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20代若者が管理組合作りに奔走したワケ

プレジデントオンライン / 2019年1月25日 9時15分

野村不動産 取締役兼専務執行役員 松尾大作氏

大手不動産会社の役員は、これまでどんなところに住んできて、将来どうするつもりなのか。業界のトップランナー3人に聞いた。第1回は野村不動産の松尾大作・取締役兼専務執行役員――。(全3回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

鹿児島市の「おばあちゃんの家」
DATA●鹿児島市●平屋建て●よく通った母の実家

■核家族育ちでも実感できた「大家族」のよさ

創業以来、ファミリー向け物件を柱に、コミュニティを重視した住宅開発を続けてきたのが私たち野村不動産です。特に最近の大規模開発では、コミュニティづくりに積極的に関わる開発を行っています。

たとえば大規模分譲物件の「ふなばし森のシティ」(千葉県船橋市)では、多世代コミュニティの形成に取り組み、イベントやライブラリーのスペースを設け、ママ友サークルをつくったり、シニア向け住宅の共用部分を開放して子供たちとのつながりをつくるといった試みを行い、内外から高い評価をいただきました。

考えてみれば、私自身にも「人は個人であるとともに、コミュニティに生きるものである」という強い思いがあります。それにはおそらく、幼い頃よく遊びに行った祖母の家での体験も影響しているのだろうと思います。

私は1964年、鹿児島市の生まれです。同じ市内に母方の実家がありましたが、母が6人きょうだいの末っ子だったこともあり、私はとりわけ祖母によくかわいがってもらいました。祖母の家には、お盆や正月になると九州一円から20人くらいの親族が集まりました。鹿児島という土地柄もあり、おじさんたちは全員酒好きで、芋焼酎やビールを手に陽気に話をします。

その間、子供たちは隅に集まって遊んだりするものですが、私はいとこたちの間でも年少のほうで、お兄ちゃん、お姉ちゃんにあれこれ遊びを教えられました。小さい頃は泣かされたこともあったんじゃないでしょうか(笑)。私の家は3人きょうだいの核家族でしたが、祖母の家では親族の年長者たちと触れ合うことで「大家族」を実感することができました。いわゆる「社会性」を学ぶことができる貴重な場であったと思います。

ただ、最近は親族が一堂に集まるようなことも少なくなりました。その点、ほかのご家族も同じではないでしょうか。私たちが育ててもらったようなコミュニティの力が年々減退し、今や社会問題とさえ見られているのは大変残念なことだと思います。

大学を出てから88年に野村不動産に入社しました。最初に家を買ったのは、大阪に赴任していた新人時代のことです。入社後2~3年ほどは会社の独身寮に住んでいたのですが、寮生活が嫌で1人暮らしがしたくなり、神戸市に中古マンションを見つけて購入しました。小さな建物で、ファミリー向けの部屋もありましたが、私が買ったのは1DKの単身者向け。当時はローン金利も高かったので月々のやりくりは大変でした。

■半年かけて説得、マンションに管理組合を設立

このマンションで問題だったのは、管理組合がないことでした。分譲主の地元工務店が倒産したこともあり、管理組合のことはうやむやになってしまったようです。

私は当時、会社の仕事で分譲マンションの販売をやっていましたから、このままではマンション自体が立ち行かなくなるということがわかりました。そこで、管理組合を立ち上げることにしました。

休日や夜間に一戸一戸訪ねては、「このままでは大規模修繕や日常の管理業務で困ることが出てきます」と、半年かけて住民のみなさんを説得して回ったのです。ひと通り了解が取れたところで全戸集会を開き、管理組合を設立。理事長には年配の方になっていただきました。社会人として「駆け出し」の私の言葉に住民の方々が耳を傾けてくださり、組合を設立できたことは貴重な経験になりました。

ここには約3年住みましたが、東京転勤を機に売ることにしました。以後、私は都合3度マンションを購入し売却しているのですが、どれも投資目的ではありません。「住むために買い、住まなくなったら売る」の繰り返しでした。

今は東京郊外の一戸建てに住んでいます。子供2人と私たち夫婦の4人家族です。しかし日本全体を見ると、少子高齢化が進み、ファミリー世帯が減って単身世帯が増えています。ファミリー向けに加え、シニアや単身世帯、夫婦でダブルローンを組まれるパワーカップルなど、多様な家族構成に合わせた住宅づくりがますます大事になってきていると実感しています。

18年、当社は「BE UNITED構想」を発表しました。従来はマンション内でのコミュニティ醸成を図ってきましたが、今後はより地域社会に開かれたコミュニティを目指そうという考え方です。まずは「プラウドシティ日吉」(横浜市)の開発を進めています。マンション居住者だけではなく近隣の方々とも手を携えながら、よきコミュニティをつくっていく。こうした形で、今後も当社らしい街づくりを進めていきたいと考えています。

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松尾大作(まつお・だいさく)
野村不動産 取締役兼専務執行役員
住宅事業本部長。1964年、鹿児島市生まれ。同志社大学経済学部卒業後の88年、野村不動産に入社。2018年より現職。野村不動産ホールディングス執行役員を兼ねる。

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(野村不動産 取締役兼専務執行役員 松尾 大作 構成=久保田正志 撮影=永井 浩)

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