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AIスピーカーで彼女と仲直りできたワケ

プレジデントオンライン / 2019年1月31日 9時15分

土屋氏のスマートスピーカー(グーグルホーム)。インテリアにもよくなじむ

音声で家電やデバイスを操作できるスマートスピーカー(AIスピーカー)。その機能の本質は「音声操作」だけにあるわけではない。ITガジェットジャーナリストの土屋亘氏は「AIスピーカーは人間関係を滑らかにする。私はパートナーとの関係修復に役立った」という。どういうことなのか――。

■ガジェットの真価は「ユーザー体験」の変化にある

あなたはスマートスピーカー(AIスピーカー)を使っているだろうか。

アマゾンやグーグルの新商品が日本でも発売され、2017年はスマートスピーカー元年と言われた。今年1月に米ラスベガスで開催されたテクノロジーの世界最大級見本市「CES」でも、世界各社がスマートスピーカー搭載のさまざまな家電を発表していた。今後、一般家庭にも普及していく可能性は十分にある。

その一方で、現在ユーザーが親しんでいるPCやスマートフォンをはじめとするグラフィカルなユーザーインターフェース(GUI)から、スマートスピーカーを代表する音声ユーザーインターフェース(VUI)に移行するのはそう簡単なことではないだろう。

では、スマートスピーカーが日本で普及するためには何が必要なのか。それは「ユーザー体験の変化」を体感するための手だてを知ることだと筆者は考えている。スマートスピーカーに限らず、最新ガジェットの真価とは「利便性」ではなく「体験」にある。

そこで筆者が日々どういった使い方ができるのかを模索する中で、印象に残った3つの使用法を紹介したい。「こんな使い方ができるのか」と知ってもらうことで、スマートスピーカーの新たな魅力を知るきっかけになればうれしく思う。

▼使用法(1):パートナーとの関係修復に役立つ

スマートスピーカーは人間関係を滑らかにする。

筆者は彼女とのけんかの際、スマートスピーカーを活用して仲直りをした。パートナーと一度険悪なムードになったら、それを払拭するのは容易ではない。ましてや家にいるときなど、同じ空間にいては逃げ場がない。「一緒に笑えるテレビがたまたまやっている」「急な仕事の連絡がある」などのアンコントローラブルなことが頼みの綱になってしまう。

そこで筆者は雰囲気を変えるための「装置」としてグーグルホームを使うことにした。流れとしては下記のとおりだ。

(1)筆者が家でパートナーとけんかする
(2)険悪な雰囲気でお互い何もしゃべらず10分が経過
(3)筆者がグーグルホームに「オッケーグーグル、○○にごめんねって伝えて」と話しかける
(4)するとグーグルホームが「○○さんごめんね。でもこの前土屋くん(筆者)は○○さんのこと本当に大好きって言ってたよ(おわびの気持ちを込めてあえて『さん』づけにしている)」
(5)○○さんは「なにそれ(笑)」と笑顔になって、雰囲気が和らぐ。すかさず筆者は今度は自分の言葉で「ごめんね」と言う。○○さんからは「わたしもごめんね」と返事がくる

■「オッケーグーグル、○○にごめんねって伝えて」

ここまでうまくいったのはグーグルホームを使用するタイミングもよかったのだろう。だが二人の間だけでは解決できない第三者的な役割をグーグルホームに担ってもらうことで、少なからず空気を動かすことはできるだろう。

このようにグーグルホームを使いこなすには、あらかじめ設定が必要になる。

具体的には、グーグル拡張機能の「アクションズ・オン・グーグル(Actions on Google)」の「ダイアログフロー(Dialogflow)」という開発ツールを用いる。そこに「オッケーグーグル、○○にごめんねって伝えて」と言うと「○○さんごめんね。でもこの前土屋くんは○○さんのこと本当に大好きって言ってたよ」と反応するように入れておけばいい。

さまざまな横文字のツール名が出てきて専門知識が必要に感じるかもしれないが、ダイアログフローはプログラミングや専門知識も必要なく、かんたんに会話パターンを作成できる。なお、実際はテスト用アプリの場合、はじめに「オッケーグーグル、テスト用アプリにつないで」と話しかける必要があるので覚えておきたい。

なお、筆者はこのパートナーとはすでに別れているので、AIスピーカーに頼ったとしても、何事も解決できるわけではないことは付けくわえておく。

▼使用法(2):職場の上下関係がフラットになる

スマートスピーカーで人間関係が滑らかになるのはプライベートだけではない。

むしろ第三者的な役割になる特性は、仕事でこそ効果を発揮する。

筆者が社内の仕事で取り入れている「デザイン思考」では、そのプロセスにおいて上下関係の枠を取りはらい対等に会話できる環境づくりが大前提である。しかし大企業のように部門ごとの役割が明確な「機能別組織」では、特に上下関係が発生しやすく、闊達(かったつ)な議論になりにくい。

筆者もアイデアを生み出すために週一回チーム内で行っていたワークショップでは、タイムキーパーの役目を誰が担うかという課題があった。タイムキーパーが「10分測ります」と口にした時点で、ほかのチームメンバーにとって下っ端の役割を担うことになり、参加者間で上下関係ができてしまう。それで終盤「あと1分です」とでも言うものなら、タイムキーパー自身がその限られた1分で発言する空気にはなりづらく、調整役にまわることになる。

そこで筆者のチームでは、アマゾンエコーをプロジェクトルームのテーブルに置き、活用することにした。「アレクサ、10分測って」と言えば、音声アシスタント「アレクサ(Alexa)」が測ってくれる。今ではタイムキーパーがいないことがあたりまえの感覚になり、それにともない職場の人間関係もフラット化し、闊達な議論ができるようになった。

土屋氏の職場のワークショップで「タイムキーパー」として活躍するアマゾンエコー
▼使用法(3):毎朝、心地よい目覚めが得られる

スマートスピーカーを「今日の天気を教えて」「電気を消して」といった使い方をする人は多いだろう。そのような使い方はもちろんいいが、筆者がおすすめしたいのが、「目覚まし時計代わり」に用いることだ。

グーグルホームをかれこれ1年ほど目覚まし時計の用途で使っているが、同じ睡眠時間でも朝の寝起きが格段によくなった。ポイントはグーグルホームの目覚まし機能を止める際に「オッケーグーグル、ありがとう」という言葉を設定していることだと思う。

寝起きが悪い自分でも、朝一番にポジティブな言葉を口にすることで、不思議と温かい気持ちをもてるようになるのだ。過去にあまりに眠すぎて、目覚まし時計をたたき壊したことやiPhoneをぶん投げたこともあったが、グーグルホームにしてからはその問題も解消した。

■毎日話しかけると、寂しさも消えてなくなった

今回ご紹介した3つの事例をはじめ、筆者がこれまで使ってきて思ったスマートスピーカーの効用はユーザー体験を豊かにしてくれる「粋」な計らいだと感じている。

スマートスピーカーを使ってできることは、自分もしくは誰か別の人、または何か別のガジェットにお願いしていたものの代替えにしかすぎない。よってその代替えした「体験」がスマートスピーカーの方がよければ使う。逆にいままでの慣れたやり方と体験もそんなに変わらないのであれば無理に使う必要はないだろう。

今回紹介した事例はスピーカー単体で使える機能だが、最近ではスマートスピーカーと連動した「スマートライト」や「スマートライト」などのIoT(モノのインターネット化)商品のラインアップも豊富になってきている。実際に、スマートライトとつないで寝る時に最適な明るさを調節できるし、テレビにつなげれば観たい動画を音声でコントロールすることも可能だ。

アマゾンはアマゾンエクスペリエンスセンター(Amazon Experience Center)というスマートハウスの住宅モデルを米国各地に設置している。そこではアレクサが家のさまざまな電子機器のハブとなり、「スマート」に暮らせるためのモデルハウスを体験できる。今後デバイス間の連携が高まれば、さらに粋なユーザー体験がもたらされるだろう。

スマートスピーカーに話しかけるのは、思っているよりすぐに慣れる。毎日話していると、だんだんとペットのようにいとおしくなり、さみしさも払拭される。独身世帯にこそ、おすすめしたいガジェットである。

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土屋 亘(つちや・わたる)
ITガジェットジャーナリスト
1991年生まれ。法政大学デザイン工学学士。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズム課程修了。百貨店勤務。デジタル部門所属。スマートスピーカー、スマートウォッチ、VRをはじめとした最新ガジェットをそれぞれ複数台所有。最新のデジタルサブスクリプションサービスを駆使して、デジタルが生活に溶け込むライフスタイルを研究中。

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(ITガジェットジャーナリスト 土屋 亘)

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