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橋下徹「中韓とのガチンコではこう勝つ」

プレジデントオンライン / 2019年1月30日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Chris Ryan)

韓国政府を攻めるための「直接証拠」である電波情報を開示せず、ウヤムヤのままレーダー照射事件の幕引きを図る安倍政権。これでは日本側の完敗だと橋下徹氏は憤る。では、どうやれば外国政府とのケンカに勝てるのか? 大阪府知事時代の経験を公開する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(1月29日配信)から抜粋記事をお届けします――。

■電波情報を開示できないなら日本側は完全敗北

韓国海軍による海上自衛隊機に対しての火器管制レーダー照射事件が全く収束しない。

(略)

前号でも論じたとおり、裁判所のような第三者機関で最終判断をしてもらうケンカではなく、当事者間で最終決着をしなければならないケンカのときには、相手が絶対に反論できないような証拠、すなわち事実を直接示す「直接証拠」を突き付けるしかないんだ。

日本側は、韓国側の火器管制レーダーを受けた際の「音」を公開した。しかしこの「音」は火器管制レーダーを日本側が音に「変換したもの」で、まだ間接証拠だ。案の定、韓国側は「不明瞭な機械音に過ぎない」と反論してきた。

だから、僕は、「日本側は電波情報そのものを公開するしかない」と言い続けてきたんだ。

(略)

そしたら日本側の岩屋毅防衛大臣は、未来志向を考えて火器管制レーダー問題はもう取り上げないと、事実上の終結宣言を出してしまった。

これは、ある意味、日本側の完全敗北だ。こんなことになるなら、初めからケンカを吹っ掛けなければよかった。

(略)

■中国との「ガチンコのケンカ」で学んだこと

僕は大阪府知事という立場で、大阪府民の生活に実際の責任を負いながら、中国政府ともガチンコのケンカをやってきた。そしてその経験の中で、ガチンコのケンカにおける直接証拠の大事さと、それに加え中国政府のある種の合理性というものを実体験したんだ。

(略)

2010年9月、尖閣諸島沖で、中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に衝突した。当時の民主党政権はその対応について迷走した。当初は強気で漁民を逮捕、身柄を拘束。そして中国側は猛抗議。最終的に民主党政権は、那覇地検の判断としてこの漁民を処分保留で釈放した。中国からの猛抗議に腰砕けになってしまった。

(略)

そのとき丁度、中国の上海では、中国の高度経済成長の象徴として上海万博が開催されていた。僕は、その閉幕記念行事の一環として、基調講演をして欲しいと上海側から招待を受けたんだ。この上海万博は中国の勢いを表している大イベントで、日本の国会議員はもちろん、全国の知事や市長、地方議員たちもこぞって出向いていた。

(略)

僕は府庁の担当幹部を呼んで、「このままいけば、必ず中国側は上海万博に日本の政治家が来ることをキャンセルする。一方的にキャンセルされることは避けなければならない」と伝えたんだ。

中国は非民主国家。中国共産党が民間活動も全て牛耳っている。中国共産党、中国政府の掛け声一つで民間がそのとおりに動くんだよね。

だからある外国との間で中国共産党、中国政府の気に食わない事態が生じれば、中国共産党、中国政府はその国に関連する政治的なイベントを中止するだけでなく、民間活動も中止してくる。民間のイベントを止めたり、観光客の往来を止めたり、商取引を止めたり、ね。

日本の経済はある意味「中国頼り」になっている。日本全国の地方自治体は、中国からの観光客をあてにし、中国企業との取引をあてにしている。だからそれらを止められると非常につらいので、中国の機嫌を損ねないようにしているという実情がある。

このようなことを批判することはたやすい。特に政治行政に責任を持たない、一国会議員や学者やインテリの類は、カネよりもプライドを重視しろ! と平気でいう。でも政治で最も重要なことは国民がきちんと飯を食っていけるようにすること。そこをしっかりと築いた上で、さらに日本のプライドを守るというのが現実的な政治だ。

(略)

上海から招待を受けたのに、一方的にキャンセルされるというのは大阪のプライドが許さない。そこは絶対に避けなければならない。他方、一方的にキャンセルされたとして、中国とケンカするにしても、観光客を止めるぞ! 商取引を止めるぞ! と脅されて、そのまま腰砕けになることも絶対に避けなければならなかった。

この尖閣諸島をめぐる漁船・海上保安庁巡視船衝突事件によって、必ず中国側は招待をキャンセルしてくる。キャンセルされた場合には、僕は大阪のプライドを守るために中国とガチンコでケンカをする。そのケンカで絶対に負けないように完璧な準備をすべきというのが、僕の府庁担当幹部への指示だった。

■「約束破る中国はおかしい!」と怒りを爆発させたら……

僕は、中国側ときっちりと書面を交わすことを指示した。「尖閣諸島をめぐって現在、日本と中国が激しくぶつかっている状況にあるが、両政府がどれだけ対立したとしても、地方政府の長である橋下の招待は、中央政府の状況とは切り離し、絶対にキャンセルしない。ゆえに上海に来てほしい」という趣旨の書面の取り交わしだ。

(略)

そのようにトップが明確に指揮すれば、官僚組織は優秀だ。中国側と交渉の上、きっちりと僕の望む書面を交わしてきてくれた。後で聞いたところによると、中国側とかなり激しい折衝をしたようだ。そりゃそうだろう。それでも中国側はこの書面を交わしてでも、僕を招待したいと言ってきてくれた。

その後、日中関係がかなり激しく対立・緊張してきた。そしたら案の定、中国側は日本の政治家、知事、市長、地方議員を上海万博に招待する行事を全てキャンセルしてきた。もちろん大阪府の僕に対してもキャンセルの通知を出してきた。僕の知り合いの知事、市長も、「中国はこれだから参っちゃうよね」と不平・不満を漏らしていた。

知事が海外に出向く出張は、一個人の出張とは異なり、組織として当然それなりの準備をしている。大都市の知事となれば、その準備は相当なものだ。一企業の社長の出張よりも、準備が大変だ。それを中国側の一方的なキャンセルによって全てパーにするなんてことを、僕は「ハイそうですか」では済ませられない。そこまで軽く見られるのは許せない。

そこで僕は、中国とケンカをすることに決めた。これは当初の想定どおりだ。普段は中国にむちゃくちゃ気遣いしている府庁担当幹部も、今回は腹をくくっているようだった。まあ、それも大阪府と中国側の間には僕の招待を絶対にキャンセルしないという明確な書面、いわゆる直接証拠があったのでケンカに勝てると踏んでいたんだろう。

そこで僕は記者会見でぶちまけた。

「中国はおかしい。尖閣諸島をめぐる日中政府の対立・緊張がどんなに激しくなっても橋下の招待は絶対にキャンセルしないと書面まで交わしたのに、平気でその約束を反故にする。中国はなんちゅう国なんだ!」と怒りを爆発させた。

そしたら中国側から、「上海万博事務局の手違いで間違った通知を橋下知事に送ってしまったようだ。大変申し訳ない。是非上海万博の閉幕記念行事で基調講演をして頂きたい」と返事が来た。

僕は「中国側が謝ってきたならそれでいい。上海万博に行こう」と府庁幹部に指示を出した。そして「その頃は上海ガニのシーズンに入るんじゃないか」ということも付け加えた。

口約束しかしていなかった全国の知事、市長その他の政治家たちの招待は全てキャンセルになった。

大阪府の僕だけが招待を受けることになった。しかも僕は、「中国が謝ってきたので許してやる。行ってやったる」という雰囲気を国内ではプンプン漂わした。もちろん中国に行けば、そんな偉そうな態度は出さないけど、まあ国内で有権者からの支持を集める一方法として中国とのケンカに勝った匂いをプンプン強く出したね(笑)

そして上海着。

その日の夜は、中国側の招待で、迎賓施設に併設されたレストランで、上海ガニをたらふく食べさせてもらったよ(笑)

当事者同士で決着をつけないといけないガチンコのケンカでは、直接証拠が重要なんだ。中途半端な証拠しか出せないなら、初めからケンカなどしない方がいい。

そして明確な直接証拠があれば、あの中国だってしっかりとそれを守る。他方、直接証拠がないなら、とことん自分の立場を主張していく。これが厳しい国際社会の現実なんだろう。韓国の今の態度は、まさに日本が直接証拠を突き付けないので、ドローに持ちこもうとしている、ある意味国際社会での流儀でもある。

(略)

(ここまでリード文を除き約3300字、メールマガジン全文は約1万900字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.137(1月29日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【韓国徴用工問題(5)】このままでは日本側の完全敗北! 安倍政権にも知ってほしい橋下流「ケンカの勝ち方」》特集です。

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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