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マンション"住みながら売却"はバカを見る

プレジデントオンライン / 2019年1月27日 11時15分

写真=iStock.com/valentinrussanov

ボロボロの中古マンションでも、うまくリフォームすれば数百万円、価値が上がるという。改装ポイントを数多く中古物件を手がける不動産投資家に聞いた。

■まずは賃貸か売却かを決める

傷んだ中古マンションも、適切な改装ができれば、売却額も家賃収入も上乗せが可能です。

しかし、お金をかければいいというものではありません。改装のグレードは予算に応じておよそ3段階に分かれます。仮に3LDK(60平米)のマンションだとすると、(1)30万~50万円、(2)200万~300万円、(3)800万~1000万円です。(1)は「原状回復」のみの予算。クリーニングに加え、床や天井、壁紙などの張り替えに1部屋10万円程度かかります。(2)は、風呂やトイレ、台所、洗面所といった水回りの交換まで行うもの。いわゆる「リフォーム」がこれに当たります。(3)はスケルトン(骨組み)だけ残し、内装や設備を丸ごと取り替える「フルリフォーム」「リノベーション」のイメージですね。

目安としては、賃貸用物件なら、かけられる予算は(1)30万~50万円まで。売却して利益を上げたいなら(2)200万~300万円まで。その程度なら家賃や売却益で回収できる可能性が高いということです。それ以上のコストをかけると貸しても売っても赤字になるケースが多い。(3)は完全に自宅用です。

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▼価値を上げる! 改装3カ条
1.「賃貸か売却か」用途を決めて、改装する
2.壁紙は「1面だけ」色柄物にする
3.「ホームステージング」で、生活感のない暮らしをアピール


▼キッチンリフォーム例[売却用]
束田氏が「売却用」に高額リフォームをしたキッチン例。システムキッチンは清潔感を大事にして白一色に。壁紙でアクセントをつけた。

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■“住みながら売却”は高値がつかない

以下、マンションの「売却」を前提に考えていきます。

まず、「住みながら売却活動をするか」「退去してから売却活動をするか」の2つの選択肢がありますが、これは後者が基本です。

生活感丸出しのところに内覧に来ることを想像してみてください。よほどセレブな暮らしでない限り、内覧者を幻滅させるだけです。高く売りたいならまず退去。ピカピカに改装し、人が住んでいた形跡を極力消してください。さらに「ホームステージング」を業者に依頼しましょう。キレイになった部屋に、家具や小物類を搬入して、モデルルーム風に演出。新築マンションなら当たり前の演出ですが、中古マンションでも、高く売りたいなら絶対に必要です。

大切なのは、改装前に「マンションがいくらで売れるのか」の目安、つまり相場を知ることです。「マンションナビ」「プライスマップ」など無料の不動産査定サイトを利用しましょう。マンション名などを検索するだけで売却価格の査定ができます。

相場を知ればおのずと、改装にかけられる予算も決まってきます。例えば3150万円で買ったマンションを売るといくらが相場になるのか。せいぜい3300万円だとわかったら、予算30万~50万円の「原状回復」程度にとどめないといけない。でも4000万円まで期待できるなら、水回りの交換を含めて200万円以上のコストをかける価値は、十分にあります。

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(左)「ふすまに壁紙」の例●和室は1室あると便利だが、古くさいイメージをもたれがち。モダンに見せるために、ふすまに壁紙を張った。このほうが部屋も広く見える。
(右)「一面だけ色壁紙」の例●壁紙は基本は白。しかし購入者(賃貸希望者)に印象づけるため、一面だけを色柄物にすると効果的。


▼マンションの改装は3段階
●「原状回復」グレード 30万~50万円[賃貸用
●「リフォーム」グレード 200万~300万円売却用
●「リノベーション」グレード 800万~1000万円自宅用]
※費用は3LDK(60平米)を想定

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改装を依頼する業者の選定にもポイントが。業者にも「原状回復」グレード、「リフォーム」グレード、「リノベ」グレードの3つがあると考えてください。「リフォーム」「リノベ」の業者は全国展開している大手企業中心で、予算500万~1000万円の高価な工事をしたがります。一方、「原状回復」の業者は地元密着型。30万円からの予算で頑張ってくれます。結論として、予算200万~300万円で「リフォーム」グレードの修繕であっても「原状回復」グレードの業者にお願いするのがおすすめです。電話帳をめくり、地元の業者を探しましょう。できるだけ小さい広告、できれば会社名と電話番号だけを載せている会社が望ましい。これで工事にかかる「人件費」の部分がかなり抑えられます。さらに工事にかかる「モノの値段」も抑えます。業者に「施主支給」ができないか、相談するのです。「施主支給」とは、シャワートイレやカメラ付きドアホンなどの設備を自分で購入し、改装業者に依頼するのは設置工事のみというやり方です。これで、業者を通すより大幅に安くモノを購入できます。商品は店頭やモデルルームを見に行ってもいいのですが、購入はインターネットのサイトで安いものを探せばリーズナブルに購入できます。なお、不動産業者、改装業者とも複数に会って、相見積もりをとりましょう。業者との相性を見極める意味もありますが、「予算を抑えたいなら、水回りをいじってはいけない」等のプロからのアドバイスをいろいろと受けることができます。

同じ物件を「賃貸」に出すなら、さらにケチります。改装は「原状回復」のみ。賃貸物件に期待されているのは第一にコスパ。コストをかけるよりは家賃を下げたほうが喜ばれます。ですからキッチンは安い仕様にします。売却するにしても「最低限」のベーシックな設備が整っていればいいと僕は考えています。システムキッチンは必須だけど、IHコンロは予算に余裕があればつける、食洗機までは不要。シャワートイレは入れるけど、泡で自動洗浄できるような豪華仕様にはしない、そんなイメージです。本当にこだわる買い主というのは、中古ではなく新築物件を買うか、自分の手で改装するでしょうから。

壁紙はシンプルな白の壁紙にすると、購入者や賃貸希望者の印象に残らないので、オシャレな柄物にするのがいいでしょう。ただ、主張が強すぎると好みが分かれるので、入って正面の壁一面だけ、色つきの柄物にすると失敗が少ないでしょう。壁紙は「見本帳」に収録されている小さなサンプルで選びますが、サンプルで見るより、実際、壁に張った状態で見ると色調が薄く感じられるので、少し大胆に思える柄を選ぶといいでしょう。和室をモダンに見せるために、和室のふすまにいわゆる「ふすま紙」ではなく「壁紙」を張るのもおすすめです。部屋が広く見えます。

最後にひとつ注意を。「売るなら余裕のあるうちに」です。離婚、病気、転勤等、必要に迫られて売ると買い叩かれるのがオチ。まず退去、きれいに改装し、ホームステージングで演出。少なくとも1~2カ月かけて、じっくり売り出しましょう。

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束田光陽
ファイナンシャルアカデミー「不動産投資スクール」講師
サラリーマンをしながら26歳で不動産投資を始め、通算27件、総額5億円の不動産を購入かつ売却。現在アパート3棟、区分マンション3室、51世帯の大家でもある。著書に『不動産投資 家賃収入&売却益 両取りのルール』など。

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(ファイナンシャルアカデミー「不動産投資スクール」講師 束田 光陽 構成=東 雄介 写真=iStock.com)

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