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認知症ではない老人が赤信号を渡る理由

プレジデントオンライン / 2019年1月27日 11時15分

写真=iStock.com/Rostislav_Sedlacek

頑固になった、キレやすくなった……。そのとき「年寄りはそういうものだ」とあきらめてはいけません。対処が遅くなれば、事態はより悪化します。今回、3つのテーマに応じて、専門家にアドバイスをもとめました。第1回は「老親にありがちな事例」について――。(第1回、全3回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年9月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

■【第1位】都合が悪くて、聞こえないふり

「忘れず薬を飲んでね」「部屋を片付けて」と言ったのに、親が聞こえないふりをしたり、返事はしたものの、実際は頼んだことをやってくれないことがよくあります。

これは性格が頑固になったわけではなく、聴力が低下し、本当に聞こえていないことがほとんどです。なかでも聞こえにくくなるのが、「高い音」です。特に若い女性の声は聞き取りづらくなります。

ただし本人は、「聞こえない」とは言ってくれません。「聞き返したら悪い」と気を使ったり、確認が面倒になったりして、わかったふりをすることが多いです。ところが肝心の内容が聞こえていないので、頼んだ通りには行動してくれないわけです。

難聴が原因なら、家族が「ちゃんと聞いてよ!」と怒鳴っても問題は解決しません。まずは試しに、いつもより低い声でゆっくりと話しかけてみてください。早口になりやすい人は、親が話すスピードに合わせるよう心掛けてください。また、難聴の予防改善にはマグネシウムが効果的なので、海藻やアーモンドなどを食生活に取り入れるのもよいでしょう。すでに難聴が進んでいるなら、補聴器の使用も検討してください。日本では補聴器に抵抗を感じる人が多いのですが、最近のものは非常に小さく、耳に装着してもほとんど目立ちません。

■【第2位】運転・散歩中に、赤信号を渡る

運転中に赤信号を見逃したり、信号が赤なのにゆっくりと横断歩道を渡ったりと、高齢になると交通に関する困った行動も多くなります。特に運転については、高齢者による事故が大きく報じられることが増えたため、少し車をこすっただけで、若い人でもこするのに、家族も「運転をやめさせようか」と考えがちです。しかし認知機能に問題があれば、免許は更新できないはずですし、それだけで運転をやめさせると、かえって認知症を発症しやすくなることがわかっているので、安易に免許を取り上げないほうがよいでしょう。

では、運転中にしろ横断歩道を渡るときにしろ、なぜ赤信号を無視するかといえば、最大の原因は目の機能低下にあります。高齢になると、視力は悪くなくても、視野が狭くなります。しかも年齢とともにまぶたが下がるため、特に上のほうが見にくくなります。だから、高い位置にある赤信号が目に入らないのです。

まぶたが下がるのを予防するには、ホットタオルなどで目の周りを温めて、血流をよくすること。また、コンタクトレンズは長時間の使用を控えるか、眼鏡を勧めてください。特にハードタイプは、まぶたが下がりやすいので要注意です。

根本的な解決策としては、眼科で手術を受ける方法もあります。まぶたの皮膚を切って上を見やすくするもので、30分から1時間程度で終了し、1週間ほどで抜糸できるので、体への負担は少なくリスクもほとんどありません。

■【第3位】止まらない、ネガティブ発言

高齢になると、「私のことが邪魔なんでしょ」などとネガティブな発言が増える傾向にあります。聞かされる家族は気が滅入りますが、「そんなこと言わないで!」と注意しても効果はさほどありません。人間の脳は、昔のことはポジティブに捉え、最近のことはネガティブに捉える構造になっています。だから高齢者は、「昔はよかった」という話はしても、最近のことはどうしても悪く言いがちなのです。

家族は親を気遣うつもりで、「料理は私がやるから、お母さんはゆっくりして」「庭の木の手入れは危ないから、親父はやらなくていいよ」などと言いますが、親は自分が役に立たない人間のように感じます。すると、ますます発言がネガティブになるのです。

この場合の適切な対応は、むしろ親に家事や仕事をお願いすることです。植物の世話や安全な場所の掃除などを頼むとよいでしょう。さらに「お手伝い、ありがとう」といったポジティブな反応を忘れないこと。高齢になるほど感情を伴う記憶は残りやすくなるので、少し大げさなくらいに表現すれば、親も満足感や充実感を得た記憶が定着しやすくなり、ネガティブな発言は自然と減っていきます。

▼老親にありがちな事例とやってはいけない対応策
(1)言うことを聞かないとき
×:親に怒る
○:低い声で話す

(2)運転・歩行が危ないとき
×:外出を禁止する
○:目を温める

(3)ネガティブ発言が多いとき
×:やめてと言う
○:役割をつくる

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平松 類
医師・医学博士
二本松眼科病院眼科専門医などを務める。著書に『老人の取扱説明書』(SBクリエイティブ)など。
 

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(医師・医学博士 平松 類 構成=塚田有香 撮影=的野弘路 写真=iStock.com)

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