「部長・課長」の転職成功率が好調なワケ
プレジデントオンライン / 2019年2月4日 9時15分
■転職2回までなら、企業は気にしない
かつて転職市場では、年齢を重ねると転職が難しくなる「35歳転職限界説」がささやかれてきた。しかし登録型の転職サイト「ミドルの転職」事業部長・天野博文氏は「伸び率で比べると、全世代の中でミドルの転職数が近年もっとも伸びています」と説明する。
「背景にあるのは、マネジメント層を強化したい企業のニーズです。2000~05年ごろの就職氷河期に採用を大きく抑制したため、多くの企業が40歳前後の人材不足という課題を抱えています。くわえて事業構造が大きく変わって、業界業種の垣根を越えたビジネスが必須になってきたのも一因でしょう。今まで社内になかった能力が必要になり、外部から調達しなければならない。そこで、経験のあるミドルが求められているのです」(天野氏)
半蔵門パートナーズ代表のヘッドハンター・武元康明氏も、「ヘッドハンティング業界では、リーマンショック以降、マネジメント層の依頼が急増しました。近年、ミドルの需要はゆるやかに増えています」と語る。
そんなミドル転職の実情はどうなっているのか。転職成功実績の多いポジションは、もっとも多いのが、「部長・次長クラス」で45%。その次が、「課長クラス」(35%)(「ミドルの転職」調べ)。年収は約800万円前後が中心だという。
「最近、これまで登録サイトでは少なかった経営層の転職が目立つようになり、年収1000万円以上といった高年収が増加傾向にあります。『ミドルの転職』でも1000万円以上の転職は、2年前に比べて2倍以上になり、年収2000万円超の転職も出るようになりました」(天野氏)
転職回数は、2回までは気にしないという企業が多く、「逆に1回も経験がないと、『新しい職場になじめるのか?』とかえって不安視されることもある」(天野氏)。
そして最近、目立つのが異業種転職。前述した事業構造の変化で業種間の距離が縮まったこと、また由緒正しい企業でも先行きが不安定になったことから、大手企業からベンチャーへ転身を遂げるような例が増加している。
「従来のミドルは、経理、事業企画、経営企画など、専門性が高く、高度な技術を持つスペシャリスト型人材が求められていました。それが最近は知識やノウハウを持ち、業務レベルが高いプロデューサー型のニーズが高まっています」(武元氏)
武元氏が紹介した人材のなかには、大手家電メーカーの地方支社トップから病院の事務長に、大手住宅のトップセールスから食品メーカー経営企画室のIR部門に転職した事例などがあり、成功実績は多い。無関係に見える職種でも、「自分の持っている理念・信条と企業風土が合致さえしていれば、業種や職種の壁を越えた転職で結果を出すことは可能です」と武元氏は語る。
■期待の即戦力ほど、注意が必要
ミドルの転職が活況になってきているとはいえ、誰もがバラ色の成功を収めるわけではない。
「調査によれば、過半数のコンサルタントが『面談した3人に1人は転職すべきではない人だった』と考えています。また相当慎重に検討しているはずなのに、ミドル層の転職者のうち、3カ月以内の退職が5%にのぼるという統計もあります」(天野氏)
転職経験のあるミドルのうち、「転職前の期待と転職後の実態にギャップがあった」と考える者は7割弱。新天地では、そこでまた新しい不満が生まれるのだ。
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そして異業種転職が盛り上がる一方で、同業種・同職種の転職は注意が必要という指摘もある。
「企業はミドルに即戦力の期待をかけますが、実は即戦力の評価が高い人ほど、『入ったらすぐに結果を出さねばならない』という意気込みや焦りを持っています。そこで成功体験を収めた今までのスタイルを貫こうとして、失敗するケースを数多く見てきました。転職後の環境にすぐ適応できる人は、全体の2割ぐらいです」(武元氏)
新しい企業になじめないミドルは、マネジメントスタイルの違いにつまずくことが多い。トップダウン式の企業で活躍していた人材は、ボトムアップ式の企業に行くと結果を出すのが難しく、逆もまた然り。転職前、業務内容や条件は慎重に確認するのに、企業の体質や文化は見落としがちだという。
とはいえ、現在、ミドル層の転職市場が活況であることは間違いない。「チャンスは広がっているので、焦らず、慎重にやるべき」(天野氏)というアドバイスを参考に、新しい環境を探してもいいだろう。
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ミドル世代を対象にした登録型転職サイト「ミドルの転職」事業部長。2005年エン・ジャパン入社。以来、転職支援に従事。16年4月より現職。
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半蔵門パートナーズ代表
航空業界を経て、21年の人材サーチキャリア、2万人超のインタビュー実績を持つトップヘッドハンター。2008年より現職。
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(ライター 吉田 彩乃)
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