=中島夕子)
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