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たった4色でできる世界地図の国別色分け

プレジデントオンライン / 2019年3月19日 9時15分

■世界地図の国別色分けが4色で十分な理由

欧州では歴史的に何度も国境線が引き直された。そのたびに地図を書き直さなければならず、それはとても重要な仕事だった。複雑に絡まる国境線だが、当時の印刷職人は、隣接する2つの国を違った色に塗り分けるとき、平面上のどんな地図も最大4色あれば塗り分けられることを経験的に知っていたといわれる。

そう聞くと、何十、何百という区分けを本当にたった4色で塗り分けられるのか不思議に感じるかもしれない。まず、塗り分けの原則として、左の図にあるように、線で接する部分は別々の色にし、点で接している場合は同じ色でもよい。そして、これを踏まえた複雑な図形の塗り分けの例が右の図で、確かに4色で塗り分けられている。

このように平面上のどんな図形も4色で塗り分けられることを「四色定理」という。1852年、英国のフレデリック・ガスリーが初めて問題提起し、多くの数学者が4色で塗り分けられることを数学で証明しようと試みた。しかし、当初は簡単だと思われていたこの証明が難航を極める。結局、ケネス・アぺルとヴォルフガング・ハーケンの2人によって証明に成功したのは、100年以上経った1976年のことだった。

実は2人は数式ではなく、コンピュータを使って証明したのである。簡単にいうと、さまざまな図形のパターンを用意して、それをケース分けして、全部のケースについてコンピュータでしらみつぶしに検証したのである。

ロジカルシンキングの世界でよく使われる「ミーシー(MECE)」という言葉を、ご存じの方も多いはず。何か物事を分類するときに、「漏れなく、ダブりなく」分類するという考え方だ。

2人は平面図を、漏れなく、ダブりがないよう約2000通りに分類し、そのすべてのケースについてコンピュータで検証した。それも、4年の歳月をかけてである。ちなみに現在は、633通りまで分類を減らし、この四色定理は証明されている。

実はこの四色定理は、現実社会にも応用されている。たとえば、携帯電話のエリア配置。周波数の同じ携帯電話の基地局が隣接しないように、四色定理によってエリア分けを行っているのだ。

もう1つ、四色定理の証明で注目したいのは、数学でいわれる「エレガントな証明」と「エレファント(象)な証明」についてである。数学の世界では、中学校の数学で習った「三平方の定理」の証明など、シンプルに表現できるものを高く評価し、「エレガントな証明」と形容することがある。

逆に、力業で地道な作業を多く行って証明するものを「エレファントな証明」と評する。エレファント、つまり象のように鈍重ではあるが、根気強く力業を駆使したうえで、達成された証明のことなのだ。まさに四色定理の証明は、エレファントな証明の代表といえるだろう。

とかく世の中はエレガントなものばかりに目が向きがちだ。しかし、四色定理のように、地道な努力を重ね、時間をかけて実証されたものが、実社会でたしかに役立っているという事実を、ぜひ知っておいていただきたい。

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タカタ先生
日本お笑い数学協会会長
現役で高校の数学教師を務めながら、お笑い芸人として多くの人に数学の面白さを伝える数学教師芸人としても活躍。日本お笑い数学協会としての著書『笑う数学』がある。
 

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(日本お笑い数学協会会長 タカタ先生 構成=田之上 信)

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