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本当の名医の"手術成功率"が低くなるワケ

プレジデントオンライン / 2019年2月5日 15時15分

写真=iStock.com/RomoloTavani

年齢を重ねると増えてくる体の変調。突然のそのとき、どこの病院に行き、どんな医師を訪ねるべきなのか。9つのポイントで検証した。第1回は「技術が高いvs相性がいい」――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです

Q:技術が高いVS相性がいい
A:医師に「ご家族ならどうされますか?」と聞いてみよう

■医師は病院、かかりつけ医をどうやって探すか

手術などの技術力が高い医師と患者とのコミュニケーション能力が高い相性のいい医師。自分や家族が病気になったとき頼りにするべきはどちらなのか。小児外科が専門で、海外での勤務経験も長い千葉敏雄医師は、自身で病院や医師を選ぶ際、かかりつけ医にこんな質問をするという。

「あなたの家族がこの病気になったらどの医師に診てもらいたいですか? その医師はどの病院にいますか」

医師にほかのよい医師を紹介してとお願いするのは少し気が引けるが、千葉氏は患者の最も切実な関心事項である「病気が治る」ことを優先する医師であれば、むしろ率直に尋ねたほうがいいと話す。

千葉氏は米国の病院に勤務した体験から、日本と海外の医師が取るコミュニケーションの違いをこう説明する。

「米国の医師は、病名と治療しなかったときのリスク、それから治療方法と治る確率が中心のシンプルなコミュニケーションを取ります。じっくり時間をかけて患者さんと話すのはむしろ、ソーシャルワーカーやベテランナース。また、医師が出す患者さんカルテの指示内容に、もし不十分な点があれば、薬剤師や栄養士などがチーム内の専門の立場から、率直に指摘してくれる。チームの意見を受け入れ、学んでいく姿勢が高い医師が腕を上げていく環境でした」

結局のところコミュニケーション能力が高い医師が腕・実績を上げ、優れた医師になってゆくというのだ。

対して日本では医師が患者とのコミュニケーション全般を担う。近年では大学の授業も知識や技術一辺倒ではなくなってきているという。

「医学部の授業で患者さんの話を聞き出すコミュニケーションの講義が入るようになりました。そこが診断の入り口になりますから」と語るのは、外科医・病理医の裵英洙氏だ。医療教育の場でもコミュニケーション能力は重要視されてきているという。裵氏の場合、家族が病気になったときは病気の種類によって医師の選び方を変えるという。

「風邪や中耳炎といった一般的な病気であれば、厚生労働省や各学会が発行するガイドラインに沿った治療法が取られるので、医師によって腕の違いはさほど出ません」

だからこそコミュニケーションをしっかり取って家族を安心させてくれる医師のほうがよいという意見だ。また糖尿病のように長く病気と付き合う必要がある場合も、丁寧に会話をしてくれる医師のほうが患者の満足度は高く、治療効果も出やすいという。

さらに裵氏は医師の診断する姿勢は、ある話し方で見抜けるとも教えてくれた。

「『患者さんが治るように私が手助けします』のように患者さんを主語にして話す医師は、患者さん主体で治療方針を考える傾向にあります。一方で医師自身や病院を主語にする姿勢の医師は頼れない」

一方で、ありふれた病気や慢性的な病気と違って、緊急を要するガンの手術などでは、医師によって手術のうまい下手に大きな差が出るので、やはり腕のよさで選ぶべきだと裵氏は助言する。その際の基準の1つとして「臨床指標」が参考になるという。臨床指標は手術の症例数、成功率と合併症の少なさのことをさす。症例数は経験値の高さを示し、成功率と合併症の多少はその病院と医師の実力をあらわす。だがむやみに信じてはいけないと裵氏は注意を促す。

「人口の少ない地方の病院は症例数が少なくなりますが、名医がいないわけではない。また成功率が高いといっても簡単な手術ばかり手掛けているかもしれない。本当の名医は困難な手術が大半で、当然、成功率は低くなりがちです」

手術の中身まで見て、どのくらいの成功率であるかを調べなければ、正しい名医選びはできないということだ。

また数値を公表していない場合には、担当の医師がメジャー18学会に所属する専門医であるかも判断基準の1つになるという。認定専門医であれば最新の技術や情報に意欲的にアクセスしていると考えられるからだ。

正しい情報を知ることで、病院を見る目を養う力が試されている。

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裵 英洙
ハイズ代表
慶應義塾大学特任教授。金沢大学医学部卒。厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」構成員。
 

千葉敏雄
早稲田大学理工学術院、昭和大学医学部客員教授
東北大学医学部卒。胎児・小児外科医。8K内視鏡を事業化するカイロスの会長を務める。
 

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(Top Communication 写真=iStock.com)

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