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「お前の遺伝子が悪い」モラハラ夫の末路

プレジデントオンライン / 2019年1月24日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/OSTILL)

「ひどい『モラハラ』を繰り返す夫に限って、妻を大切にしていると思い込んでいる」。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏はこう指摘する。たとえば「息子の成績が悪いのは、お前の遺伝子が足を引っ張っているからだ」などと妻を罵っていた夫は、子供が中学に入ると、家から追い出されたという。深刻なモラハラの現状と、「モラハラ夫」の共通点とは――。

■モラハラによる離婚は珍しくない

ハラスメントをひと言で言えば、「嫌がらせ」や「いじめ」のこと。セクハラやパワハラをはじめ、飲酒にまつわるアルハラ(アルコール・ハラスメント)や、妊婦や出産後の女性に対するマタハラ(マタニティ・ハラスメント)など、私たちの日常生活には30種類以上のハラスメントが潜んでいると言われている。

家庭内においても例外ではない。たとえば、モラハラ(モラル・ハラスメント)は、ここ数年で急激に浸透してきたハラスメントのひとつだろう。おもに夫婦間で生じるモラハラは、言葉や態度により、パートナーに精神的にダメージを与える嫌がらせ全般を指す。無視される、努力を認めてもらえない、理由もなく怒られる、といったプレッシャーを継続的にかけられるため、モラハラを受けた相手は心に大きな傷を負う。やがて、パートナーからの精神的な暴力や虐待に耐え切れなくなると、トラブルや離婚に発展するケースも珍しくない。

■「自分には関係ない」と思っている

多くのハラスメントと同様、モラハラがもたらすダメージも目に見えるものではない。だからこそ、本人がモラハラで苦しんでいることにまわりが気づかない場合もあり、被害者がひとりで抱え込んでしまっているケースも少なくない。実際、「モラハラ夫」に悩み、真剣に離婚を考えている女性からの相談も年々増えている。

問題は、そうした「モラハラ夫」は、自分がしている妻へのモラハラに気づいていないという点だ。妻が夫との離婚を考えるレベルにまで達している場合の多くは、毎日の自分の言動が妻を傷つけているとは想像すらしていない、無自覚な「モラハラ夫」であることがほとんど。一般的なニュースや他人のよもやま話に「モラハラ」という単語が登場しても、「自分には関係ない話だ」と涼しい顔で聞き流している。なかには、「自分は妻を大切にしている」と思い込んでいるツワモノもいるほどだ。

■チェックリストの4つ以上に当てはまったら要注意

無自覚だからこそ、その罪は重くなるのがモラハラ。では、実際にどんな言葉や態度がモラハラに該当するのだろうか。次の質問のなかで思い当たる項目がいくつあるかチェックしてみよう。

□妻の話を聞くのが面倒くさく、無視することがある
□妻を人前でバカにしたり、けなしたりしたことがある
□スケジュールや予定などは、いつも自分のことを優先して決めがちだ
□「妻の言い分は間違っている」と思うことが多い
□妻に嘘をついても心が痛むほどではない
□妻の言動を見ているとイライラすることがある
□妻の趣味を「くだらない」と思っている
□飲み会や旅行などに参加することを、妻には禁じている
□妻の主張を聞かず、自分の意見を通すことが多い
□自分は妻のよき理解者で、「妻を理解できるのは自分しかいない」と信じている
(※カラットクラブ作成)

さて、いくつ思い当たる項目があっただろうか。思い当たる項目が3つ以内で、その頻度も「ごくたまに」というものであれば、ギリギリセーフ。4つ以上で、チェック項目にあることが日常化しているなら「モラハラ夫」である可能性が高く、妻は夫婦生活を苦痛に感じている危険性もある。

■「できるだけ夫と2人きりになりたくない」

ちなみに、「モラハラ夫」を持つ妻の苦しみのトップ5は次のとおり(※カラットクラブ調べ)

「モラハラ夫」の妻たちが苦しんでいること
1位 できるだけ夫と2人きりになりたくない
2位 自分以外には愛想がいいので、夫のモラハラをまわりに理解してもらえない
3位 夫の帰宅時間が近づくと、緊張して身体がこわばる
4位 子供が独立した後、夫と2人の生活を考えると憂鬱になる
5位 夫の顔色をうかがっていつもビクビクしているのでストレスがたまる

「妻からは何も文句を言われないから」と楽観視していると、妻の本音に気づこうとしないまま問題は増幅していく可能性もある。絶えることのない夫からのモラハラに我慢を重ねてきた妻が、実際に起こした行動を紹介しよう。

■「別れてください。子供と2人で生きていきます」

現在、育児中のA子さんの夫は7歳年上で、いわゆる「やり手」の経営者。知り合ってまもなくA子さんの妊娠が判明した。A子さんは、モデルの仕事に限界を感じていたこともあり、結婚と同時にキャリアを捨てて専業主婦に。一緒に暮らしはじめると、すぐに夫のモラハラがはじまったという。

「経験豊富で仕事もでき、自信たっぷりのオラオラ系の性格に惹かれて結婚しましたが、私への束縛やさげすみ方がとにかく激しくて。女友達と食事に出かけるのはもちろん、ひとりで買い物に行くのもダメ。『そのために高い金を払って、ハウスキーパーを雇っているんだ』と」

夫の口グセは、「オレのおかげで楽な生活ができてラッキーだろう?」「毎日綺麗にして、ちゃんと家にいてほしい」。はじめのうちは素直に従っていたA子さんも、「オレの稼ぎがなければオマエなんて何もできないだろう?」「オマエの価値は若くて美しいことだけだな」などと、日に日にエスカレートしていくモラハラ発言に耐え切れないほど追い詰められていったのだった。

そんなA子さんが、「実家の父親が倒れたから看病に行ってくる」と言い残し、子供をつれて家をあけるようになったのは3年前。以降、たびたびAさんは実家に行くようになった。夫はいい顔をしなかったものの、「でもまあ、親のことなら仕方ないな」とA子さんの外出を容認せざるを得なかった。

3年後、A子さんは夫に離婚を申し出た。「これまでずっとあなたのモラハラに耐えてきましたが、もう限界。別れてください。仕事のめどもたったので、私は子供と2人で生きていきます」と。たびたび家をあけていたのは、実家に帰るためではなく、資格取得のための勉強をしていたというA子さん。みじめな思いを続けて夫に頼らなくても、子どもと生活していけるように自立するための経済的な基盤を整える準備をしていたのだ。

■離婚を決意したきっかけは「中学受験」

B美さんがモラハラ夫との離婚を決意したのは、一人息子の中学受験がきっかけだった。「息子は勉強よりスポーツが得意だったこともあり、私は地元の公立中学に進学すれば十分だと思っていました。ところが、夫は自分が中学校から私立に通っていたこともあり、どうしても息子を私立に入れたかったんでしょうね」とB美さんは振り返った。B美さんの夫は、一流大学の付属中学に進学。そのままエスカレーター式に大学まで進み、卒業後は某有名商事会社へ就職した、いわゆるエリートだ。

実際に子供が受験勉強をはじめてみると、塾ではずっといちばん下のクラスで成績が伸びる気配は一向になし。夫が望む私立中学に合格するための偏差値にはほど遠い学力だとわかり、Bさんは内心「これで夫も私立への進学をあきらめてくれるかしら」と安心していたという。

■「オレの遺伝子は優秀なのに、オマエが足を引っ張っている」

ところが、その頃から夫のモラハラが本格的にスタートしたのだった。「息子の成績が悪いのは、オマエがバカなせいだ」「オマエに似たせいで、息子も勉強をしないんだ」「オレの遺伝子は優秀なのに、オマエが足を引っ張っている」などと妻に向かって言い放題。メールでもB美さんをバカにするようなののしり言葉を送ってくるようになったという。B美さんは、夫からの心ない発言に傷つき、眠れない日々が続いた。

そんな2人の離婚が成立したのは、子供が地元の公立中学に入学した後だった。「夫のモラハラを証拠として形に残そうと、すべての発言はICレコーダーに録音、すべてのメールもファイルに保存して弁護士に提出しました」。軽んじていたはずの妻から離婚を突き付けられた夫は、弁解の余地もなく慰謝料と養育費をきっちり支払って家を出て行くことになった。

■たった一言が離婚を招くかもしれない

自分ではモラハラの意識がなくても、相手が「このままでは自分らしく生きていけない」「幸せな結婚生活ではない」と感じたら、それは立派なモラハラになる。たったひと言のモラハラ発言が離婚を招くことにもなりかねないので、次に紹介する3つのワードには細心の注意を払いたい。

・経済的な弱みに関すること

「誰の稼ぎで暮らしているんだ」「オレが食わせてやっているんだからな」など、経済的な弱みに関する発言はもっともNGなモラハラワード。むしろ、金銭的に評価されにくい家事や育児を担う妻に感謝する必要があるはず。

・コンプレックスに関すること

「太っていてみっともない」「老けすぎだろう」といった容姿のことや、「こんなことも知らないのは大学に行っていないからか」「オマエのバカが子どもに遺伝した」といった学歴のことなど、自分ではどうにもならないようなコンプレックスを刺激する発言は間違いなく相手を傷つけるもと。

・親や親戚に関すること

「親の育て方が悪い」「だから田舎者はダメなんだ」「親戚もパッとしないね」など、親や親戚にまつわる悪口はトラブルを招くだけでなく、相手が憎しみを募らせる原因になることに注意。

モラハラによる離婚やトラブルを防ぐための一歩は、「これって、ひょっとしたらモラハラ?」と自分自身の言動を見直すこと。夫婦だからといって甘えすぎず、自分の言動により相手がどう思うかを考える意識を持つことが必要だ。それは、いつまでも円満夫婦でいられる秘訣でもある。

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岡野あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役
立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了 自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。

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(夫婦問題研究家 岡野 あつこ 写真=iStock.com)

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