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500人に1人 ベンチャー投資家が惚れる人

プレジデントオンライン / 2019年5月8日 9時15分

才能のある人を見いだし、育てる仕事が重要になっていく。(PIXTA=写真)

■ベンチャー投資家は人をどう見極めるのか

英語圏でしばしば耳にする「ジョブ・ディスクリプション」という言葉がある。日本語では「職務記述書」と訳されているようだ。

基本的には会社との雇用契約を結ぶ際、どのような仕事をすべきかをあらかじめ決めておくのが職務記述書の役割。一方、会話の中では、それぞれの仕事がどのような内容なのか、何がポイントなのかということを説明するときにもこの言葉が使われる。

先日、ベンチャーキャピタルで投資先を決める仕事をされている方とお話しして、とても面白かった。

さまざまな人に会うのが重要な仕事で、いっしょにご飯を食べたり、お酒を飲んだりして関係性を築き上げていくのだという。そうやって会った人のうち、実際に投資するのは約500人に1人だというから、かなりの「狭き門」である。

もちろん、技術的な視点やマーケットも大切だが、何よりも重要なのは、起業家、起業志望者の「人柄」なのだという。

人間性を見極めるのは、難しい。それは、直感的なものだし、「腹を割って話す」という言葉に象徴されるように、お互いの身体性を含めた全身のコミュニケーションが大切になる。

場合によっては、起業するずっと前、学生の頃から、「これは」という人は目をつけて、関係性を築いていくのだという。まずは利害関係のない「友達」になる。そして、いよいよ起業、というタイミングになって、ぱっと投資を決めるのだという。

ベンチャーキャピタルの投資は、時代の花形の仕事。しかし、お話を聞いていると、なかなか大変だなと感じた。投資先になった企業の経営者には、継続的に会って情報交換したりアドバイスをしたりするというから、一日に何回も何人にも会って話し合いを繰り返すのだろう。

人に会って、人を見極める。それが投資という仕事の「職務記述書」なのだなと思った。

同時に、これは何かに似ていると思ってはっと気づいたのが、大学などの学校の学生選びのプロセスである。

日本の教育もようやくペーパーテストの点数一本槍の選抜から、AO入試に大きく舵を切ろうとしている。

学校側から見れば、よい学生を集め、育てたい。今までのようにテストの点数だけで選ぶのは一番手間がかからないが、それでは時代に合わなくなってしまった。

これからは、外国の有力大学がすでにやっているように、よい学生を見つけて、その将来に「投資する」という積極的な行動をとる大学が増えていくのだろうと思う。

オンラインの授業をとっていて、とても優秀な成績だったモンゴルの高校生に入学のオファーをしたり、数学オリンピックの上位入賞者に声をかけたり。世界の有力大学は、そのような学生探しの努力をしている。

これからの時代に求められる人材を探すためには、待ちの姿勢ではダメで、自分から積極的に人を探しにいかなくてはならない。入学者選抜から、ベンチャーキャピタルまで、人を見極め、寄り添い、成長させるということが普遍的な「職務記述書」になっていくだろう。

時間や興味の「投資先」の人を選ぶという視点から自分の仕事や生活を振り返ると、新しい世界が開かれていく。ベンチャーキャピタルは、その1つの象徴である。

(脳科学者 茂木 健一郎 撮影=横溝浩孝 写真=PIXTA)

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