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手術数が多くて口コミが悪い病院はアリか

プレジデントオンライン / 2019年3月17日 11時15分

写真=iStock.com/8vFanI

年齢を重ねると増えてくる体の変調。突然のそのとき、どこの病院に行き、どんな医師を訪ねるべきなのか。9つのポイントで検証した。第4回は「クチコミvsランキング」――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月31日号)の掲載記事を再編集したものです

■よい病院が見つかる、情報収集術とは

病気になったとき、どの病院を受診すればよいのか。がんなどの重い病気の場合、生死にかかわるだけに特に頭を悩ませる。病院ランキングのほか、身近な人のクチコミやネット上にも多くのクチコミ情報があふれている。何を基準に病院選びをするのがベストなのだろうか。

「クチコミとランキングにはそれぞれメリットとデメリットがあり、症状の種類によって使い分けるとよいでしょう。ただ、ネットのクチコミ評価には十分な注意が必要です」

こうアドバイスするのは、医師であり、クリニック向け診療支援ウェブサービスを提供するメディ・ウェブ代表取締役会長の楊浩勇氏だ。

「ネットのクチコミ評価は匿名性が高く、医師や病院に強い不満を持っている人ほど積極的に書き込みをする傾向が見られます。私たち医療者から見ると、難しい病気や症状を扱って患者さんが多く混んでいるクリニックや、とても真面目な先生ほど、そんな批判的な書き込みに悩まされがちです。というのも、情熱のある先生は、患者さんに丁寧に食生活や運動などの生活習慣の指導をします。しかし、そういうことに慣れていない患者さんは、不満を感じやすいのです。上から目線で指図されたと感じてしまい、それでネットに批判を書き込みます。だからネット上のクチコミ評価が低いというのは、必ずしもアテになりません」

これはグルメサイトのクチコミ評価と似ている。店のよしあしと星の数は必ずしも一致しない。食事ならまだしも、医療の場合、患者がそうした評価に左右されるのは大きな問題といえよう。

クチコミに関して、患者と専門医、医療機関をつなぐサービスを提供する、医療ITベンチャー企業のリーズンホワイの塩飽(しわく)哲生氏は次のように指摘する。

「クチコミは誰がどういうデータに基づいて発信しているのかという情報源が重要です。患者さんは自分が経験したことが一番印象に残ります。がんでもステージや治療法が異なり経験値が違うので、気をつけるべきです。逆に利点はデータではない部分、ドクターの説明がわかりやすいとか、人となりなどの印象、スタッフの対応などがわかるのはクチコミのいい点だと思います」

医師やスタッフの感じ、院内の様子などはクチコミ評価が参考になるのは確か。ただし、あくまでも患者の主観だということを認識したうえで、鵜呑みにせずうまく利用したい。

一方、ランキングについてはどのように活用すればよいのだろうか。

「ランキングが役立つのは、難しい診断や手術が明らかに必要な重い病気です。がんの場合、胃がんならどの病院、肝臓がんはどこが得意といったランキングは、ある程度参考になると思います。大きな病院ではDPC(診断群分類別包括評価)データを公開しているところが多いので、手術件数や患者数などの数字は嘘をつきません。手術数が多いと経験値も高まるほか、看護師など周りのスタッフのスキルも高いので医療ミスが起きにくい。また、医療機器への投資もしやすく、最新の設備が整っているなどのメリットは大きいでしょう」(楊氏)

塩飽氏も「ランキングのいい点は、やはり数字でわかるところです。データの取り方が適切であれば数字は嘘をつきません」と客観的データの有効性を評価する。ただし、ランキングの注意点についても指摘する。

「手術件数が多いほうが経験値が高いのは確かですが、例えば整形外科だと、リハビリに力を入れている病院なのか否かによって、再手術率が変わってきます。再手術率が高いと手術件数も多くなる。ですから、データの読み方にも注意する必要があります」

■AIで、患者と専門医がつながる

また最近は、ランキングにも用いられる前述のDPCデータや論文データと人工知能(AI)を活用して、自分に合った医師を探すことができると塩飽氏は語る。

「AIのおかげで、がんに関し、厚生労働省が公表している病院のDPCデータベース(疾患および術式別患者数)と、約20万人の医師による40万件の論文データに基づき、先生の専門領域と患者さんを結びつけることができるようになりました。Findme(ファインドミー)というサービスの中で利用できますが、機械学習によりその精度は高まっていきます」

このように口コミやランキング、AIを使って理想的な病院や医師を見つけることができたとしよう。しかし、それを最大限に生かすために、忘れてはいけない大切なことがある。医師や病院との良好な関係づくりだ。前出の楊氏は次のように話す。

「私の経験からも言えるのは、患者さんにはよい患者さんと残念な患者さんがいるということです。よい患者さんは、上手に医者の力を引き出すことができます。賢くて受診リテラシーが高い。そういう患者さんにはこちらも積極的に情報提供し、治してあげようという気持ちになる。逆に、態度の悪い横柄な患者さんもいます。医師が偉いとかそういう問題ではなく、残念ながら、モンスターペイシェント(患者)を含め、人として当たり前のことができていない患者さんが増えています。それでは医療者側もやる気が失せ、患者さんにとっても損になります」

クチコミやランキングなどで患者が病院を選ぶ時代ではあるが、患者が偉くなったわけではない。医師の力を引き出すためにも、そこを勘違いしないよう、患者側として肝に銘じておきたい。

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楊 浩勇
医師
メディ・ウェブ代表取締役会長。医療法人健究社理事長。慶應義塾大学医学部卒。著書に『上手な医者のかかりかた』。
 

塩飽哲生
リーズンホワイ代表取締役社長
東京大学工学部、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。著書に『病院選びの前に必ず読む本』。
 

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(ジャーナリスト 田之上 信 撮影=石橋素幸、むかのけんじ 写真=iStock.com)

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