"夫の給料を上回る"を胸に転職6回の40歳
プレジデントオンライン / 2019年2月25日 9時15分
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青野さん(仮名)
男性38歳。システム開発。国内メーカーから競合他社へ転職。転職歴2年。現在4社目。
白井さん(仮名)
女性40歳。広報。ベンチャーから大手メーカーへ転職。転職歴半年。現在6社目。
黒田さん(仮名)
男性43歳。営業。外資系ITから国内サービスへ転職。転職歴3年。現在3社目。
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【青野】なぜ転職を?
【黒田】カッコよく言うと、前職で燃え尽きたんですよ。かなり大きな契約をとって、もうこれ以上の成果をあげることはないかなという達成感があって……。それで転職先を探してたら、競合他社に今よりいい条件を示されたんです。でも同じ仕事の繰り返しになるのがつまらなかった。もともといた会社でできないことや、さらに上のレベルの事業に挑戦したい、と考えて、違う業界の会社を選びました。
【青野】僕は燃え尽きる前に、飛び出しましたねえ。前にいたのは歴史のある企業で、旧態依然とした社風に耐えられなかったんです。もっと若くて勢いのある会社で働きたくなって、同じ業界の新進気鋭企業にピンポイントで転職しました。業界トップでもあるので、正直、見返してやった感はあります。
【白井】わかります! 私も見返したい気持ちがありました。夫に。
【青野】夫に?
【白井】10年前に「俺の給料を超えたら主夫をやってあげるよ」って言われて、ものすごく腹が立ったんです。それで「いつかあなたの給料を超えてやる!」と思って、今でもそれがモチベーションになっている。
【青野・黒田】……(しばらく沈黙)
【黒田】白井さん、今が6社目なんですよね。転職回数が多いのは年収にこだわりがあるから?
【白井】それもありますけど、子育てと両立できる企業を求めてきたのが大きいです。だから今の会社は「週4回は定時帰宅」という条件を一番にして探しました。黒田さんは共働きですか?
【黒田】ですね。子どももいるのでそれなりの収入は確保しないといけないんですけど、妻が稼いでいることもあって、転職は歓迎でした。うだつが上がらない男より、意欲的に働いている夫のほうがいいんじゃないんですか。
【青野】妻の反応は転職を左右しますよね。僕は「そんなダメな会社早く辞めたら?」っていう妻の一言で「よし、辞めるか!」って決断できました。
【黒田】何度か転職していると、家族も次第に慣れてくる。逆に1回も転職してない知人を見てると、「会社にしがみついてるな~」「60歳まで逃げ切れるのか?」って心配になっちゃう。
【青野】20代のときと違って、30歳を超えると腹がすわってきますよね。どんな仕事に就いても、70点は取れるという自信がある。
【白井】ただ若いときと比べると、辞めるのが大変。前職はわりに長くいて、会社愛をアピールしていたから、「なんで辞めるんだ?」という役員に納得してもらうのが大変でした。
【青野】僕も前の職場で辞表を受け取ってくれなくて、苦労した経験あります。最後、社長が車に乗り込むタイミングで飛び出して、手渡しましたけど。
■エージェントとの正しいつきあい方
【黒田】今、ミドルの求人自体は多いですね。選ばなければすぐ見つかる気がした。
【青野】僕は学生時代アパレルに興味があったので、求人を確認してみたら、ミドルをほしがる企業はほとんど見つかりませんでした。業界によって差があるのかもしれない。
【白井】でもこの年で転職活動するのは大変でしたねえ。子どもの保育園の送迎もあるし、日中は仕事があるから、時間を確保するのが難しかった。朝、会社近くの神社でエージェントと長電話したり、昼休みに歩きながら面接したりして。
【黒田】いいエージェントじゃないですか。私なんて条件出したら、一言「そういう仕事はないですよ」。……そこを紹介するのが仕事じゃないの?
【青野】熱心すぎても嫌ですけどね。採用支援企業が儲けるために「転職させられる」って気がしてくる。
【白井】でもエージェントは、たくさんつきあっているうち、勘所がわかってきますよ。私は複数のエージェントとかかわりながら、それぞれのいいとこ取りをしていました。たとえば、職務履歴書も添削してもらって、それをよそのエージェントに持っていってさらにブラッシュアップしたり。
【青野】信頼できる人に出会えたら、あとは全部エージェントに聞いたほうが確実ってこともありますよね。
【白井】とにかく1人で悩まないほうがいい。面接のアドバイスももらえましたし。
【黒田】面接では、自分も会社の良し悪しを判断するのは大切。1回目の面接で即座に内定が出たときは、ブラック企業のにおいがして断りました。誰でもいいほど人手不足なんじゃないか? と思って。
【白井】理念や文化にすごい共感して、ここしかない! と思った企業があったんですよ。でも面接のときに横柄すぎる広報がいて、「こんな人を野放しにしている企業はろくでもないな」と、内定を断りました。
【青野】面接官の対応で、ますます入りたくなることもありますよ。今の会社は、「まあ、うちもそんな悪い会社じゃないんで」という言い方に、余裕と会社愛があるんだなーと感じた。
【白井】あと、面接で自分の条件をはっきり伝えることも、就職後のミスマッチを防ぐうえで重要。私は「週4定時帰宅」「給料上げたい」「役職ほしい」の3点セットを明快に伝えました。
【青野】自分の棚卸しをして頭に詰め込んでも、あまり面接では役に立たないですよね。「選ばれよう」ではなく「自分を出そう」という瞬発力で対応したほうが、自分のペースに相手を引き込んで進められる気がする。
■「転職しなくていい」という前提は大事
【黒田】転職後はすぐなじめました?
【白井】大体1週間ぐらいで……。
【青野】早い!
【白井】入ったときはなるべく空気を読まない、新参者キャラを演じるようにしているんです。会社のやり方に違和感があれば、笑いながら「それおかしくないですか?」ってツッコむ。うまくいけば同意してもらえて、ストレスを抱えずにすむので。
【青野】破壊は転職者へのニーズのひとつなのかもしれないですしね。
【黒田】あと、転職が成功かどうか、すぐにはわからないじゃないですか。私は、2年経って次の転職を考えてなければ成功だと思ってます。今は前職より給料は下がったけど、仕事の内容に不満はないから問題ないのかなと。
【白井】2年……。少し長いかも。
【黒田】ただ、転職がすべてではない。転職しないという選択肢もある。
【白井】うん。「しなくていい」という前提は大事ですよね。転職活動を始めたとしても、必ずしも転職する必要はない。転職市場に1度自分を放流させてみて、自分の価値を知るのもいい。
【青野】1度、「転職しよう」と思ったことに価値があるんじゃないですか。
【黒田】そうですね。……でもすいません、前言撤回していいですか? やっぱり、生涯ひとつの会社だけというのは怖いです!
(ライター 吉田 彩乃 撮影=的野弘路 写真=iStock.com)
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