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AIが選ぶ「物件価格が上がる町下がる町」

プレジデントオンライン / 2019年2月4日 9時15分

写真=iStock.com/voyata

マンション購入の際は、将来売却する可能性を念頭に「資産価値が下がらない物件」を選びたい。そこで、資産価値が落ちない駅をAI(人工知能)で全国調査した。

■資産価値が落ちない、マンションを探せ!

5年後のマンション価格を、AIはどう予測したか――。

弊誌は「おたに」の不動産価格予測サービス「GEEO」を使って、全国のマンション価格を予測した。「GEEO」は、過去の取引実績や人口動態、地域特性など1000種類以上のビッグデータを基に、独自のアルゴリズムによって不動産価格を予測するシステムだ。

2019年の消費税増税、20年の東京オリンピックを終えた23年の予測価格を全国の主要駅ごとに算出した。地図中の数値は、Aが18年の予測価格、Bは23年の予測価格、CはBをAで割った倍率だ。ただし、予測価格は過去の取引データを基に算出しているため、価格のボラティリティ(変動幅)が大きいエリアは倍率の振れ幅が大きくなりがちになる。例えば、東京都心部で大幅な下落予測が出ているが、これは08年のリーマン・ショック後に暴落したことが大きな要因と考えられる。従って、変動幅が過剰に出ている可能性もある。全般的に今回の予測では、都心部で下落予測が目立った。都心回帰が続くという通説は本当なのか。住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏、東京カンテイの井出武氏にAIの予測結果に対する理由を推測してもらいながら、探ってみよう。

■都心5区で、下がる町は?

東京は今、「都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)を中心に不動産価格が上昇し、さらに交通の便がよく、相対的に値ごろ感のある周辺エリアにも値上がりが波及しています」(櫻井氏)という状況。しかし、AIの予測でワーストの下落率1位はなんと都内を代表する高級住宅地の「広尾」、同2位は「六本木」だ。麹町や溜池山王、中目黒、恵比寿などの人気エリアも軒並み下落予測となった。「過去のデータから見て都心は高くなりすぎているとAIは判断したんですね。ただ、私は地方都市の衰退に伴う大都市への人口集中、外国人の増加によって高止まりするエリアもあると思います」(同)。その中で上昇率1位となったのは大田区「蒲田」。「これは完全に穴場。これまでマンション価格が抑えられてきましたが、今後上がっていくと予測したのでは。実際、大規模なマンション開発も始まっています」(同)。上昇率2位の港区「白金高輪」については、「高級住宅地の鉄板エリア。ほかは値崩れしてもここは別格です」(井出氏)。

■まだ上がる穴場が多数

東京東部は、通勤に便利な場所のマンションをAIは上がると評価したようだ。上昇率1位は、千代田区の「神田」。「住居地区というイメージはないですが、東京駅に歩いていけるのは大きな魅力です。ファミリータイプは希少価値も高いでしょう」(井出氏)。もし大型マンションが開発されたら狙い目といえそうだ。上昇率2、3位は「門前仲町」と「上野」。「上野は穴場ですね。上野恩賜公園や動物園、アメ横があってマンションなんて建たないと思われがちですが、雷門方面に行くと意外とあります」(櫻井氏)。

千葉は「現状、東京のベッドタウンのエリアしか価格は上がっていません。千葉駅周辺になると、地元の人気は高いのですが、東京の通勤圏と捉える人は少ないでしょう」(井出氏)。下落率ワースト1位は「新検見川」。住環境は良好だが、都内通勤派にはやや遠いかも。上昇率1、2位は「我孫子」と「市川」。「どちらも交通の利便性がよく、我孫子も千代田線で都心に乗り換えなしで行けます」(櫻井氏)。

■城北・谷根千の人気が急上昇

東京北部は「赤羽や王子といった城北エリアや谷根千エリア(谷中・根津・千駄木周辺地区)の人気が上がっている」(井出氏)というのが、上昇場所が多い理由のようだ。上昇率1位は、都営三田線で都心まで20分の「板橋区役所前」。10分ほど歩いて東武東上線大山駅を使えば、池袋までわずか5分。「この利便性からして現在の価格が割安だとAIは判断したのでしょう」(櫻井氏)。上昇率2、3位は「大塚」と「根津」。「大塚は穴場。これから上がる可能性がありますね」(井出氏)。

「首都圏では、都心まで乗り換えなしで行ける“東京ダイレクトアクセス”が可能な沿線は強い。それが埼玉は限られている」とは井出氏。上昇率1、2位は「川越」と「南浦和」だ。「南浦和は浦和の隣駅なんですが、浦和より価格が安いのもAIが上がると予測した要因では。浦和の1つ先の北浦和になると、浦和止まりの電車が多くなるため、急に本数が少なくなります。そのため、東京寄りの南浦和は穴場的なエリア」(櫻井氏)。

■高級邸宅が集まる東京南部はどうか

昔ながらの高級邸宅が集まる東京南部の中で、上昇率1位は「二子玉川」。駅東側の大規模再開発でショッピング施設と住居棟、オフィス棟などのある「二子玉川ライズ」が誕生し、セレブが集まる住宅地に生まれ変わった。多摩川に隣接する郊外でありながら、田園都市線が半蔵門線と直通し、都心まで1本で行ける。そうした理由からAIは今後も人気が続くと判断したようだ。上昇率2位は、渋谷まで急行で1駅の「三軒茶屋」。昭和の雰囲気が漂う一方、おしゃれなお店が多く、若い人にも人気だ。

神奈川の上昇率1位は、東急田園都市線と小田急江ノ島線が乗り入れる「中央林間」。東京都心へのアクセスに優れており始発駅なのも魅力だ。上昇率2位は「横浜」。新宿、渋谷、東京、池袋などどこへ行くにも乗り換えなしで便利。大型ショッピングセンターなど商業施設が充実していることに加え、利便性のよさが評価されたようだ。対して、神奈川のワーストの下落率1位は「川崎」となった。

■リニア効果を如実に反映

「27年に品川―名古屋間の開業が予定されているリニア中央新幹線の経済効果への期待、名古屋駅前へのトヨタの本社機能の一部移転で駅周辺を中心に地価が上がっています」(櫻井氏)。上昇率1位の「高岳」は名古屋の中心的な繁華街、栄や今池の近くにありながら、大通りから少し入ると閑静な街並みが広がる高級住宅街だ。上昇率2位の「星ヶ丘」は若いファミリー層に人気のエリアで、商業施設や教育施設が充実している。

京都は、四条駅・烏丸駅を中心とした碁盤目状の旧市街地は、セカンドハウス需要で以前から高騰しているため除外した。上昇率1位の「山科」は、JRと地下鉄東西線、京阪京津線が利用できて足回りのよさはバツグン。京都市街地や大阪のベッドタウンとして人気だ。上昇率2位は「二条」。歴史ある建造物が点在するが商業施設や交通インフラ、医療機関なども整っている。「土地区画整理事業によって思い切った地域活性化を進めた二条は、今ちょうど注目され始めた場所」(櫻井氏)。

■新幹線の停車駅は潜在力が高い

大阪は都心回帰で値上がりしているが、その都心の下落予測が目立つ。「タワーマンションが多い福島や天満、京橋など都心の商業エリアが再開発されていることもあり、このところ人気も不動産価格も上昇しています。AIの予測ではその辺りが軒並み下落予測ですから、上がりすぎと判断したのかもしれません」(井出氏)。上昇率1位は、新幹線の停車駅「新大阪」だ。ビジネス街だが、最近は周辺の再開発が進み、商業施設やマンションなどが建ち始めている。実際、「大手不動産会社が大型ブランドマンションを販売し、非常によく売れた」(櫻井氏)という。交通の利便性のよさも申し分ないが、さらに19年には「おおさか東線」が全線開業し、新大阪までつながる予定だ。「新幹線の停車駅は、熱海や三島が再開発で活性化したように大きなポテンシャルを秘めている。そういう意味では新大阪は有望ですね」(井出氏)。上昇率2位は堺市の「三国ケ丘」で、こちらは一転して落ち着いた住宅街で、ファミリー層に人気だ。「ちょっと離れた郊外で住みやすく、不動産価格の上昇がまだ波及していない。これから期待が持てるのでは」(櫻井氏)。

兵庫は下落が多くなった。「この地域には北から阪急、JR、阪神の順に路線が走っています。不動産市場もこれに沿った序列で、一般に阪急沿線が一番高いんです」(井出氏)。ところが、AIは、人気ランキング上位に必ず登場する阪急沿線は軒並み下落と予測。「すでに価格が上がりすぎ」と判断したようだ。なかでも、ワーストの下落率1位は阪急神戸線の「岡本」。逆に上昇率1位は、歴史のある住宅地「伊丹」に。ここは落ち着いた住環境で商業施設も充実。電車で神戸の中心地である三ノ宮まで約30分、大阪駅まで約20分、伊丹空港もバスで約25分というアクセスのよさでも人気だ。「伊丹駅近くで複合商業施設一体型の大規模マンションの販売が始まったことも上がる要因になっているのでは」(櫻井氏)。上昇率2位は「灘」。繁華街・三ノ宮の一駅隣りにもかかわらず、住宅街が広がるエリアだ。「都心部でありながら不動産価格が比較的安いことが上昇予測の要因だと思います」(同)。

■仙台は再開発地域にAIが軍配

30年度に開業予定の北海道新幹線への期待から、ここ数年、札幌駅周辺を中心に地価上昇が続く。しかし、下落が上昇を大幅に上回った理由は「AIが上がりすぎと判断し、逆に下落を予測したのでは」(櫻井氏)。上昇率1位は古くからの高級住宅地「円山公園」。都心へのアクセスもよく、北海道神宮など自然も身近に感じられるエリアだ。上昇率2位の「南郷13丁目」も従来の閑静な住宅街で、スーパー・コンビニ・病院が充実。

仙台市は「東日本大震災後、都心を中心にずっと上がり続けた結果、高止まりの状況」(同)。今回の予測結果では唯一、上昇が上回った。ただし、AIが上昇と判断したのは都心ではなく、少し離れた場所。上昇率1位の「富沢」は、市内最大規模の再開発地区「あすと長町」と同じ南北線で、同様に区画整理事業が進む今注目のエリアだ。一方、上昇率2位の「北仙台」は富沢とは逆に仙台駅の北側。仙山線と南北線が交差する交通の要で、こちらも再開発事業が進められている。

■広島の狙い目は都心から離れた町

広島市は値下がりが大勢。「もともとの中心市街地(紙屋町・八丁堀地区)と、再開発が進んで高層ビルが立つ広島駅周辺などの都心以外は人口流出の傾向が強まるだろう」(井出氏)というのが、その要因と考えられる。そうした中で例外なのが、都心から離れているのに上昇率1、2位となった「緑井」と「大町」。市街地再開発事業によって商業施設と自然が共存する街に生まれ変わった緑井、広島高速交通(アストラムライン)、JR、バスが集結する大町は、子育て世代に人気が高い。

福岡市は「九州新幹線の開通、インバウンド効果などで活気があり、ここ数年で土地価格も上昇したが、それは天神や博多への通勤圏が中心」(櫻井氏)。上昇率1位と2位は、地下鉄1号線(空港線)の「大濠公園」と「西新」。「この辺りは博多に通勤するのに絶好のエリア。隣の赤坂とともに、東京でいえば世田谷のような高級住宅地です。億ションやタワーマンションが売りに出たりするのも大濠公園や赤坂です」(井出氏)。

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櫻井幸雄
住宅ジャーナリスト
「週刊住宅情報」記者を経て独立。年間200件以上の物件取材を行い、首都圏、近畿圏、中部圏、福岡、札幌など全国の住宅事情に精通する。
 

井出 武
東京カンテイ上席主任研究員
1989年、マンションの業界団体に入社して不動産市場の調査・分析等に従事。2001年、東京カンテイ入社。市場の調査・研究等を行っている。
 

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(河合 起季 撮影=澁谷高晴 地図作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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