求人サイト依存の採用は完全にバカを見る
プレジデントオンライン / 2019年1月28日 9時15分
※本稿は、白潟敏朗『知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■急速普及「リファラル採用」は縁故採用とどこが違うのか
リファラルとは英語の「referral」で、委託、推薦、紹介という意味です。リファラル採用とは一言で言うと「社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦による採用活動」のこと。米国を中心に世界中の企業で採用の柱になりつつあります。
「何か横文字使ってるけど、それってオレが知ってる縁故採用じゃないの?」と思われた方、正解です。
では、リファラル採用は縁故採用とまったく同じなのかと言うとそうではありません。最初の接点は縁故採用に近いかもしれませんが、社員の紹介だからといって無条件で入社できるのではなく、しっかり面接し採用の可否を決定します。つまり、広告媒体の代わり、紹介会社の営業マンの代わりを自社の社員が担う、というわけです。
ただ単に社員に知り合いの紹介をお願いするだけでは機能しません。そこにいくつかの仕組みやしかけを入れることによって、採用そのものが劇的に変わるのが、このリファラル採用です。
リファラル採用は、ダイレクトリクルーティング(会社が人材データベースや社員の友人・知人、SNSから求める人材を探し、直接連絡し採用する「攻め」の採用手法)のなかでも、最も費用のかからない効果的な採用手法です。メルカリやビズリーチ、サイバーエージェントなどの有名企業が導入に成功し、大きな成果をあげています。
■米国では求人サイトよりもポピュラーに
図表1に示すとおり、アメリカではGoogleやFacebookをはじめとするIT企業を中心に「リファラル採用」の活用が増えています。2012年時点ですでに84.1%の大企業がリファラル採用を実施しています。
シリコンバレーでは、会社の採用人数のうち、50%以上がリファラル採用でないと人事責任者がクビになると言われるくらい、リファラル採用が当たり前になっています。
さらに図表2に示すとおり、2012年時点でアメリカでの採用経路は既に第1位がリファラル採用で28%、第2位が求人サイトで20.1%となっており、アメリカでは求人広告よりもリファラル採用の方が活用されているのです。
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日本では、縁故の割合が24%(2016年の厚生労働省の雇用動向調査)というデータがあります。これはコネ入社、隠れリファラル採用、そして純粋なリファラル採用の数を足した数ということになるでしょう。
エン・ジャパン株式会社の『エン人事のミカタ』上での、「リファラル採用」に関するアンケート調査(501社からの回答、8割が従業員数300名以下の中小企業)では、2017年10月時点でリファラルによる中途採用を実施したことがある企業は62%、そのうち制度化している企業が33%でした。
■コスト大幅削減ほか「リファラル採用」のメリット7
リファラル採用は社員から人を紹介してもらう手法なので、採用コストが下がるイメージはわくでしょう。かつ、私たちが主に中小・ベンチャー向けに開発した「魅力向上型リファラル採用」では、採用コストの削減に加え、副産物的なものも含めて7つのメリットがあります。
(1)採用コストを大幅に削減できる
リファラル採用は社員の友人・知人紹介による採用のため、費用がほとんどかかりません。社員のリファラル採用活動費(友人・知人との会食費)を支給すると、その費用が追加でかかりますが、いずれにしても、リファラル採用により採用コストの劇的な削減が可能になります。
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ちなみに、自社の社員に、転職希望者を紹介してくれたら20万円程度の報酬を支払う「社員紹介制度」を導入している会社は多いですが、私たちはあまりおすすめしていません。社員紹介制度を設けて全社員に周知しても、社員から紹介がくることはほとんどないからです。紹介がないから報酬金額を30万円、50万円と高額にする会社もありますが、それでも社員から紹介がくることはほとんどありません。
なぜ、報奨金制度はうまくいかないのでしょうか? その原因は次の2つです。
・社員にとって採用活動が「自分ゴト」になっていないから
・社員は友人、知人を「お金」のために利用したくないから
お金を出せば紹介が増えるというわけではないのです。
(2)社長と会社に合う人材を採用できる
「魅力向上型リファラル採用」では、社長と会社に合う人材が採用できます。それはなぜか。理由は、「社長と会社を好きな社員だけがリファラル採用活動をする」というルールがあるからです。人は自分が気に入ったものしか友人・知人に紹介しません。リファラル採用活動も同様です。成功するリファラル採用プロジェクトは、社長と会社を好きな社員だけがメンバーです。そのような社員が声をかける方は、社長と会社を好きになってくれそうな友人・知人です。結果、入社した方は紹介した社員同様、社長と会社を好きになって入社します。
(3)入社後の社員の定着率が向上する
社長と会社を好きな社員が声をかけ入社した社員は卒業しにくいです。なぜならば、好きな会社に入ったからです。さらに、それ以外にも2つの理由があります。
1つ目は、リファラル採用成功の前提条件に「嘘をつかない」があるからです。社員が友人・知人に自社を紹介する時に、会社のことで嘘をつけば、当然、入社後に卒業する可能性は上がります。きちんと話しておけば、友人・知人は自社の課題を理解し入社するので、入社後に「こんな課題があったんだ!」「面接ではこんなこと言っていなかったのに!」などの落ち込みや後悔が起きません。その結果、会社で長く頑張ってくれます。
2つ目は、「友人・知人の紹介で入ったので、簡単に卒業したら友人・知人の顔に泥を塗ってしまう、迷惑をかけてしまう」といった想いを入社した社員がもつことです。これも定着率の向上につながります。
■「新型縁故採用」で社員が経営者目線を持つようになるワケ
(4)会社の魅力と課題を見える化できる
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リファラル採用は、社員が会社に魅力を感じ「自社を友人・知人に紹介したい」と思うこと、さらにその話を聞いた友人・知人に転職したいと思ってもらうことで成立します。
そのため、リファラル採用の成功のためには「自社の魅力の見える化」が極めて重要になります。また、「会社の魅力」の見える化と同時に、「会社の課題」も見える化します。これらが、リファラル採用成功の重要なポイントとなります。
(5)会社の魅力を継続的に向上できる
「魅力向上型リファラル採用」では、メリット(4)で紹介した会社の魅力を、継続的に向上できます。まずは会社の課題を見える化した際、浮かび上がった課題を早期解決することで魅力が向上します。加えてリファラル採用では、自社のアピール資料「アピールブック」を作り、これを定期的に更新、ブラッシュアップしていくため、会社の魅力は向上し続けることになります。
(6)幹部と社員が経営者目線をもつようになる(究極の人材育成)
社長と会社を好きな社員がリファラル採用プロジェクトのメンバーになり、社長と一緒に「アピールブック」を作成します。「アピールブック」作成は、企業理念・行動指針の作成または改良、会社の魅力づくり、欲しい人材像の設定、会社の課題把握、中期経営計画の作成、賃金制度・能力開発制度の改良等をプロジェクトで推進していくものです。
この社長との共同作業、そして作成した「アピールブック」を友人・知人に説明することは、幹部研修や経営力アップ研修と比べものにならない効果があります。社長目線が育つのです。「魅力向上型リファラル採用」は、表向きは採用手法ですが、裏では劇的な効果をもたらす究極の経営手法でもあるのです。
■とはいえ、リファラル採用には5つのデメリットもある
リファラル採用には多くのメリットと同時に、デメリットもあります。代表的なデメリットは次の5つです。
(1)採用できるまでに時間がかかる
求人広告や人材紹介だと、早ければ採用開始から1カ月以内に内定承諾までいきますが、リファラル採用は1カ月以内で内定承諾が決まることはまれです。一般的には3カ月から6カ月以内に1~4人の内定承諾が決まります。6人以上の採用計画がある場合は、1年程度の期間を想定しておいた方がいいでしょう。ただ、このデメリットは、リファラル採用の仕組みを構築し継続的に運用できるようになると自然に解消していきます。
(2)1年以内の大量採用には向かない
リファラル採用は1年以内に大量採用することが難しいというデメリットがあります。1年以内に6人以上の採用計画がある場合は、リファラル採用とダイレクトリクルーティング・求人広告・人材紹介の併用がおすすめです。
■採用を間違えた場合にやめさせづらいという欠点あり
(3)動してくれる社員に負荷がかかる
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リファラル採用は、社員が求人広告や人材紹介の代わりとなる採用手法なので、どうしても社員に負荷がかかります。この負荷をゼロにすることはできません。「魅力向上型リファラル採用」でも、プロジェクトメンバーに、3~6カ月で合計33時間の負荷がかかります。7回のミーティングで21時間、6回の友人・知人へのアタックで12時間というイメージです。SNSの活用でアタック回数を減らすことはできますが、ゼロにはなりません。
(4)採用を間違えた場合にやめさせづらい
リファラル採用は、採用を間違えた社員をすぐに卒業させることが難しいです。社員の大切な友人・知人なので当然です。いきなり全員でリファラル採用を推進すると、自社に合わない社員が入社してくる可能性もあります。そうならないために、社長と会社を好きな社員だけでリファラル採用を推進するのです。また、リファラル採用はコネ入社ではありませんので、必要最低限のスキルの確認は選考段階でやるようにしましょう。
(5)今いる社員以上のレベルの人材は採りにくい
社長と会社を好きな社員が推進することで想いにマッチした社員を採用できますが、プロジェクトメンバー以上に実力がある人の採用が難しいです。ただ、私たちの経験では、自分よりも優秀な人に声をかける社員は20%くらいいます。そのような社員に、リファラル採用プロジェクトに参加してもらえばこのデメリットは低減します。
以上が、リファラル採用の概要です。人材不足を本気で解決するなら、やみくもにお金を使って知らない人を採るよりも、リファラル採用で「間違いない」人を確実に採っていくことが肝要です。
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リファラルリクルーティング社長
1964年神奈川県三浦半島油壷生まれ、宮崎県宮崎市青島育ち。埼玉大学経済学部経営学科を卒業し、1990年に監査法人トーマツに入社。経営、戦略、業務、IPOのコンサルティングを経験。1998年からISOコンサルティング会社・審査会社の立上げ。2006年にトーマツ イノベーション株式会社設立、代表取締役社長に就任。2014年10月に独立し、白潟総合研究所を設立。2017年にリファラルリクルーティング株式会社、2018年に1on1株式会社を設立。
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(リファラルリクルーティング社長 白潟 敏朗 写真=iStock.com)
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