医師の本音「ヤバい病院は検査でわかる」
プレジデントオンライン / 2019年3月16日 11時15分
※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです
■すぐに検査をしたがる事情とは
通院のたびにいつも同じ検査ばかり受けている人はいないだろうか。もしかしたら、少しでも稼いでおきたい医師の思う壺かもしれないと警告するのは、オンラインで病気治療の相談や情報発信を行う「eクリニック」代表の岡本裕医師だ。
「たとえば、MRIを購入しようとすれば、億単位で費用がかかります。その採算をとるために考えることはひとつ。どうしても、すぐに検査を勧めようとしてしまうでしょう」
MRIは維持費もかかり、1日10人以上は検査しなければ採算が合わないそうだ。検査好きの日本人は、医療についてのコスト意識が薄いが、病院の質を判断するには、診療報酬の仕組みを大雑把にでも知っておくことは大切だ。
「診療報酬ではMRI検査やCT検査は撮影料、診断料、管理料などさまざまな加算があります。一方で、生活指導や食事指導ばかりしていては、点数が低く経営が苦しくなります。また、以前は薬が収益源でしたが、今は外部薬局の利用が推進されていて難しくなっており、検査で稼ぐしかない状況です」(岡本氏)
日本は海外に比べて検査機器が多く、診断技術も進んでいるといわれる。岡本氏は「まずは検査を受ける前に、検査の目的や使われる装置の特徴を知ること」という。
■あなたに必要ながん検診とは
がん検診も、どう受けるべきか見極めたいところだ。
「今や消化器専門医で自らの胃がん検診をバリウム検査で行っている人は私の周囲にはいない」と語るのは日赤医療センター、亀田総合病院、クリントエグゼクリニックなどで勤務する近藤慎太郎医師だ。
「胃がんの検査方法には主に胃X線検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ検査)の2つがあります。ガイドラインの見直しで、自治体のがん検診でも徐々に胃カメラ検査が受けられるようになりました。胃カメラ検査は、食道がんのチェックも一緒にできるため、バリウム検査よりもおすすめです」(近藤氏)
日本のがん死亡数トップの肺がんの検査は、どのように受診したらよいのだろうか。
「肺がんは、肺の入り口で中心部の肺門にできやすい。しかし、その背後には心臓や大小さまざまな血管が走っていて、レントゲン検査の画像では白く描出されます。そのため、レントゲン検査だけでは、同じように白く写るがんは見つけにくいのです」と近藤氏は説明する。
「しかし、肺門にできるがんは、痰にがん細胞が混じりやすいので、痰の検査の併用が有効です。また、喫煙者や過去の検査で何か指摘をされたことがある人は、定期的にCT検査を受けたほうがよいでしょう」(近藤氏)
日本人がかかるがんで最も多い大腸がんは、便潜血検査が簡便だ。ただ、便は右側の大腸(上行結腸)にあるときは水分を多く含んでいるので軟らかく、肛門に近づくにしたがって水分が吸収されて固くなっていく。そのため、上行結腸にポリープやがんがあっても便の抵抗が弱いため出血しにくく、発見も遅れやすい。「便潜血検査が陰性で安心していると足をすくわれることがあります。大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)は、受診しておく価値が十分にあります」と近藤氏は説く。
女性罹患数トップの乳がんは、マンモグラフィ検査が広く普及している。乳房をプレートで挟まれて圧迫されるときに痛みがあるが、視診・触診では発見しにくい小さな病変を見つけられる。
「マンモグラフィでは、乳腺の濃度が高いほど白く写るため、乳腺が発達している人の場合は、がんを見つけにくい弱点があります。検査を受けたときには、自分の乳腺の濃度を尋ねてみて、乳腺濃度が高いと言われたら、超音波(エコー)検査を追加するとよいでしょう」(近藤氏)
■万能ではないPET検査
がん検診で最近人気が高まっているというのがPET検査だ。痛みなどの苦痛がなく、複数のがんを網羅的に見つけられる特徴がある。
しかし、「万能の検査法といわれるPET検査だが、がんの半数が見逃されています」と前出の岡本氏。PET検査の有用性について、近藤氏も同様に現在のPET検査の限界を語る。
「PET検査の受診は必須ではありません。現状では、喉関係のがんや悪性リンパ腫の発見には比較的強いのですが、各がん検診の代わりになるほどの精度ではないからです。費用も高く、10万円ほどかかります」
やたら検査を勧めたがる医師から自分を守るためにも、自分で検査の特徴を把握しておくことが大切だ。医師に言われるまま検査漬けにされて、都合のいい客になってしまわないように注意したい。
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医師
北海道大学医学部、東京大学医学部医学系大学院卒業。著書に『医者がマンガで教える日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』など。
医師
eクリニック代表。大阪大学医学部、同大学院卒業。著書に『医者が教える 本当に病気を治す医者の選び方』など多数。
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(宇佐美 拓憲 撮影=石橋素幸、むかのけんじ 写真=AFLO、iStock.com)
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